赤血球の巡りが滞るとどうなる? 細胞に届ける酸素が不足して貧血状態に

血液細胞の一種である赤血球は、エネルギーを産生するために欠かせない酸素を全身の細胞に届け、細胞から排出された二酸化炭素を回収する役割を担っています。そして、赤血球の中で、酸素と直接結合して運搬するのがヘモグロビンです。ヘモグロビンは、「ヘム鉄」という鉄と、「グロビン」というタンパク質で形成されています。1個の赤血球には、ヘモグロビンが約2億5000万個も含まれており、ヘモグロビン1個につき4つの酸素分子と結合できるため、赤血球1個で約10億もの酸素分子を運ぶことができます。

コロナ禍をきっかけによく耳にするようになった「酸素飽和度」は、赤血球中のヘモグロビンのうち、酸素と結合しているヘモグロビンの割合のことを指し、動脈血の中にどの程度の酸素が含まれているかを示す指標となります。正常な動脈血の酸素飽和度は96%以上であり、酸素飽和度が90%以下の場合は呼吸不全が疑われます。臨床現場では、パルスオキシメーターという機械で経皮的に酸素飽和度を計測することが多く、こうして得られた動脈血の酸素飽和度をSpO2(エスピーオーツー)と呼びます。

では、赤血球の巡りが滞るとどうなるのでしょうか。赤血球が正常に巡らなければ、酸素が不足し、細胞でのエネルギー産生がうまくできず、めまいや立ちくらみ、息切れ、動悸などの貧血症状が起こります。貧血の中でも最も多いのが「鉄欠乏性貧血」です。鉄欠乏性貧血は、鉄の不足によって赤血球内のヘモグロビン量が低下するほか、赤血球自体が小さくなったり、減少したりすることで発症します。

鉄は、成人の体内に3~4g程度存在し、そのうち約70%が赤血球内のヘモグロビンや、筋肉中のミオグロビンの構成成分となって機能しています。酸素の運搬を担うこれらの鉄のことを「機能鉄」と呼びます。残りの約30%の鉄は、「貯蔵鉄」として肝臓や骨髄などに蓄えられ、機能鉄の不足に備えています。つまり、鉄欠乏性貧血の症状が出たときには、すでに貯蔵鉄が使い果たされている状態ということになります。

鉄欠乏性貧血の場合、毎日の食事で鉄を補うことで症状を緩和することができます。特に月経のある女性は、鉄の窃取を心がけるようにしましょう。鉄は他の栄養素に比べて吸収しづらく、体内への吸収率は動物性食品に多い「ヘム鉄」で10~30%、植物性食品に多い「非ヘム鉄」で1~8%ほどといわれています。タンパク質やビタミンCを一緒に摂ることで、吸収率の悪い非ヘム鉄の吸収率をアップさせることができるので、ぜひ試してみてください。(監修:健康管理士一般指導員)


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