- マイライフストーリー2024/09/24 20:19
東洋製罐グループと辻調理師専門学校が食を通じた社会課題解決を目指す「+Recipeプロジェクト」を発表
東洋製罐グループホールディングスは、辻調理師専門学校と共同で、食を通じた社会課題解決を目指す「+Recipeプロジェクト(プラスレシピプロジェクト)」を本格始動する。同プロジェクトの第1弾として、缶詰やレトルトパウチを用いた、長期保存可能な本格料理を開発した。食に関する社会課題の解決を目指し、プロジェクトおよび共同研究を推進していくという。
近年、食を取り巻く環境は大きく変化し、様々な社会課題が顕在化している。農業従事者の高齢化と後継者不足、食料自給率の低下、サプライチェーンの各段階で発生する食品残渣や未利用食材を含むフードロス問題、災害時における栄養バランスの取れた食事の確保など、食に関する社会課題は多岐にわたっている。
こうした背景を受けて、世界初の“レトルトパウチ”の実用化など、創業以来100年以上にわたり容器のイノベーションに挑戦し続けている総合包装容器メーカーの東洋製罐グループと、60年以上にわたり食文化の発展に貢献する人材を育成してきた辻調理師専門学校は、食の未来を革新し、持続可能な社会の実現に貢献することを目的として、2021年に「+Recipeプロジェクト」を発足した。それ以降、レトルトでレストランクオリティの味を再現する研究を軸に、レトルト加工したものを半製品として調理に活用する試みなど、包装容器と調理のノウハウを融合させた様々な取り組みを推進している。
そして今回、「+Recipe プロジェクト」の一環として、食における様々な社会課題の解決を目指し、缶詰やレトルトパウチなどを活用した「長期保存できる本格的な料理」を開発した。
トマト・ファルシ(トマトの肉詰め)は、2030年頃に建設予定の月面基地でも生産が予定されているトマトを丸ごと使い、南仏の郷土料理であるトマトの肉詰めを缶詰にアレンジ。詰め物には、牛豚合挽き肉と、動物性ミートに比べて環境負荷の軽減が期待される植物性のミートを1:1の割合で用いた。加圧加熱することで、ヘタの部分も含めて100%トマトを可食とすることができたという。
だしは、昆布と鰹節から引いただしの缶詰。プロのつくる日本料理の味わいや香りに近づけるため、加圧加熱の影響を計算して、原材料の分量や抽出時間を調整した。塩を加えていないので、好みの味付けにしてすぐに使うことが可能となっている。
ぶり大根は、通常調理とレトルト製造との違いを知る目的で最初に取り組んだ日本の郷土料理のレトルトパック。加熱工程で様々な操作を加え得るふつうの調理と、圧力釜での加圧加熱が最終工程となるレトルト殺菌との違いを理解し、食材を理想の状態に仕上げるための試行錯誤の末に、濁りがちだった煮汁を澄んだ状態にするための方法を習得するなど、共同研究の成果が詰まった一品とのこと。
鹿スネ肉のブレゼ、ソース・エーグル・ドゥースは、フランス料理である鹿スネ肉の煮込みを、国産ジビエ認証施設・長野県富士見高原ファームの鹿スネ肉をレトルトすることで実現した一品。農作物に大きな被害を与える野生鳥獣の代表格である鹿の肉の中でも人気のないスネ肉は、本来下処理や加熱に時間がかかるが、レトルトすることで、多くの手間を省きながら、安全でおいしい料理に仕上げることができることがわかった。また、付け合わせを個々にレトルトパックすることで、一皿に異なる風味の素材を盛り付けること、さらに新たな素材との組み合わせでバリエーションが広がる可能性を見出した。レトルトのクオリティを上げることで、常温ストックのレトルト食品を高級料理として提供できる可能性を見出すこともできたという。
エスプリ・ド・タタンは、1個分のりんごを缶詰にした製品。りんごを少量の砂糖と煮詰め、缶に充填して蓋はせずにオーブンで焼き、さらにレトルト釜で加圧加熱殺菌することによって、長期保存とおいしさを実現した。甘さも増して、奥深い味わいに仕上がった。生産段階で農家が廃棄している「訳ありのりんご」などを使用して食品ロスの削減に貢献することを目指しているが、今回は焼き菓子に向いている市販の紅玉を使用している。
レトルトによって長期保存できる本格的な料理の可能性の扉を開くという同プロジェクトの第1弾の成果として、9月23日に食に携わる関係者の人々に向けた試食会を調理師専門学校で開催した。今後も、未利用食材の活用、食品ロスの軽減、災害時の食環境の改善に向けた取り組みなど、様々な社会課題の解決を目指してプロジェクトを推進していくという。
「+Recipe プロジェクト」では、“食で社会課題を解決する人と環境をつくること”を目的に、研究開発と社会実装を進めていくとのこと。未来を担う食のプロを育成するため、調理の技術だけでなく、食品包装技術に触れる機会を定期的につくるべく、教育プログラムの検討と実装を目指すという。また、課題を持つ自治体や企業、団体と一緒に「+Recipe プロジェクト」で生まれたソリューションを社会実装すべく、共創を進めていく考え。