- Study&Work2023/10/25 20:14
中谷財団、「学習指導要領改訂とその後」をテーマにしたセミナー開催、探究的な学びが生徒と教員をどう変容させるかを現役の先生が討論
医工計測技術分野における技術開発や技術交流等の促進と人材の育成を目的に、幅広い助成事業を展開している中谷医工計測技術振興財団(以下、中谷財団)は、「学習指導要領改訂とその後 ~探究的な学びは生徒と教員をどう変容させるのか?~」をテーマとした科学教育セミナーを10月17日に開催した。学習指導要領が始まって以来の100年に1度の大改革といわれている新・学習指導要領が小学校から高校まで完全実施された。中学校では3年が経過し、高校は昨年度の入学者から開始されている。今回のセミナーでは、この大改革によって「どのように授業が変わったのか」「探究的な学習のために何が必要なのか」などを現場での取り組みを積極的に推進している先生を迎え、パネルディスカッション形式で討論した。
「当財団では、子どもたちの論理的思考力や創造性の成長を促すため、小・中・高校における科学教育振興を目的とした取り組みに対して助成する『科学教育振興助成』事業を実施している。同助成では、毎年、全国100校以上の学校に助成を行っており、助成校からは、研究活動の様子や大会出場の結果など年間200件以上の報告を受け、WEBページで紹介している」と、中谷財団の松森信宏事務局長が挨拶。「毎年12月末には、助成校が一堂に集まり、成果発表会を開催。生徒・児童が日頃の活動の様子や研究成果をポスター発表し、質疑応答を通じて交流を深めている。さらに、年度末の成果報告書は、冊子にして助成校各校の他、全国の教育委員会や各種学会へ送付している」と、科学教育振興助成の概要について紹介した。
「今年度からは、大学・高専が企画する中学生向け次世代理経人材育成プログラムへの助成を開始した。このプログラムは、大学・高専などが地域拠点となり、理数系に興味のある中学生の能力をさらに質的に伸長させる取り組みで、当財団では、年間最大500万円を5年間助成する」と、大学・高専を対象にした助成も新たにスタートしたという。「10月1日からは、2024年度『科学教育振興助成』の応募受付を開始した。募集期間は、大学・高専向けの次世代理経人材育成プログラム助成は11月20日まで、小・中・高校向けのプログラム助成、個別助成、意欲的な小学校の先生方を支援するプログラム助成は11月30日までとなっている」と、来年度の「科学教育振興助成」にも多くの学校から応募があることに期待を寄せていた。
そして今回、「科学教育振興助成」事業の一環として、「学習指導要領改訂とその後 ~探究的な学びは生徒と教員をどう変容させるのか?~」をテーマとしたパネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションでは、愛媛大学 教育学部 教授の向平和先生がコーディネーターを務め、東京農業大学 教授の山口晃弘先生、兵庫県立神戸高等学校 教諭の繁戸克彦先生、世田谷区立千歳中学校 主任教諭の青木久美子先生、三田国際学園中学校・高等学校 教諭の大野智久先生の4名がパネラーとして参加し、「探究的な学び」の学習指導について、現状と今後の方向性や指導に関して意見を交わした。
まず、100年に1度の大改革といわれている新・学習指導要領が小学校から高校まで完全実施された中で、「探求をどのように捉え、子どもたちがどう変容しているか」をテーマにディスカッションを行った。各先生がそれぞれの立場から、教育現場での事例も交えながら、探究的な学びの実状と課題、子どもたちの意識や行動の変化などを語ってくれた。また、次のテーマでは、「探求を指導するには教員はどのような資質・能力が必要か」について討論した。先生の視点から、指導する側には何が求められるのか、探求的な学習を実践するためのポイントはどこにあるのかなどを話し合った。
最後に、東京農業大学の山口先生は、「普段の授業に、いかに探求的な要素を取り入れながら、授業を充実させていくかがポイントになる。その時に、いきなりすべてを探求的な学習にするのではなく、気づきの部分には探求的な学びを取り入れて、まとめの部分は従来の学びにするなど、少しずつ授業を変えていくことが大切。そうすると、授業が楽しくなり子どもたちも乗ってきてくれる」と、段階的に授業内容を切り替えていくとよいとアドバイスしてくれた。
兵庫県立神戸高等学校の繁戸先生は、「高校では、探究活動がいきなり入ってきて、どうしたらよいのかわからない先生も多いと思う。その中で、楽しく探究活動をすることを心がけて、毎年それを続けていってほしい。これによって、探究活動は楽しいということが先輩から後輩に伝わっていき、やがて学校全体に定着すれば、探求活動がさらに活発になっていくと考えている」と、先生も生徒も一緒になって楽しみながら探究活動を続けていくことが大切であると話していた。
世田谷区立千歳中学校の青木先生は、「生徒と先生が、『どうしてこうなるのか』『これはわかるけれど、これはわからない』といったことを、謎解きのように考えて、一つ解決したら、また次の謎を追いかける。これを続けていくことで、探究活動が少しずつ身についていくと感じている。経験年数に関わらず、社会環境がどんどん変化していく中で、常に新鮮な気持ちを持って、探求的な学習に取り組んでほしい」と、謎解きをする感覚で、探求活動に取り組んでいくとよいのではないかとの見解を述べた。
三田国際学園中学校・高等学校の大野先生は、「探求活動では、問いや課題の設定が難しいといわれているが、その前に『!』があることが大切だと思っている。この『!』は、『なるほど』『すげー』といった生徒の心が動いた瞬間であり、これがあるから次に疑問が生まれてくる。そのためにも、タブレットやPCの情報だけでなく、本物を見る体験をさせてほしい。そして、本物を見て感じたことを振り返り、先生がサポートすることで生徒の探求心を引き出すことができると思っている」と、リアルな体験や経験が探求的な学びのきっかけになるとの考えを示した。
中谷医工計測技術振興財団=https://www.nakatani-foundation.jp/
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