- 健康管理!教えて!!2025/03/18 20:39
アルツハイマー型認知症の新薬「ドナネマブ」とは? 脳に蓄積したアミロイドβを分解・除去

アルツハイマー型認知症の新たな治療薬「ドナネマブ」が、昨年9月24日に厚生労働省から製造販売が承認され、同年11月から保険適用となりました。ドナネマブは、アルツハイマー型認知症の原因物質に直接働きかける薬として、「レカネマブ」に続く2例目の承認薬であり、患者にとっては治療の選択肢が広がることとなりました。今回は、ドナネマブとはどのような薬なのか、詳しく紹介していきたいと思います。
アルツハイマー型認知症とは、不可逆的な進行型の脳疾患です。認知症の中では患者数が最も多く、日本人が発症する認知症の6~7割がアルツハイマー型認知症といわれています。原因物質であるアミロイドβやタウと呼ばれる異常なタンパク質が脳に蓄積することで、脳神経細胞が傷つき認知機能が低下すると考えられています。発症する10~20年前から徐々に脳にアミロイドβがゆっくりと溜まっていき、記憶力や思考能力が障害されて、最終的には日常生活がままならないほど能力を失ってしまいます。
アルツハイマー型認知症には段階があり、認知症の予備軍である軽度認知障害(MCI)、初期、中期、末期と分かれています。既存の薬は、残った脳神経細胞を活性化させて症状を遅らせるもので、適応時期は幅広く使用されていました。しかし、レカネマブとドナネマブにはアミロイドβに結合する「抗体」が含まれており、免疫細胞によってアミロイドβが分解・除去される作用があります。これによって、脳神経細胞が壊れていくのを防ぐ働きを持っているため、脳神経細胞の破壊が進行していない軽度認知障害や初期の段階でのみ使用できる薬となります。
ドナネマブの投与対象となる患者は、放射性薬剤を注射し画像診断するアミロイドPETや、脳脊髄液を採取するCSF検査、または同等の検査が行われ、医師が診断し適用とされます。症状を早く見極め、治療を始めていくことが症状を遅らせることにつながります。
レカネマブとドナネマブの大きな違いとしては、アミロイドβを狙う段階に違いがあります。レカネマブは、アミロイドβが塊になる前段階であるプロトフィブリルという中くらいの塊や、より大きな塊のアミロイド斑に対して働きかけます。一方で、ドナネマブは脳に沈着してから時間が経ったアミロイドβに働きかけます。ただし、この作用の違いに対しては優劣などを示しづらいため、それぞれの薬の特徴を考慮し、選択していく必要があります。
ドナネマブは、投与対象が軽度認知障害と初期の患者に限られるため、認知症の早い段階での診断・治療が重要となってきます。また、あくまで進行を遅らせることが目的であり、病気を治すものではありません。認知症の患者の多くは、周りがおかしいと気づいたり、本人が生活に不自由を感じたりするなど、症状が進行してから病院へ受診するケースが多くなっています。厚生労働省などでも認知症のリスクを早期に見つけ、医療機関につなげる方法の実証研究が本格的に行われる見通しとなっており、今後の認知症に対する研究や調査は、さらに活発になっていくと考えられています。(監修:健康管理士一般指導員)