- Health&Medical2024/06/26 19:57
感染症流行の実態調査、現代は「感染症ドミノ」時代に、約半数の医師がコロナ禍後に繰り返し感染症に罹る患者が増加と回答
生活者の“健康と暮らし”に関する情報を発信するポータルサイト「マイライフニュース」を運営するヒューマン・データ・ラボラトリ(以下、HDL)は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の収束および、感染症対策意識の希薄化が見られる世の中の感染症の流行状況について、医師544名を対象に「感染症流行の実態」に関するアンケート調査を実施した(5月17日~22日)。また、今回の調査結果を受け、実際の診療状況や「感染症ドミノ」を予防するポイント等について、医療法人社団五良会 理事長の五藤良将先生に話しを聞いた。
コロナ禍以降、風邪を含む感染症患者が増えているかを聞いたところ、47.8%の医師が「増えている」(とても増えている+やや増えている)と回答した。また、同一の患者が感染症に複数回罹患するケースについても聞くと、45.2%の医師が「増えている」(とても増えている+やや増えている)と答え、約半数の医師がコロナ禍と比べて、「感染症を訴える患者」および「感染症に複数回罹患する患者」が増えていると回答していた。専門医別(内科/小児科/耳鼻咽喉科)に見ると、小児科医で半数以上(50.7%)の医師が「感染症に複数回罹患する患者」が増えていると回答しており、特に子どもの間で複数回感染症に罹る現象が起こりやすい可能性が示唆された。
同一の患者が3ヵ月以内(以下、短期間)で複数回感染症に罹ったケースで、最も多く感染症に罹った回数を聞いたところ、63.1%の医師が「2回」と回答した。
また、同一の患者がどのくらいの期間で複数回罹ると、感染頻度が多いと感じているのかを聞くと、「1ヵ月に2回以上」が最多で44.1%だった。1ヵ月に2回以上の頻度で感染症に罹る場合は、要注意と感じている医師が多いことがわかった。
同一の患者が短期間で複数回感染症に罹ったケースについて、どのような感染パターンが多いかを聞いたところ、「新型コロナ→インフルエンザ」(36.9%)のパターンが最多となった。また、「インフルエンザ→新型コロナ」「新型コロナ→新型コロナ」「インフルエンザ→インフルエンザ」のパターンが上位にあがった。この他に、「インフルエンザ→RSウイルス感染症」「インフルエンザ→感染性胃腸炎(ノロウイルス)」のパターンもみられた。
短期間で複数回感染症に罹った患者の年代を聞くと、最も多かったのは「10歳未満」(20.2%)。次いで「80代以上」(15.6%)、「70代」(11.4%)と高齢者が続くかたちとなった。また「30代」(11.2%)については、医師から「子どもからの感染が多い」「子どもが学校や保育園で罹って家庭内でうつしている」といった自由回答があり、子育て世代で感染リスクが高いことが示唆された。
短期間で複数回感染症に罹った患者の属性について聞いたところ、「高齢者」が最多で47.2%。次いで「未就学児」(33.3%)、「未就学児をもつ親」(27.4%)に回答が集まり、患者の年代を聞いた前の設問を裏付ける結果となった。
短期間に複数回感染症に罹患することで起きる健康被害は、1位が「咳」で48.7%、2位が「倦怠感」(45.6%)、3位が「痰」(31.6%)の順となった。また、4位には「集中力の低下」(26.1%)が入り、身体症状だけでなく、生活の質(QOL)を下げるような症状も上位にあがった。
短期間に複数回感染症に罹患することで発症すると考えられる他の疾患について聞いたところ、1位「肺炎」(49.1%)、2位「気管支炎」(45.2%)の2つの疾患に多くの回答が集まった。特に1位の「肺炎」は、厚生労働省の人口動態調査でも死因順位の5位となっており、要注意の疾患といえる。3位以下は、「副鼻腔炎」(25.6%)、「喘息」(24.1%)、「咽頭炎」(23.0%)と続いている。
短期間に複数回感染症に罹患した患者から、自身の生活や周囲への影響などについて相談や愚痴を聞いた内容としては、「家族へ感染症をうつしてしまう不安」(30.7%)、「職場の人に負担をかけてしまう不安」(25.4%)、「家族に負担をかけてしまう不安」(24.1%)が上位となり、家族や職場に及ぼす影響を不安に感じる患者が多いことがわかった。この他に、「体力が戻らず引きこもりがちになってしまう」「食欲不振」など、自身の体調に関して不安を覚える患者もみられた。
