- 健康管理!教えて!!2025/04/16 23:14
獲得免疫に欠かせない「T細胞」の役割とは? キラーT細胞・ヘルパーT細胞・制御性T細胞の3つが活躍

私たちの体に後天的に備わる免疫システムである獲得免疫の働きには、「T細胞」の存在が欠かせません。T細胞は、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、制御性T細胞の3つに分類され、それぞれが重要な役割を担っています。では、T細胞はどのように生まれ、獲得免疫でどんな役割を果たすのでしょうか。
まず、免疫は、自己のタンパク質を攻撃してはいけないため、体内に存在するタンパク質を一つ一つ記憶しなければいけません。その教育の場となるのが胸腺です。胸腺では、すべてのタンパク質を記憶した前駆T細胞(T細胞へ分化・成熟する前の細胞)が多く作られますが、そのうち試験に合格し完璧なT細胞となれるのは全体の約1割程度といわれています。T細胞になれなかった前駆T細胞は死滅してしまうそうです。そして、試験を合格したT細胞が、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、制御性T細胞の3つに分類されます。なお、胸腺はT細胞を教育するためだけの器官であり、子どもの頃に最も大きくなり、思春期以降年齢と共に小さくなっていきます。
3つのT細胞の中で、最も攻撃力が強いのがキラーT細胞です。ウイルスに感染した細胞やがん化した細胞など、生体にとって不要・危険な細胞を「パーフォリン」と呼ばれる異物を溶かす働きのあるタンパク質を異物に注入し、死滅させます。つまり、強力な攻撃で異物ごと排除するのがキラーT細胞の役割です。
ヘルパーT細胞は、Th1細胞とTh2細胞の2種類があり、抗原の種類や活性化させる免疫細胞、サイトカインが異なります。Th1細胞は、細菌やウイルスなどの異物に対して反応しインターフェロンというサイトカインを分泌します。すると、B細胞やキラーT細胞、NK細胞、マクロファージなどの細胞を活性化させ、攻撃します。一方、Th2細胞は、ダニやカビ、花粉などのアレルゲンに反応し、インターロイキンを分泌します。すると、B細胞のみを活性化し、抗体を産生させます。この時、免疫システムがうまく働かなくなると、Th2細胞が過剰に働き、アレルギー症状を引き起こすといわれています。しかし通常は、Th1細胞とTh2細胞のいずれかの反応が過剰にならないように、それぞれの細胞から分泌されるインターフェロンとインターロイキンがお互いを制御しています。
制御性T細胞(Tレグ)は、自己に対する不必要な免疫反応を制御する重要な役割を果たしています。元々は自己の一部だった物質がストレスや紫外線、たばこなど何らかの要因で、自己ではない無害なタンパク質に変化することがあります。そういった物質に対し、ヘルパーT細胞やキラーT細胞は非自己として攻撃し排除しようとしますが、制御性T細胞がヘルパーT細胞やキラーT細胞が働く前に自己として認識し、攻撃しないよう制御しているのです。(監修:健康管理士一般指導員)