- マイライフストーリー2024/01/30 20:52
全国シニアの「噛む力」を調査、「噛む力」が高い都道府県の第1位は高知県
ロッテは、2月1日の「フレイルの日」(フレイルの概念、予防の重要性を知っていただき、健康長寿社会の実現を図ることを目的に、日本老年医学会、スマートウェルネスコミュニティ協議会、日本老年学会、日本サルコペニア・フレイル学会の4団体が共同制定)に先駆け、高齢者の「噛むこと」の実態について調べるため、47都道府県毎に65~80歳男女50名ずつを対象とした、全国シニア「噛む力」調査を実施した(調査方法:WEBアンケート調査、調査対象:全国47都道府県別の65~80歳男女、有効回答数:2350名(性年代居住地均等割付)、調査実施日:2023年12月5日~2023年12月11日)。その結果、高知県が最も「噛む力」が高いことがわかった。
口の機能が衰えた状態であるオーラルフレイルに陥ると、介護リスクや死亡リスクが高まるが、「噛むこと」はオーラルフレイルの予防の一助になると報告されている。同調査の発表にあたり、オーラルフレイル予防に寄与する噛む力の重要性について高齢者歯科専門家の東京医科歯科大学水口俊介教授の解説と県民性を分析する、岩中祥史氏に見解を聞いた。
同調査における「噛む力」とは、高齢者の(1)「よく噛むこと」に対する意識、(2)夕食時一口あたりの咀嚼回数や食事時間等に関する行動、(3)オーラルフレイル状態のチェック--主にこの3要素で構成された質問の回答結果を集計し、ロッテ「噛むこと研究部」が健康面において好ましいとされる順序に点数を割り振り、偏差値で算出した結果だという。
「オーラルフレイル」は、口腔機能の軽微な低下や食の偏りなどを含み、身体の衰え(フレイル)の一つとのこと。健康と機能障害との中間にあり、可逆的であることが大きな特徴の一つとなっている。「オーラルフレイル」の始まりは、滑舌低下、食べこぼし、わずかなむせ、噛めない食品が増える、口の乾燥等ほんの些細な症状であり、見逃しやすく、気が付きにくい特徴があるため注意が必要だという。
全国シニア「噛む力」調査ランキングで1位に高知県(偏差値:77)、同率2位に埼玉県、兵庫県、福岡県(偏差値:69)、同率5位に新潟県、富山県、静岡県(偏差値:62)がランクインした。1位の高知県は、オーラルフレイル状態のチェックにおいて口腔機能が良好である傾向にあり、同率5位の静岡県は食事の際によく噛むことを意識している割合が52.0%と高い結果になった。一方で、シニア「噛む力」ランキングが最も低かったのは栃木県。つづいて同率45位に千葉県、広島県といった結果となった。
「食事の際に『よく噛むこと』を意識しているか」という質問に対して、60.8%が「あまり意識していない(55.3%)」、「まったく意識していない(5.5%)」と回答。一方、「滋賀県(58.0%)」、「宮崎県(54.0%)」、「静岡県(52.0%)」、「福井県(52.0%)」は2人に1人以上はよく噛むことを意識していることがわかった。加えて、「夕食時の一口あたりの噛む回数」を問う質問では、専門家が推奨する30回以上噛んでいると回答した人は3.2%しかおらず、87.7%もの高齢者が一口あたり噛んでいる回数は20回未満と回答したことが判明した。よく噛むことへの意識の低さ、噛む回数が減少する「噛む離れ」問題も顕著に現れる結果となった。ロッテ噛むこと研究室Webサイトでは食品毎の咀嚼回数ランク表を公開している。ランク表を参考にして咀嚼回数の多い食べ物を取り入れるのもおすすめだという。
「噛むこと」による影響について知っている項目としては、「噛むことで脳が活性化される(68.2%)」が1番多く、続いて「噛むことで唾液が分泌され口の中を洗浄・清潔に保つことができる(むし歯、口臭、歯周病予防に繋がる)(52.0%)」、「よく噛むことが歯や顎の健全な発達につながる(51.2%)」が順に多い結果になった。一方、「よく噛むことで噛む(咀嚼)機能の衰えを防ぎ、ひいては全身の筋力維持にもつながる(26.6%)」ことを知っている人は少ない傾向に。高齢者の口腔機能低下予防が、健康寿命延伸に大きく寄与することが明らかになっている。人生100年時代といわれる現在、心身共に長く健康に生活するために、「噛むこと」への理解を深め、実践することが重要だといえそうだ。
オーラルフレイルチェックリスト(オーラルフレイルチェックリスト参考:GeriatrGerontol Int 2023;23(9):651-659. GeriatrGerontol Int 2023;23(10):729-735.)に基づいた設問では、48.2%の人がオーラルフレイルの危険性があることが判明。オーラルフレイルのあらわれである各症状についての質問によると、約3人に1人に「半年前に比べて硬いものが食べにくくなった(36.3%)」、「口の渇きが気になる(33.4%)」の症状が見られることがわかった。
また、オーラルフレイルの症状を持つ人のうち、78.2%が身体の衰えを感じていることが明らかになった。特に「最近物忘れが増えたと感じる(58.1%)」が一番多く、次に「握力の低下を感じる(ふたやペットボトルを開けるときなど)(47.6%)」、「最近、わけもなく疲れたような感じがする(31.2%)」と回答した人が多い結果になった。オーラルフレイルの危険性がある人ほど身体の衰えを感じ、口腔機能が衰えると全身のフレイル(虚弱)につながることが予想される。このような現状に対し、加齢による高齢者の口腔の変化やその機能改善に関する研究を行う水口教授は「調査結果からわかる通り、口と身体の健康は密接に関係している。しっかりと噛めることは、食生活を豊かにすると同時に、健康の維持・増進、病気の予防など全身的な健康状態の維持につながるため、とても重要」とコメントしている。
要介護認定や死亡リスク増加につながるオーラルフレイルだが、ガムを噛むことが対策になる可能性があることがわかっている。噛む力(咬合力)の衰えを自覚する高齢者211名を対象に、ガム咀嚼トレーニングを1日3セット、2ヵ月間を行ったところ「咬合力」が改善されることが確認された。また、別のガム咀嚼研究でも「舌の力」の改善が報告されている。また、高齢者1000人以上を対象に、週に30分以上ガムを噛む習慣のある高齢者とガムを噛む習慣のない高齢者の2グループに分けて健康状態を比較したところ、「ガム噛み習慣」のある高齢者は、オーラルフレイルになる割合が4割ほど少ないことが判明した。加えて、身体の衰え、握力、バランス能力等身体機能に加えて認知機能に関してもスコアが良く、高齢者の「ガム噛み習慣」は、オーラルフレイル・身体的フレイル両方に良い影響がある可能性がわかった。
調査では、以上の研究結果を知ると、60.8%の人が「ガムを噛みたい」と回答。高齢者歯科の水口教授も「ガム咀嚼トレーニングが高齢者の噛む力(最大咬合力)を向上することが研究で明らかになっており、オーラルフレイル対策に繋がることが期待される。手軽に取り入れやすいガムは、毎日続けることが重要なオーラルフレイル対策におすすめ。オーラルフレイル対策に効果的な『ガムトレ』のポイントを参考にして日ごろから取り入れてみてください」とコメントしている。