チーズプロフェッショナル協会、チーズの世界大会「WCA 2024」および国内大会「JCA 2024」の成果報告会を開催

左から:チーズプロフェッショナル協会 会長の坂上あき氏、広内エゾリスの谷チーズ社 寺尾智也氏、木次乳業の川本英二氏、日本料理人の齋藤章雄氏、農林水産省 畜産局 牛乳乳製品課の伊藤寿氏

チーズプロフェッショナル協会(C.P.A.)は、ポルトガルで開催されたチーズの世界大会「World Cheese Awards 2024」(以下、WCA 2024)と、国内大会「Japan Cheese Awards 2024」(以下、JCA 2024)の成果報告会を11月19日に開催した。また、黄綬褒章を受賞した日本料理人の齋藤章雄氏と、「WCA 2023」で銀賞を受賞した木次乳業の川本英二氏をゲストに招き、国産チーズの新たな食べ方の可能性を探るトークセッションを実施した。

チーズプロフェッショナル協会 会長の坂上あき氏

「チーズプロフェッショナル協会は、2018年から農畜産業振興機構の国産チーズ競争力強化支援対策事業を担当しており、2019年から5回にわたって『WCA』に国産チーズを出品してきた。この5回の中で、国産チーズの品質はさらに向上したと考えている。また、海外の有識者からの国産チーズへの評価も高まっており、ブランド化が徐々に定着してきたと感じている」と、チーズプロフェッショナル協会 会長の坂上あき氏が挨拶。「今後は、海外市場への輸出に向けた対策を進めていくことが課題となる。人口減少にともなう市場の縮小化や酪農への支援といった受動的な動きだけでなく、日本のチーズ作りの素晴らしさや技術の価値を世界に伝えるべく、国産チーズを海外にも積極的に展開していく」と、国産チーズの海外展開に意欲を示した。

農林水産省 畜産局 牛乳乳製品課の伊藤寿氏

続いて、農林水産省 畜産局 牛乳乳製品課の伊藤寿氏が挨拶した。「チーズの国内消費量は、食の多様化などを背景に長きにわたって増え続けてきている。令和5年度の消費量は31万5000tとなり、30年前に比べて約2倍の伸びとなっている。また、この10年余りの間では、特に国内のナチュラルチーズの工房数が右肩上がりで増えており、令和5年度には351の工房等で個性豊かなチーズが作られている」と、国産チーズの概況について説明する。「日本人はバラエティ豊かな食生活を求める国民性があるため、国産チーズにはまだまだ大きな発展の余地があると考えている。一方で、チーズの原料となる国産生乳を供給する酪農の生産現場においては、生産資材が高止まりしており、依然厳しい環境が続いている。そうした中、高品質・高付加価値な国産チーズは、国産生乳の価値、価格を支えることができると考えている。農林水産省では、国産チーズのより一層の競争力強化を図るため、品質の向上、ブランド化、需要拡大に向けた取り組みを推進していく」と、国産チーズのさらなる発展が酪農の支援にもつながるのだと訴えた。

左から:チーズプロフェッショナル協会 会長の坂上あき氏、広内エゾリスの谷チーズ社 寺尾智也氏

ここで、「WCA 2024」で審査員にも選定された広内エゾリスの谷チーズ社 寺尾智也氏をゲストに迎え、チーズプロフェッショナル協会 会長の坂上氏と共に国内大会「JCA 2024」および世界大会「WCA 2024」での国産ナチュラルチーズの成果報告を行った。

「JCA 2024」は、今年で6回目を迎えた国内最大級の国産ナチュラルチーズの品質評価のコンテストで、10月19日・20日に開催された。今回は、全国120の工房から選りすぐりのチーズ371品が出品され、審査は「チーズプロフェッショナル」の資格を持ち、同アワード専門の研修を修了した審査員とゲスト審査員合わせて93名が担当。厳正な審査の結果、「加熱圧搾/熟成6ヵ月以上」部門に出品された「チーズ工房タカラ」(北海道)の「タカラのタカラ」がグランプリを受賞した。また、近年注目度が集まるホエイを活用した新設の「ホエイ リコッタ」部門、「ホエイ バラエティ」部門をはじめ、「青カビ」「パスタ・フィラータ」などの各カテゴリーで、高い評価を得たチーズから選出される最優秀部門賞を19工房、21品のチーズが受賞した。

広内エゾリスの谷チーズ社 寺尾智也氏

広内エゾリスの谷チーズ社 寺尾氏は、「JCA 2024」の「非加熱/熟成4ヵ月未満」部門において、牧草のみを食べて育った牛から採れるグラスフェッドミルクを使った「有機グラスフェッド ます」で金賞を受賞している。「グラスフェッドミルクは、国内では賛否両論の意見があるが、これを付加価値として伝えることができないかと考えた。『有機グラスフェッド ます』では、通常のミルクの年間生産量の4分の1しか生産されないグラスフェッドミルクの品質を、その生産風景と共に味で表現することができたと自負している。今回、『有機グラスフェッド ます』が金賞を受賞したことで、グラスフェッドミルクの価値が国内でも認められたと感じている」と、受賞の喜びを語った。

「WCA」は、世界各国から多種多様なチーズが集まる権威あるチーズ・コンペティションとして知られ、第36回目となる「WCA 2024」は11月15日から18日まで、ポルトガルのヴィセウで開催された。今回は、47ヵ国から4786品のチーズがエントリーし、同アワードとしても過去最大規模での開催となった。チーズプロフェッショナル協会が事務局を務める国産チーズブランド化推進委員会からは、37工房44品の国産ナチュラルチーズが出品された。

