- Drink&Food2022/11/16 12:25
最先端の本格焼酎&泡盛ペアリングのキーワードはフレーバー、“お湯を先に・焼酎は後から”には理由があった、お湯割りの科学について解説
最近人気のワインや日本酒のペアリング。時代とともに、酔う酒から味わう酒へ。料理と相性のよいお酒を合わせることで、料理をそのまま食べるよりも、何倍、何十倍も食事が楽しめる酒ペアリングに関心が高まっている。本格焼酎と泡盛は、麹と原材料を発酵させた醸造酒を、さらに蒸留させて造る蒸留酒。この原材料由来の風味がどんな料理にも合うと、食中酒として嗜まれてきた。新しいフレーバーや味わい豊かなバラエティーのタイプが次々と登場する昨今。料理や食材とぴたりと合わせることで、口の中に新たな味覚が生まれ、お酒本来の香りや味わいをよりいっそう感じることができる。それが最先端の本格焼酎&泡盛ペアリングなのだという。
本格焼酎と泡盛の成分はほぼ水とエタノール。香味成分はわずか0.2%といわれている。最先端のペアリングの鍵となるのは、この0.2%だとか。この中に含まれる幾多の香味成分の違いが本格焼酎と泡盛の個性となり、料理の素材や風味を引き上げるのだという。香りを生かすペアリングを意識すれば、和食や洋食、中華などどんな料理も引き立てる。ソムリエの田崎真也氏に教わる香りからひもとく本格焼酎&泡盛ペアリングを紹介しよう。
まず、フルーティーなタイプの芋焼酎と生ハムクリームチーズ添えのペアリング。蒸したさつまいもと米麹由来の香りがする芋焼酎。最近人気のライチやマスカットなど、フルーツを感じさせる香りがするタイプの芋焼酎には、穀類の風味と脂を感じる豚肉が相性抜群だとか。豚肉に足したナッツ香やオイル感もよく合うという。
生ハムクリームチーズ添えの作り方は、生ハムにクリームチーズをのせて、半割にしたミニトマト、松の実をトッピング。オリーブオイルを回しかける。生ハムは油脂分が少ないので、チーズやオリーブオイルをプラスしよう。松の実の香ばしい香りがアクセントになる。芋焼酎はフルーティーで華やかなタイプを水割りかソーダ割りで軽やかに合わせるのがおすすめ。
すっきり軽いタイプの麦焼酎には、スモークサーモンとの相性が抜群だとか。麦焼酎の香りの基本はライ麦パンに近い香りやビールの麦汁、ナッツ、バナナなど。洋風料理ならスモークサーモンなど、焼いたパンに合う料理と相性がぴったりなのだという。
スモークサーモンの作り方は、玉ねぎ1/4個をみじん切りにし、水に15分ほどさらして水気をしっかり切る。器にスモークサーモン60gを並べ、ケイパー大さじ1/2を散らし、玉ねぎと刻んだイタリアンパセリ、レモンの薄切りを添える。すっきり軽い爽やかなタイプの麦焼酎とスモークサーモンはベストマッチとのこと。玉ねぎやパセリが引き立て役になるという。トーストしたライ麦パンを添えたら完成。麦焼酎は水割りかオンザロックで楽しんでほしいという。
濃厚なタイプの黒糖焼酎には、鶏もも肉の照り焼きとのペアリングが格別なのだとか。黒糖焼酎は、サトウキビで作る黒糖が原料なので、黒糖フレーバーを感じさせる、カラメルっぽい香りが特長となっている。鶏肉の照り焼きなど、醤油と砂糖の甘じょっぱさが好相性とのこと。素材や調味料の甘さを生かした料理がおすすめだという。
鶏もも肉の照り焼きの作り方は、鶏もも肉一枚を半分に切り、長ねぎ1/2本は3㎝幅の筒切りにする。フライパンにサラダ油小さじ1を温め、皮目を下にして鶏肉を焼き、皮目がカリっとしたら、長ねぎとししとう4本を加え、両面をじっくりと焼いて火を通す。醤油大さじ3、黒糖大さじ1、黒糖焼酎大さじ2、マスタード小さじ1をフライパンに加え、鶏肉をからめながらとろみが出るまで煮詰める。濃厚なタイプの黒糖焼酎には、濃口醤油と黒糖の甘じょっぱさが合うのだとか。ふくよかな香りには、お湯割りかオンザロックで黒糖を楽しんでほしいという。
これからの季節、本格焼酎&泡盛をお湯で割り身体の芯から温まりたくなるのでは。芋焼酎のお湯割りを口に運ぶと、ほのかな芋の香りと甘みが広がり、温かさに包まれる。鹿児島で古くから飲み継がれてきたのは、水で割った芋焼酎を黒ジョカと呼ばれる平たい土瓶で一晩寝かせて直火にかけた、じんわりとまろやかになった味わいだとか。1970年代、薩摩酒造の「さつま白波」が焼酎6対お湯4の「ロクヨン」を打ち出したCMで、芋焼酎とともにお湯で割るという飲み方が東京へ進出した。世界の蒸留酒の中でもユニークなお湯割りのおいしさが全国へと広まった。
おいしいお湯割りは、習慣的に「お湯を先に、焼酎は後から」。その科学的根拠を約15年前に徹底的に調査したのが薩摩酒造のかんしょ利用技術研究所にいた森山正宗氏(現在は製造部)だという。「お湯割りのグラスの中で何が起こっているか素朴に知りたかった」と、思い立った森山氏が実施した実験は8パターン。お湯の温度は50 ℃と70 ℃、割合は6対4と4対6、そしてお湯が先か焼酎が先か、それぞれサーモグラフィー画像を撮り、グラスの中の温度を可視化して徹底的に検証したという。
それらの結果をひも解くと「なぜお湯割りはお湯が先なのか」の根拠が明らかになったとのこと。「お湯を先に入れることでグラスをあたため、お湯は飲み心地のいい温度に下がる。そこに常温の芋焼酎を加えると、お湯と芋焼酎の温度差で自然に対流がおき、かき混ぜなくても温度や濃度が均一になる。さらに2分おくことで、全体が混ざりまろやかな味わいになることがわかった」と教えてくれた。伝統的なお湯割りの作り方も、アルコールと水の分子が均一に混ざり合うことで飲み心地がよくなるのは同じ理論とのこと。「黒ジョカで作るお湯割りは、科学のない時代に先人たちが編み出した知恵だとあらためて実感した」と森山氏は振り返る。本格焼酎は「お湯を先に、焼酎は後から」を合言葉に、おいしいお湯割りを作ってみては。
本格焼酎&泡盛の知識をさらに深めるのにおすすめなのが日本の酒情報館。同施設は、歴史と文化を含む日本酒・本格焼酎・泡盛の魅力のすべてを「見て・触れて・体験する」ことを通じて世界中の人に知ってもらうための施設となっている。大吟醸酒・純米吟醸酒・純米酒・古酒・スパークリング清酒・貴醸酒など、全国各地の様々なタイプの日本酒、芋・麦・米・黒糖などの本格焼酎や泡盛、そして酒蔵の造る様々な果実のリキュールを常時50アイテム程度、1杯100円から試すことができる。選ぶのが難しい人のために、バラエティー豊かで少しお得な3種セットも用意しているとのこと。銘柄は入れ替わるので、いつでも違うお酒を味わうことができる。
[日本の酒情報館 施設概要]
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