- 健康管理!教えて!!2025/02/19 23:36
ノーベル生理学・医学賞を受賞した「マイクロRNA」とは? 遺伝子制御の原理を明らかにする重要な証明に
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昨年10月7日、ヒトの遺伝子の働きを制御することができる「マイクロRNA分子」を発見した米国・マサチューセッツ大学のビクター・アンブロス教授と、ハーバード大学のゲイリー・ラブカン教授の2名がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。この発見は、生命体がどのように発達し、機能するかにおいて遺伝子制御の原理を明らかにする重要な証明となりました。今回は、マイクロRNAがどのように発見され、どんな働きを担っているのかをみていきましょう。
ヒトには約30兆個の細胞があり、どの細胞もDNAの遺伝情報は基本的には同じです。しかし、DNAから写し取られる部分が細胞ごとに異なるため、筋肉や神経、臓器などに違いが生まれ、体を構成することができています。今回、この数ある遺伝子の中から必要なタンパク質の量や作られるタイミングを制御している物質の一つがマイクロRNAであることが解明されました。
1993年、2人の教授は体長1mmの線虫を用いた発生過程の研究で、成長過程がおかしな変異体に着目し、その原因調査を行いました。教授らは、線虫の成長に影響を及ぼしている原因遺伝子のマイクロRNA(lin-4)が、他の遺伝子のmRNAに結合し、タンパク質を作らせないような仕組みを作っていることを発見しました。マイクロRNAは、数十個程度の長さの塩基配列で、普通の遺伝子に比べると非常に短い分子です。mRNAがタンパク質を作るための遺伝子の情報をコピーした分子に対し、本来マイクロRNAはタンパク質を作る機能のない分子で、翻訳に関与しません。しかし、研究を進めていく過程で、マイクロRNAがmRNAに結合することでタンパク質が作られなくなるといった現象が生じ、マイクロRNAがタンパク質の量を調節していると解明されました。
最初のマイクロRNA(lin-4)が発見された時は、線虫のみが持つものだとされていましたが、2番目に発見されたマイクロRNA(lit-7)は様々な生物で発見されました。現在は、ヒトでもマイクロRNAに対応する遺伝子が千種類以上発見されており、遺伝子の制御に関与していることが明らかになっています。マイクロRNAの働きが異常になると、がんの発生につながる可能性も指摘されている他、臓器や骨が形作られる時に、異常が起きることも明らかになりました。
例えば、がん抑制遺伝子のmRNAに結合することができるマイクロRNAが必要以上に増加してしまうと、結果としてがん抑制機能を持つタンパク質は減少してしまいます。このように、タンパク質合成の調整役であるマイクロRNAの様々な振る舞いによって、細胞増殖などに関係するタンパク質量がアンバランスとなり、その結果がんの発生や進行に関与していると考えられています。(監修:健康管理士一般指導員)