同一の患者が短期間に複数回感染してしまう状況を、一言で表すとしたら、「感染症ドミノ」「感染症リレー」「感染症パレード」「ルーティン感染症」のどの言葉がしっくりくるか聞いてみると、69.7%の医師が「感染症ドミノ」と回答し、約7割を占めた。その他の言葉は、「感染症リレー」15.8%、「感染症パレード」9.6%、「ルーティン感染症」5.0%と、いずれも20%に届いておらず、「感染症ドミノ」という言葉が医師から支持される結果となった。
短期間で複数回感染症に罹患するケースについて、その最大の要因と考えられるものを聞いたところ、71.3%の医師が「免疫力の低下」と回答した。2位以下は、「疲労が溜まっている」(24.6%)、「手洗い・手指消毒が不足している」(24.4%)、「睡眠時間が少ない」(23.0%)、「糖尿病などの基礎疾患がある」(22.6%)、「ストレス過多」(21.0%)と続いている。
「感染症ドミノ」を防ぐ方法について聞くと、1位は「免疫機能の維持」で62.7%の医師が回答した。次いで、「睡眠時間の確保」(56.6%)、「バランスのよい食事」(46.3%)、「小まめな手洗い・手指消毒」(36.2%)が上位にあがった。「感染症ドミノ」の予防法として、免疫力を重視する医師が多いことが浮き彫りとなった。
免疫機能を維持するためにおすすめの方法を聞いたところ、「睡眠時間の確保」(70.2%)と「バランスのよい食事」(64.0%)の上位2つに回答が集中した。3位以下は、「過度なストレスを避ける」(36.2%)、「腸内環境を整える」(32.0%)、「習慣的に適度な運動をする」(19.5%)と続いている。
免疫機能維持のためにおすすめの食材について聞いてみると、「ヨーグルト等の乳製品」(59.9%)が1位となり、約6割の医師が推奨していた。次いで、「納豆等の発酵食品」(43.8%)、「野菜・果物類」(42.3%)、「肉類」(26.5%)、「きのこ類」(25.7%)、「魚介類」(22.6%)の順となった。
医師の立場として自身が取り組んでいる感染症対策を聞くと、「睡眠時間の確保」と回答した医師が最多で半数を超えた(55.7%)。次に「バランスのよい食事」と「手洗い・手指消毒」が同率(47.8%)で2位となった。以下は、「免疫機能の維持」(36.8%)、「ストレスをためない」(26.5%)、「歯磨き」(23.7%)と続いた。
前問で、感染症対策として「免疫機能の維持」に取り組んでいると回答した医師に、免疫機能維持のために摂ることを心がけている食材を聞いたところ、72.0%の医師が「ヨーグルト等の乳製品」と回答し、ダントツの1位となった。「ヨーグルト等の乳製品」は、免疫機能の維持におすすめの食材でも1位となっていたが、実際に多くの医師が摂取を心がけていることが明らかになった。なお、2位には「野菜・果物類」(47.0%)、3位には「納豆等の発酵食品」(44.0%)が入った。
同一の患者が感染症に複数回罹患するケースはどの月に多くなるかを聞くと、「1月」(71.9%)、「2月」(71.1%)、「12月」(63.8%)に回答が集中した。寒さや乾燥、インフルエンザの流行があることから、短期間に複数回感染する「感染症ドミノ」は冬時期にリスクが高まることが示唆される結果となった。一方で、自由回答では、「新学期や入園シーズンである4月・5月には、子どもの感染症患者が増える」という意見もみられた。
今回の調査結果を受けて、医療法人社団五良会 理事長の五藤良将先生は、「短期間に複数回、感染症に罹患する『感染症ドミノ』は、免疫力の低下が主な原因だと思われる。免疫力が低下することで、病原体に対抗する力が弱まり、『感染症ドミノ』に陥るリスクが高まる。免疫力が低下する要因としては、過度なストレスが挙げられる。ストレスホルモンであるコルチゾールの増加が免疫機能を抑制し、感染症に対する抵抗力を低下させる。また、免疫系の調整には睡眠が重要な役割を担っているため、睡眠不足も免疫機能の低下につながる。この他、栄養バランスの乱れも、ビタミンやミネラル、抗酸化物質の不足を招き、免疫機能の低下を引き起こす」と、「感染症ドミノ」を引き起こす最大の原因は「免疫力の低下」であると指摘する。