チーズプロフェッショナル協会 会長の坂上あき氏

チーズプロフェッショナル協会の坂上氏は、現地での審査の様子について、「『WCA 2024』では、40ヵ国240名の審査員が数名のチームを組み104あるテーブルにわかれ、一次審査がスタートした。外観、テクスチャー、食感、風味などを採点し、それぞれのテーブルからGold(金賞)、Silver(銀賞)、Bronze(銅賞)が選ばれ、Goldの中からそのテーブルの最高賞であるSuper Goldが選出される。公開で行われる二次審査では、14名の特別審査員が審査を行い、Super Goldの中からチャンピオンチーズを決定する」とレポートしてくれた。

今年のチャンピオンチーズには、特別審査員の合計点で最高得点を出した、ポルトガル在住のスペイン人のチーズ生産者「キンタ・ド・ポマール社」の「ケイホ・デ・オヴェーリャ・アマンテイガード」が選ばれた。また、日本からエントリーしたチーズは、「CHEESEDOM」(北海道)が出品した「瀬棚」がSuper Goldを受賞した他、Gold 4品、Silver 8品、Bronze 8品、計21品(補助事業外含む)が入賞し、“ジャパンチーズ”の品質と魅力、国際的な競争力を世界市場に向けてアピールした。

「WCA 2024」に審査員として初参加した広内エゾリスの谷チーズ社 寺尾氏は、「『WCA 2024』では、欧米だけでなく、アジア、インド、南米、アフリカなど40ヵ国からチーズの専門家が集まっており、世界のチーズカルチャーを肌に感じることができた。審査はカテゴリーを横断して行われたのだが、様々な種類のチーズがテーブルに置かれている状況にワクワクする感覚があった。カテゴリーに捉われずに審査する楽しさと共に、審査を通じて自分自身の生産者としての可能性を感じた」とのこと。「また、会場では、国産チーズを試食してもらうワークショップも開催したのだが、世界のチーズ専門家から品質に関してポジティブな意見が多く寄せられていた。一方で、今後は、地域ごとにブロック化した取り組みを進めることで、地域と観光を結びつけながら、規模感をもって国産チーズの特色や価値を世界に伝えていく必要があると感じた」と、世界的に評価が高まっている国産チーズの今後の展望についても言及していた。

試食で提供された国産チーズ9品

なお、成果報告の際には、「JCA 2024」と「WCA 2024」に出品された国産チーズ9品が試食として提供され、国産チーズの魅力を体感することができた。

左から:チーズプロフェッショナル協会 会長の坂上あき氏、日本料理人の齋藤章雄氏、木次乳業の川本英二氏

続いて、11月2日に黄綬褒章を受賞し、グランドハイアット東京やコンラッド東京で日本料理・統括料理長を務めた経験を持つ日本料理人の齋藤章雄氏と、「WCA 2023」で銀賞を受賞した木次乳業の川本英二氏、チーズプロフェッショナル協会会長の坂上氏によるトークセッションが行われた。

「きのこ天ぷら出雲そば ゴーダチーズかけ(柚子風味)」

トークセッションでは、日本人の食生活にマッチするチーズの楽しみ方や意外な組み合わせなどを語り合うと共に、「WCA 2024」に出品した木次乳業「オールドゴーダ」を用いて齋藤氏が考案した創作和食メニュー「きのこ天ぷら出雲そば ゴーダチーズかけ(柚子風味)」が試食として提供された。

木次乳業の川本英二氏

木次乳業の川本氏は、「『オールドゴーダ』は、約10kgの大きいサイズで作るゴーダチーズとなっている。ゴーダチーズは日本でも古くから親しまれているが、当社では熟成期間を最低でも1年以上というルールを作っており、ゴーダチーズの中でも芳醇な香りと濃厚な味わいを楽しむことができる」と、「オールドゴーダ」の特徴について紹介。齋藤氏は、「木次乳業が島根県にあるということで、出雲そばを食材に使ったメニューを考案した。出雲そばとゴーダチーズを絡めることで、どんなうまさが出せるのかを考え、チーズをそばの上からかけて、一緒に混ぜて食べてもらうようにした。これによって、チーズの甘みをものすごく引き立たせることができた」と、今回考案した創作和食メニューのこだわりを教えてくれた。

日本料理人の齋藤章雄氏

今後、国産チーズがさらに普及するためのポイントについて齋藤氏は、「国産チーズがもっと身近にある環境をつくることが大切だと考えている。大手工房の商品だけでなく、小さい工房の商品も全国のスーパーやコンビニ等で手軽に買えるようにして、多くの人に知ってもらう機会を増やすことが、国産チーズの認知度を広げることにつながるのではないか」と提言した。木次乳業の川本氏は、「日本は、ヨーロッパの食文化にならって、チーズ料理はこうあるべきという固定イメージがあると思う。そういったイメージをなくして、もっといろいろな料理にチーズを使って、楽しんで、遊んでほしい。そして、生産者としては、国産チーズの生産量をさらに増やして、多くの店舗に置いてもらえるように努力していきたい」と、固定概念にとらわれず様々な料理に国産チーズを活用してほしいとアピールした。

チーズプロフェッショナル協会=https://www.cheese-professional.com/


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