スウェーデン発祥の「タクティールケア」とは? 愛情ホルモンの分泌を促すタッチケア

私たち人間は、生まれたときには授乳などを通して母親の皮膚と触れ合い、その後もうれしい時や悲しい時には腕に抱かれ、そして、ケガをした時には優しくなでてもらうなどといった経験をしながら成長していきます。このように、成長過程で触れるという行為は、ありとあらゆる場面で繰り広げられています。人に触れるための道具が手であり、そして手を当てることから看護が始まりました。今回は、福祉大国であるスウェーデン発祥のタッチケアである「タクティールケア」について紹介します。

タクティールとは、ラテン語の「タクティリス(Taktilis)」に由来する言葉で、「触れる」という意味があるとのこと。タクティールケアは、手を使って相手の背中や手足をやわらかく包み込むように触れるのが特徴で、1960年代にスウェーデンで未熟児のケアをしていた看護師らによって考案されたといわれています。彼女たちが母親に代わって、乳児の小さな体に毎日やさしく触れたところ、子どもの体温は安定し、体重の増加がみられたそうです。そこで、触れることの有効性を確信し、経験に基づいてこの技法を作ったとされています。

90年代後半には各地に広まり、認知症をはじめ、がんの緩和ケア、糖尿病、脳卒中、未熟児医療、ストレスケアなど多岐にわたって活用されています。日本には、2005年に認知症高齢者への緩和ケアの一手法として、効果・手技が紹介され、安心感や穏やかさをもたらす作用や睡眠の改善、痛みの緩和、ケアを受けた人と行った人の絆が深まる効果が期待できるということで、医療・介護関係者の注目度が高まり、現在ではさまざまなところで導入されているそうです。

タクティールケアの効果としては、心地よさや安心感、痛みの軽減効果が検証されています。その理由は、オキシトシンの分泌にあります。オキシトシンは、愛情ホルモンとも呼ばれ、脳の下垂体で分泌されるホルモンです。タクティールケアで肌に触れ、触覚が刺激されると、血液中にオキシトシンが分泌されます。その結果、穏やかな気持ちを体感でき、体が温まり心地よい睡眠や深い呼吸ができるようになります。また、腸のぜん動運動が活発になり、便秘の改善にもつながるとされています。

そして、認知症の患者に対するタクティールケアの効果については、行動・心理状態の改善、手や腕の筋肉がこわばる拘縮の症状が少なくなるといったことが報告されています。ただし、すべての認知症の人に適用できるかというとそうではなく、望まない人に対しては行わないというのも、タクティールケアの大切なルールになっています。

また、オキシトシンは触れられた人だけに分泌されるものではなく、触れている人にも分泌されるとのこと。そのため、タクティールケアは、触れている施術者も心地よさと安心を感じることができるそうです。(監修:健康管理士一般指導員)


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