- Study&Work2024/09/02 19:28
政策改革・イノベーション研究所、たばこ税制の観点から技術革新とハームリダクションをテーマに第1回シンポジウムを開催
政策改革・イノベーション研究所は、第1回「政策改革・イノベーションシンポジウム 技術革新とハームリダクション - たばこ税制の観点から」と題した、シンポジウムを8月30日に開催した。当日は、中山展宏衆議院議員(自民党・ルール形成戦略議員連盟 事務局長)を招き、技術革新が社会制度に与える在り方およびインパクトについて討議し、日本における政策改革およびイノベーションを進める税制・規制改革について議論を深めた。
政策改革・イノベーション研究所(IIPR:Innovation Institute for Policy Reform)は、技術革新による問題解決を促進するための政策に関する調査・研究・提言を実施する研究機関。現代社会では目まぐるしい技術革新によって従来まで当然視されていた社会的コストが低減されるとともに、新たな社会的メリットを創出することが可能となっている。
古い時代の技術に合わせた政策や規制が温存されることによって、私たちが本来手にすることができるはずの成功の果実を十分に収穫することができないこともある。たとえば、医療、健康、交通、環境、労働などのあらゆる分野で、納税者が税負担等を引き受けて既存の政府システムを支えている。これらのシステムの中には、新たな技術革新のアイデアを追加することを通じて、より効果的、効率的に、社会的な害悪を低減し、人々のQOLを改善することができるものも多々あると指摘する。
人々のQOLを改善することは、人々の幸福感を高めることにつながるとともに、膨張を続ける社会保障費抑制や新たな経済成長などを実現することにつながる。そのため、同研究所では、技術革新を促進し、技術普及に貢献するために、どのような政策や規制を構築すべきかについて積極的な政策提言およびアドボカシー活動を行うという。
そして今回、第1回シンポジウムを開催。たばこをテーマに、政策改革・イノベーション研究所 代表理事の蔵研也氏と中山議員が議論を深めた。
「たばこには、紙巻きたばこと加熱式たばこの2種類があり、税金は紙巻きたばこの方が高い。しかし、加熱式たばこの税金を紙巻きたばこのレベルにまで引き上げることになった。たばこという嗜好品に対して大きな税金をかけることはどうなのかということを提起したい」と蔵氏。「紙巻きたばこは、火を扱う。それだけに寝たばこによる火事などが問題になっている。しかし加熱式たばこは火を使わないため、火事を起こす心配もない。こうした点からも紙巻きたばこと加熱式たばこの税金が一緒であるのはおかしいと感じている」と、たばこ税について疑問を投げかける。中山議員は、「たばこについては健康被害などが語られるケースがほとんど。しかし出火による経済的な損失をテーマに議論されることはほとんどない」と、たばこの不始末による火事で失われる損失に着目した点は新たな発見であると目を丸くする。
蔵氏は、「たばこを肯定するつもりはないが、ニコチンを吸いたいという人に加熱式たばこがあるということを伝えていくことが必要なのではないかと考える」と、ニコチンを吸うことを排除してしまうのではなく、代替え案として加熱式たばこがあるということを知らしめることの方が重要であると説く。中山議員は、「紙巻きたばこは、副流煙に対する健康被害や香害の観点からよくないものとされているが、火による問題はまだ議論し尽くされていない」と、紙巻きたばこの害について火を使うことによる問題も話し合っていく必要があるという。
蔵氏は、「たばこ税の引き上げは、健康被害の観点から、日本医師会が賛成を表明している」とのこと。「しかし、英、米の医学論文では、加熱式たばこはニコチンを吸っているだけなので、がんに罹患するリスクも紙巻きたばこに比べて1/10以下であると報告されている」と、諸外国では加熱式たばこが健康に与える影響は非常に小さいのだと訴える。「こうした論文が存在するにも関わらず、厚生労働省のホームページには健康に対するはっきりとした差がないと記載されている」と、国内では加熱式たばこと紙巻きたばことの間に健康被害のはっきりとした差が見られないという見解を発表しているのだと憤る。「多くのエビデンスが存在する英国では、紙巻きたばこに比べて加熱式たばこの税金は1/4~1/5程度に抑えられている」と、健康被害を理由に紙巻きたばこと加熱式たばこの税金を同一にするのはおかしいのではないかと問題提起する。これについて中山議員は、「加熱式たばこには、健康被害がないという意見が出ても、医師会などがその意見を認めず、平行線を辿るケースがほとんどである」と、2種類のたばこを一緒くたに議論する傾向が、医師会や厚生労働省にはあるという。
「厚生労働省の報告に疑問を呈しても、誰も耳を傾けてくれない」と、役所の情報が絶対であるという空気が存在すると蔵氏は嘆く。中山議員は、「医師会のメンバーの中には、紙巻きたばこに比べて、加熱式たばこは健康被害が少ないという人もいる。しかし、たばこ税は我が国の財源として長い歴史がある。たばこ税を引き上げて、現状の税の大きさに合わせるという話もある」と、税金全体の中で、たばこ税はこれだけ必要ということで金額が設定されている現状もあると指摘する。蔵氏は、「紙巻きたばこと加熱式たばこでは健康被害に違いがある。これを考慮し、紙巻きたばこの税金を引き上げて、加熱式たばこの税金を引き下げるということであれば納得できる。税金は個人の財産を奪っていることから、必要最小限にとどめる必要がある」と、現在の税制が理にかなっているとは言い難いと声を大にする。
「喫煙者の税への負担が大きくなっているという不公平感がある。その一方で、社会的にも吸える場所が少なくなり、肩身が狭い思いもしている」と、税の面でも社会的な面でも愛煙家は大きな負担を強いられていると中山議員は指摘する。蔵氏も、「喫煙所は小さなスペースしかない。税金を使ってもう少ししっかりとした施設をつくる必要もあると感じている」と、税負担が大きいだけに、税金を使って喫煙所を整備するべきであると語っていた。
また蔵氏は、「日本のたばこ会社であるJTは、加熱式たばこが弱く、米国のフィリップモリスや英国のブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)が加熱式たばこに強いという側面もある」と、日本の企業を守るためにも加熱式たばこの税金を引き上げようとしているのではないかと訴える。中山議員は、「日本のたばこ産業に関わる農家には、たばこの葉の生産からバイオマスに変えることを促すなど、政府が陣頭指揮をとって行う必要もある」と、農家を守る方法は税金の引き上げ以外にもあると力説する。蔵氏は、「自由な競争にすることによってイノベーションが生まれる。おいしいものを作るための改革も行われるはず」と、競争社会を促すことが結果として、その産業をさらに発展させることになると語る。中山議員も「その土地にあった作物を栽培することで、生産性も儲けも上がっていく」と、たばこ農家を守るために葉の購入を補償するというような取り組みは、かえって農家の生産性や収入を阻害していることになるのではないかと述べていた。
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