「今回の調査結果では、約半数の医師が、コロナ禍以降、『感染症ドミノ』を経験する患者が増えていると回答した。私の医院でも、『感染症ドミノ』が疑われる患者が増えてきており、特に小児科においてその傾向が顕著になっている。『感染症ドミノ』が増加している大きな要因としては、コロナ禍による『免疫負債』が挙げられる。『免疫負債』とは、感染症に対する抵抗力が低下している状態を指す。約3年に及んだコロナ禍では、徹底した予防策や厳しい行動制限があり、多くの人が通常であれば日常的に獲得できる感染症に対する免疫を学習することができず、この『免疫負債』を抱える状況に陥った。このためコロナ禍以降は、様々な感染症にかかりやすくなっているといえる。また、行動制限が緩和され、人と接する機会が急に増えたことも、『感染症ドミノ』が起こる一因と考えられる」と、長期にわたるコロナ禍が残した「免疫負債」が「感染症ドミノ」の増加につながっているとの見解を示した。
「調査結果では、10代未満の未就学児や70~80代以上の高齢者に『感染症ドミノ』が多くみられた。この結果からも、免疫力が『感染症ドミノ』に大きく関与していることがわかる。高齢者は、加齢によって免疫力が低下しやすく、感染症に罹るリスクも高いといえる。また、未就学児は、免疫系が未発達であり、もともと感染症に対する抵抗力が弱い状態となっている。そして、未就学児を持つ子育て世代も、子どもからの感染リスクが高く、免疫力が低下しやすいため『感染症ドミノ』に注意する必要がある。この他に、基礎疾患を持っている人は、『感染症ドミノ』によって症状を悪化させたり、合併症を引き起こすケースもあるので要注意。特に糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病を患っている人は、健常者に比べて免疫力が低下しやすく、感染症にも罹りやすいため、『感染症ドミノ』状態にならないよう気をつけてほしい」と、高齢者や未就学児、子育て世代、基礎疾患を持つ人は「感染症ドミノ」に要注意であると強調した。
「感染症ドミノ」を予防するポイントとしては、「調査結果にもあるように、『感染症ドミノ』は、気温が下がって空気が乾燥し、インフルエンザが流行する冬の時期に最もリスクが高まる。しかし、近年は感染症の流行パターンも変化しており、夏に流行するプール熱や手足口病が5月や6月に増加するなど、季節に関係なく感染症が広がっている。また、直近では、夏を前に沖縄で新型コロナの感染が拡大しており、夏だからといって油断は禁物。『感染症ドミノ』を予防するためには、何よりまず免疫機能を維持することが重要になる。普段の生活習慣を見直し、バランスの良い食事、十分な睡眠、ストレス管理を心掛けてほしい。また、こまめな手洗いや手指消毒も、感染症の拡散を防ぐために大切。そして、これから迎える暑い夏には、脱水症状によって免疫力低下を招く恐れもあるため、特に水分補給を怠らないようにしてほしい」とアドバイスしてくれた。
「免疫機能を維持する食材としては、今回の調査結果の通り、私も『ヨーグルト等の乳製品』『野菜・果物』『納豆等の発酵食品』を摂ることを意識している。特にヨーグルトには、乳酸菌等のプロバイオティクスが含まれており、腸内環境を整え、免疫力を高める。また、野菜・果物は、ビタミンやミネラル、食物繊維、抗酸化物質が豊富で、免疫機能の維持をサポートしてくれる。内臓脂肪・中性脂肪・コレステロールが多いと生活習慣病を招きやすく、感染症にもかかりやすい状態になってしまう。バランスのよい食事を意識しながら、先にあげた食材を積極的に摂取することで、免疫機能を維持し、『感染症ドミノ』の予防に努めてほしい」と、免疫機能の維持のために摂りたい食材についても解説してくれた。
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[調査概要]
調査名:感染症の流行実態に関する意識調査
調査対象者:全国の医師(内科、小児科、耳鼻咽喉科)544名
調査手法:インターネット調査
調査時期:2024年5月17日(金)~5月22日(水)
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはならない場合がある
ヒューマン・データ・ラボラトリ=https://www.humandatalab.com/
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