「心の病」を治療・サポートするチーム医療とは？ 精神科医を中心にさまざまな専門家が連携

心の病を治療する専門家といえば、精神科医やカウンセラーを思い浮かべる人も多いと思いますが、医療機関では、公認心理師や作業療法士、看護師、薬剤師などさまざまな「コメディカルスタッフ」が連携してサポートを行っています。コメディカルスタッフとは、医師とチームを組んで医療にあたるスタッフのことを指します。では、心の病の治療やサポートに取り組むチーム医療には、どのような専門家が携わっているのでしょうか。

まず、精神医療の中心的な役割を担っているのが「精神科医」です。患者の心の状態を把握し、治療計画を作成して、「精神療法」や「薬物療法」などを行います。以前は、看護師との連携のみで治療を行っていましたが、近年は公認心理師や薬剤師などの専門スタッフとも協力して治療を行うことが多くなっています。こうしたチーム医療においては、診断や治療方針の決定を行うなど、チーム全体のコーディネーターとしての役割を担うことが求められます。

「公認心理師」は、心理学の知識や技術に基づいて、心理的に不安定な状態にある人の援助を行う専門家です。業務としては「心理査定（アセスメント）」「心理面接（カウンセリング）」「関係者への面接」「心の健康に関する教育・情報提供活動」の4つがあり、対象者の心理状態の観察とその結果の分析や相談に応じて、助言や指導、その他の援助を行うなど、幅広い活躍が期待されています。医師ではないため、薬の処方や注射などを行うことはできませんが、精神科医などと連携しながら治療を進めていきます。

「作業療法士」は、心身に障害を持つ人々が、身の回りのことを主体的に対処できるようにサポートし、日常生活や社会生活を再建できるように心身機能の回復を促すリハビリテーションの専門家です。一般的な作業療法士によるリハビリテーションでは、トイレの動作や着替えの動作など、日常生活に必要な動作につなげていくことが多いですが、こうした訓練は統合失調症や依存症、パーソナリティ障害などの心の病気からの回復にも有効であると考えられています。特に、患者が好きなことや得意なことをすることがよいとされています。

「薬剤師」は、医療品全般について、幅広い知識を持つ「薬」の専門家です。薬物療法が治療の中心になる精神科領域では、治療や服薬の指導が社会復帰の後押しとして、とても重要な役割を担います。心の病気には、血糖値やコレステロール値のような明確な指標がないため、効果の現れ方や副作用に個人差が生じやすく、訴えを丁寧にヒアリングし、状態を判断することが必要です。

「看護師」は、医療や福祉のチームの一員として看護を担う専門家で、医師の治療のサポートや健康に不安を持った人たちへの援助を担当します。心の病気における看護師のサポートは、コミュニケーションによる心理面のケアや患者の状態チェック、入浴介助、整髪やひげそり、トイレへの誘導、そして、精神科におけるもっとも一般的な治療である薬物療法のサポートなど必要に応じてさまざまなケアを行います。心の病気は、症状によって患者のセルフケアレベルが低下している場合も少なくないため、看護師によるケアやサポートはとても重要です。

「精神保管福祉士」は、心の病気を抱える人やその家族から相談を受けたり、社会復帰をするための指導を行ったりと、精神保健福祉に関する支援を行う専門家です。別名「精神科ソーシャルワーカー（PSW）」とも呼ばれています。心の病気を抱える人の中には、治療を受けても日常生活が困難であったり、社会復帰が難しい場合もあります。そのような人たちのために、社会福祉の立場から援助する仕事を担います。具体的には、精神科や保健所などで、入退院の援助や社会復帰に関する相談、住宅の確保、家族関係の調整、日用品の調達など多岐にわたります。

明確な資格ではありませんが、心の問題に取り組む職種として「心理カウンセラー」があります。心の病気の治療では、丁寧なカウンセリング（面接）を重ねることがとても重要です。しかし、医師は時間的に一人の患者に十分な時間を割くことが難しいという現実があります。そこで、公認心理師や心理カウンセラーが引き継ぎ、時間をかけて話を聞くことで、心のより深いところまでアプローチすることができます。

このように、さまざまな立場の専門家が一つのチームとして治療にあたり、心の病の改善や患者のサポートを行うことで、社会復帰を目指していきます。（監修：健康管理士一般指導員）