政策改革・イノベーション研究所、「たばこと地方自治との新しい関係」をテーマに第3回シンポジウムを開催

左から:政策改革・イノベーション研究所 代表理事の蔵研也氏、遊佐大輔横浜市会議員、藤井あきら東京都議会議員

政策改革・イノベーション研究所は、第3回「政策改革・イノベーションシンポジウム 技術革新とハームリダクション-たばこと地方自治との新しい関係」と題したシンポジウムを10月1日に開催した。今回は、藤井あきら東京都議会議員と遊佐大輔横浜市会議員を招き、地方自治体の取り組みにフォーカスを当て、日本における政策改革およびイノベーションを進める税制・規制改革について議論を深めた。

政策改革・イノベーション研究所 代表理事の蔵研也氏

「当研究所は、技術革新によって、たばこ税制などの社会問題解決を促進するための政策に関する調査・研究・提言を実施する研究機関となっている。近年、さまざまな社会問題を解決し得る新しい技術が出てきているにもかかわらず、政治的な側面で活用が進んでいない現実がある。こうした技術革新を促進し、ハームリダクションプロダクトに関する政策・規制改革に関する調査研究およびアドボカシー活動を行っている」と、政策改革・イノベーション研究所 代表理事の蔵研也氏が挨拶。「第3回目となるシンポジウムでは、東京都と横浜市から若手議員を招き、それぞれの地方行政におけるたばこ規制・税制に関する実状について理解を深め、技術革新が社会制度に与える在り方やインパクトについて討議したいと思っている」と、シンポジウムの開催趣旨を説明した。

遊佐大輔横浜市会議員

横浜市のたばこ規制・税制の状況について遊佐議員は、「たばこ規制に関しては、神奈川県が受動喫煙防止などの対策を打ち出しており、横浜市としては県の規制に従うことになる。一方で、横浜市における、たばこ税の収入は232億円に達し、大きな財源となっている。神奈川県では、東京都の政策に合わせるようにたばこ規制を強化しているが、たばこ税が入ってくるのは横浜市であり、たばこに関する規制と税収のせめぎあいが生じている」と、たばこを巡って神奈川県と横浜市は難しい関係にあるという。「また、私は愛煙家なのだが、最近はたばこをやめさせようとする勢力が強まっていると感じている。そうではなく、たばこを吸う人と吸わない人が共存できるような社会をつくる意識も大切なのではないか。そのためにも、たばこ規制にイノベーションを起こす必要がある」と持論を展開していた。

藤井あきら東京都議会議員

藤井議員は、「東京都の受動喫煙防止条例では、かなり厳しくたばこを規制している。例えば、2人以上の人が利用する施設は原則屋内禁煙であり、紙巻たばこも加熱式たばこも決められた場所以外では吸うことができない。また、路上喫煙防止についても、従来の紙巻たばこに加えて加熱式たばこも規制の対象にする区が増えつつある」と、東京都のたばこ対策の現状を紹介。「たばこ税については、都の税率が1000本あたり約1000円であるのに対して、区市町村では6500円を超えている。この点では、神奈川県と同様に、区市町村の税収が大きい構造になっている」と、たばこ税では東京都も神奈川県と同じ問題を抱えていると話していた。

遊佐議員は、「行政の職員が路上喫煙の見回りをするという動きもあるが、路上喫煙を取り締まるために莫大な税金が使われているのには納得がいかない」と語気を強める。これに蔵氏は、「その通りだと思っている。行政罰は、刑事罰と違って複雑な手続きをしなくても罰金を徴収できる。路上喫煙を取り締まって、“吸っていた”という明確な証拠がないまま罰金を取られるのは人権侵害といってもよく、まるで警察国家のような危うさを感じる」との見解を示した。

「特に加熱式たばこの増税については、どんな健康被害があるのか、もっとエビデンスを突き詰めて議論する必要がある。エビデンスがはっきりしない中で、紙巻たばこと同水準まで税率を引き上げるのはおかしいのではないか」と遊佐議員は訴える。蔵氏は、「加熱式たばこのエビデンスに関する議論は、とても雑になっていると感じる。もし、健康被害のエビデンスがあるのならば、紙巻たばこと税率を同じにするのではなく、エビデンスに応じて課税するというやり方もある」と提言していた。

左から:政策改革・イノベーション研究所 代表理事の蔵研也氏、遊佐大輔横浜市会議員、藤井あきら東京都議会議員

たばこ規制のイノベーションについて、遊佐議員は、「イノベーションや技術革新は、自由な意見と発想から生み出されるものだと思っている。それだけに、規制を強化するだけでなく、ある程度緩和することも必要であり、このイノベーションを国がサポートしていくべきだと考えている。その中で、たばこ規制に対してベンチャー企業がどんどん意見を出せる環境になれば面白い」との考えを述べた。藤井議員は、「東京都では、受動喫煙防止条例を強化したことにともない、区市町村に向けて喫煙環境の整備に対する多額の補助金を出している。現在、たばこを吸わない人からは、喫煙所の臭いが気になるという声も挙がっているが、空気清浄技術の進化や新しい喫煙コンテナなど、さまざまなイノベーションによって問題が解消されつつある」と、規制を強化する一方で喫煙環境の整備に力を注いでいると話していた。蔵氏は、「自由主義の観点からは、自分が少し嫌だと感じることでも、直接的に被害がないのであれば認容することが自由な社会につながると思っている。そのため、過剰な規制をかけることは、イノベーションどころか社会全体を窒息させてしまうのではないかと危惧している」と、厳しすぎる規制はイノベーションを妨げることになると警鐘を鳴らしていた。

最後に蔵氏は、「今後は、地方自治体ごとに、たばこ規制に対する独自の取り組みが広がっていくことに期待している。現在は、国の法令に対して、上乗せ条例や横出し条例が認められているが、もっと地域に密着した住民のための政策を打ち出していってほしい。今回のシンポジウムに参加してくれた2人の議員には、国と争ってでもたばこ規制にイノベーションを起こすという気概を持って、これからも活動してほしい。また、加熱式たばこについては、やはりエビデンスが重要になると考えている。今の段階で、感情的に意見をぶつけ合っても泥仕合になるだけ。有権者全員が納得するエビデンスを基に、規制や税制の見直しを訴えかけていく必要がある」と総括した。

政策改革・イノベーション研究所=https://iipr.jp


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