タンパク質を合成するメカニズムとは? DNAの情報をmRNAに転写して翻訳

私たちの臓器や筋肉、皮膚など体を構成するもののほとんどはタンパク質でできています。そして、これらタンパク質を作るための情報(タンパク質の種類や作るタイミングなど)をコントロールしているのが遺伝子です。ヒトの遺伝子は、約2万数千種類あるといわれており、各遺伝子が適切な時期に働いて、約10万種類のタンパク質を正しく適切な量作ります。そして、各タンパク質がそれぞれの役割を果たすことで、体の細胞は正しく働くことができるのです。では、タンパク質の合成はどのようなメカニズムで行われているのでしょうか。

タンパク質の合成は、DNAの情報を「転写」→「翻訳」という流れで行われており、この一連の流れをセントラルドグマといいます。「転写」は、DNAから、タンパク質合成に必要な情報を読み取るフェーズです。まず、RNAポリメラーゼ(転写を行うために必要な酵素)によって、DNAの二重らせん構造の一部がほどけます。次に、ほどけた部分のDNAの塩基配列を鋳型として読み取るmRNA(メッセンジャーRNA)が合成されます。mRNAはタンパ質を作る設計図をDNAからコピー(転写)します。

mRNAは、一本鎖でDNAと塩基配列が似ていますが、DNAの塩基のT(チミン)がU(ウラシル)に変化し、A(アデニン)、U(ウラシル)、G(グアニン)、C(シトシン)という配列になります。mRNAのUはDNAのAと結合します。mRNAに転写された情報には、遺伝子領域の「エクソン」と非遺伝子領域の「イントロン」があり、必要ない情報は取り除き、再度mRNAを1本につなぎ直す「スプライシング」が行われた後、核膜にある穴(小孔)から細胞質に移動していきます。

mRNAからタンパク質を合成するフェーズが「翻訳」になります。核から細胞質に移動してきたmRNAはリボソームに運ばれ、アミノ酸を集める作業が始まります。この時、必要なアミノ酸をリボソームまで運んでくるRNAをtRNA(トランスファーRNA)といいます。

tRNAは、mRNAに写し取った3つの塩基を1セットにした「コドン」によって、どのアミノ酸に相当するのかを決定しています。コドンはアミノ酸を決める暗号のようなもので、例えば、うま味成分として知られているアミノ酸「グルタミン酸」ならGAA、肌の水分量を保つために重要な保湿成分の一つのアミノ酸「セリン」ならUCAというように塩基の並びが決まっています。また、コドンはタンパク質合成の開始や終了も決めています。

mRNAが作るタンパク質は、体内の細胞だけでなく、体内で働く様々な酵素も作り出しています。例えば、お酒を飲んだ時、核内では、アルコールを分解する酵素を作る遺伝子のコピーが始まり、コピーされたmRNAがリボソームに運ばれます。そして、アルコール分解能力を持つ情報(塩基配列)に従って、アルコール分解酵素が合成され、体内で解毒されます。お酒に強い人の場合、mRNAによる転写が多く行われることで、アルコールを分解するタンパク質もその分多く作られる仕組みになっています。実は、この転写の頻度やタイミングをコントロールしているのが、DNAの約98%を占める非遺伝子領域(イントロン)だと考えられています。(監修:健康管理士一般指導員)


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