異業種連携による非食品用途PETを原料にした飲料用ペットボトルのリサイクルを開始、キリンが食品安全性評価技術を提供

異業種連携によるPET樹脂リサイクルの取り組みでキリングループが供給する原料サンプル

キリンホールディングス(以下、キリン)、JEPLAN、TDK、村田製作所、花王、ファンケル、キリンビバレッジ、ペットリファインテクノロジー、アサヒ飲料は、業界を超えた9社で連携し、飲料用ペットボトルと非食品用途PET(ポリエチレンテレフタレート)を原料とするケミカルリサイクル(CR)によって、各種ペットボトルへリサイクルする取り組みを開始する。非食品用途PETを原料に、飲料用ペットボトルとして再生する取り組みは国内初(JEPLAN調べ)となる。キリンでは、この発表にともない4月21日にオンライン説明会を開催。異業種連携によるPET樹脂リサイクルの取り組みの全体像および、キリングループが同取り組みを実用化するうえで提供した食品安全性評価技術の内容について説明した。

キリンホールディングス R&D本部 研究開発推進部の米本友華氏

「キリングループは、祖業のビール事業を通じ、1世紀以上にわたって磨き続けてきた『発酵・バイオテクノロジー』を起点に、食・医・ヘルスサイエンスの3領域で事業を展開している。そして、ポジティブインパクトで豊かな地球を目指す『環境ビジョン2025』を2020年に策定。CSV(Creating Shared Valueの略)を経営の根幹に据え、自社で完結する取り組みの枠を超え、取り組みそのものとその波及範囲を社会全体へ拡大させるアプローチで環境施策に取り組んでいる」と、キリンホールディングス R&D本部 研究開発推進部の米本友華氏が、キリングループが掲げる環境ビジョンを紹介。「現在、国内のPET資源には、ペットボトル以外にシート、フィルム、繊維など様々な形態があり、これらのPET製品が全体の約6割を占めている。しかし、ペットボトル以外のPET製品はリサイクルが難しいため、カスケード利用やサーマルリカバリーされ、十分な資源循環には至っていない」と、国内におけるPET資源循環の現状と課題を指摘する。

ケミカルリサイクルによるPET樹脂リサイクル過程

「こうした状況を受け、当社では、ケミカルリサイクルに着目し、業界の垣根を超えてPET樹脂全体で資源循環をしていく必要があると考えた。ケミカルリサイクルは、廃PET素材を選別、粉砕、洗浄して汚れや異物を取り除いたうえで、解重合(化学分解処理)を行い、PETの分子レベルまで分解、精製したものを再びPET樹脂に合成する方法となる。現状のボトルtoボトルリサイクルの主流であるメカニカルリサイクル(物理的再生法)に、ケミカルリサイクルを共存させることでペットボトル以外の形態も含めた『PET樹脂全体の資源循環』が可能になる」と、ケミカルリサイクルを活用することの意義について解説した。

キリンホールディングス R&D本部 パッケージイノベーション研究所 リサーチフェローの中谷正樹氏

次に、今回の異業種連携によるPET樹脂リサイクルの取り組みにおいてキリングループが果たした技術面での支援内容について、同 R&D本部 パッケージイノベーション研究所 リサーチフェローの中谷正樹氏が説明した。「今回の取り組みでは、従来の飲料用ペットボトルに加えて、非食品用途として使用された工業用フィルムおよび化粧品ボトル、自動販売機用商品サンプルをケミカルリサイクルの原料として使用する。この取り組みは、原料供給・リサイクル・ケミカルリサイクル樹脂使用において、9社が『プラスチックが循環し続ける社会の実現』という同じ方向性のもとで連携することで実現した」とのこと。

ファンケルの化粧品ボトルサンプル

「具体的には、TDKと村田製作所が、電子部品を製造する際に使用された工業用PETフィルムの端材をリサイクル原料として供する。花王とファンケルは、店頭で回収した使用済みの化粧品ボトルを供給する。そして、自動販売機用商品サンプルは、キリンビバレッジで商品入れ替え時に不要となったものを供給する。その後、ペットリファインテクノロジーがケミカルリサイクルを実施し、ケミカルリサイクル樹脂使用各社に供給する。使用する各社は、ケミカルリサイクルで再生されたPET樹脂の品質評価を実施したうえで、飲料用ペットボトルや化粧品ボトルへの採用を検討していく」と、異業種連携によって実現した今回の取り組みの全体像を解説した。

キリンビバレッジの自動販売機用商品サンプル

「非食品用途PETを原料として、飲料用ペットボトルに再生するという取り組みは国内初となる。この取り組みの中で当社は、食品安全性を判断できる考え方および評価方法を構築し、昨年11月に学会で発表。この評価方法を用いて食品安全性に関するエビデンスを取得し、非食品用途PET原料を飲料用ボトルへ再生するための筋道をつけた。そして、当社パッケージイノベーション研究所が保有する食品安全性評価技術をもとに、サプライチェーン上の各社にありたい姿・関連知見を提供し、理解を得たことで、各社の連携を進め、実用化に至ることができた」と、キリンの持つ食品安全性評価技術が、非食品用途PETを原料にしたケミカルリサイクル実現のポイントになったのだと力説する。「当社では今後も、メカニカルリサイクルによるペットボトルのリサイクルと、ケミカルリサイクルによるPET樹脂全体の循環利用の適切な共存のあり方を探り、CSVを経営の根幹に据える企業として『プラスチックが循環し続ける社会』の実現に貢献していく」と、キリングループが目指すPET資源リサイクルの将来展望を語った。

左から:通常のペットボトル、ケミカルリサイクルで再生したペットボトル

なお、ケミカルリサイクルで再生されたPET樹脂の使用については、キリンビバレッジは4月から飲料用ペットボトルの一部で、花王は5月から化粧品ボトルの一部に同原料を採用し、製造を開始する。また、アサヒ飲料は10月以降の採用を予定しており、ファンケルにおいても採用に向けた検討をしていくという。

キリンホールディングス=https://www.kirinholdings.com/
JEPLAN=https://www.jeplan.co.jp/
TDK=https://www.tdk.com/ja/index.html
村田製作所=https://www.murata.com/ja-jp/
花王=https://www.kao.com/jp/
ファンケル=https://www.fancl.co.jp/
キリンビバレッジ=https://www.kirinholdings.com/jp/profile/organization/kirinbeverage/
ペットリファインテクノロジー=https://www.prt.jp/
アサヒ飲料=https://www.asahiinryo.co.jp/


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