カンロ、2023年中間決算を発表、長期ビジョン「KanroVision2030」達成に向けて顧客起点を強化、ヒトツブカンロ常設店もオープン

左から:カンロ 村田哲也社長、カンロ 阿部一博常務

カンロ飴やピュレグミなどでおなじみのカンロは、7月27日に2023年中間決算説明会を実施し、2023年中間決算報告と長期ビジョン「KanroVision2030」達成に向け顧客起点の施策を強化することを発表した。

カンロ 阿部一博常務

まず、カンロ 阿部一博常務が2023年度中間決算内容について発表した。「キャンディ市場は、グミのけん引・のど飴需要の高止まりに加え、ウィズコロナの本格化によって全カテゴリーで前年比増加となった(物価高における値上げの受容)。成長するグミ市場での競争は輸入品含めて激化している。当社は、前年から飴・グミ共に大きく増収し、上期過去最高益を更新、上方修正した業績予想を上回る着地となった。一方で、安定供給の観点から一部商品の休売を実施。中期経営計画2024では、コア事業の伸長によって順調に推移しているが、さらなる増産に向けた取り組みの推進、新事業の進展加速化が課題とみられる」と、2023年12月期第2四半期のサマリーを報告した。

カンロ 村田哲也社長

次に、カンロ 村田哲也社長が国内市場長期トレンドと課題および直近のトピックスについて発表した。「業界トップシェアを誇る老舗キャンディメーカーである当社は、昨今のグミブームのなかで話題になった直営店ヒトツブカンロの『グミッツェル』や、グミ製法を応用したマシュマロの『マロッシュ』など、様々な商品を展開している。また昨年からは“飴離れ”の傾向にあるZ世代に飴の魅力を伝えるプロジェクトを進行し、高校生と共同開発を行った商品『透明なハートで生きたい』を今年5月に発売、発売当初からメディアやSNSで話題となった。近年はZ世代をはじめ新たなターゲットへの発信も積極的に行い、グミだけでなくキャンディにおいても多くの商品を生み出し、新規層にも好評を得ている」と同社の動向について語る。

カンロが展開する商品ラインアップ

「当社では、2021年に発表した『KanroVision2030』の達成に向けて、パーパスドリブン経営のもと、今後さらなる顧客起点の強化を図っていく。顧客を広げる『拡張』と、顧客との関係を深めてLTV(Life Time Value(顧客生涯価値):一人の顧客が、特定の企業やブランドと取引を始めてから終わりまでの期間(顧客ライフサイクル)内にどれだけの利益をもたらすのかを算出したもの)を向上し競争力を高める『深化』の2方向で、顧客起点の強化を各事業部の取り組みによって目指していく」と長期ビジョンについて説明する。

「0糖1刻(りんたんいーくう)」

「“『拡張』顧客を広げる”では、中国SNSを開設した。広報活動をスタートし中国市場の深耕を開始する。グローバル事業では、中国Amos社との連携によって、輸出入業の基盤を確立する」と、中国市場のさらなる開拓を進めるとのこと。「今年3月から中国市場に合わせた新商品ブランドとして『0糖1刻(りんたんいーくう)』を展開。日本で実績の高い商品をベースにしつつ、中国のオリジナルレシピで、現地でおいしいと感じてもらえる、味わい珈琲糖と枇杷味糖の2品を展開している。今年3月から本発売を開始しており、秋にはラインアップ拡充も予定していることから、中国における情報発信の強化を図っていく」と、商品を拡充していくのだという。

Weiboの初回投稿画面

「中国における情報発信として、中国で人気のSNS、Weibo(ウェイボー)や紅小書(レッド)の公式アカウントの立ち上げと運用、中国国内での広報活動をスタートさせた」と、中国SNSを活用したマーケティングも展開していると述べていた。

「4Dグミ マーメイドジュエルズ」

「日本国内においては、Amos社の4Dグミブランドの販売を強化する。4Dグミ独特の成形技術を元に、当社が企画したオリジナル企画商品を販売し、インバウンドの獲得も視野に入れている」と、中国のAmos社が展開する商品の国内販売をさらに強化していくと語っていた。

「ヒトツブカンロ 原宿ハラカド店」(パースイメージ)

「来年春、直営店の『ヒトツブカンロ』の常設店を新たにオープンする。ヒトツブカンロ新店舗は、来年春に開業予定である『東急プラザ原宿 ハラカド』1階への出店を予定している。『ヒトツブカンロ 原宿ハラカド店』は、“FUN&CHOICE”をコンセプトとし、人気商品の『グミッツェル』や飴商品など普段箱入りで販売されている商品を1個から購入が可能となり、好きな商品をボックスや袋に詰めることで自分だけのギフトをカスタマイズする楽しさも提供する」とのこと。「新店舗はトレンド発信地である原宿エリアに『ヒトツブカンロ』を出店することで、新しいチャレンジや情報発信をすることによる企業価値向上と利益創出を目的としており、KanroPOCKeTと連動したオンラインをオフラインと融合するOMO(Online Merges with Offline)施策や、インバウンド取り込みによるグローバルへのブランディング強化も進めていく」と、新たな常設店のオープンによって消費者との接点を増やし、新たな商品価値やサービスを提案していくと話していた。

アップサイクル雑貨

「当社ではこれまでフューチャーデザイン事業の取り組みとして、サステナビリティ・ウェルビーイングの2軸で異業種他社との協業を行ってきた。今年はサステナビリティ軸でのさらなる取り組みとして廃棄包材の活用に取り組んでおり、デザイン会社であるペーパーパレードと共創し、廃棄包材をアップサイクルした雑貨の開発を行っている。製造工程上どうしても出てしまう、廃棄包材は2022年実績で年間約73トンに及ぶ。この廃棄包材を活用し、アップサイクルした雑貨としてバッグ、サコッシュ、ペンケースを開発した。各種アップサイクル雑貨は8月28日からスタートするクラウドファンディングにプロジェクト参加予定となっている」と、廃棄包材から新たな価値を創出していくことに取り組んでいるのだと発表した。

ファンミーティングの様子

「“『深化』顧客との関係を深めてLTVを向上し、競争力を高める”では、デジタルマーケティングを進化させる」とのこと。「オウンドメディア『KanroPOCKeT』を中心にステークホルダーとのコミュニケーションを設計し、蓄積したデータをマーケティング活動(商品開発・改善、プロモーション)に活用するデジタルマーケティングを行っていく。7月には、デジタルマーケティングの中の『共有』フェーズにあたる施策として、ファンミーティングを初めて実施し、カンロへの期待やファン同士の共感の意見が多数寄せられた。今後も『カンロのファン』との相互コミュニケーションの場となるファンミーティングの実施などを通して、さらなるファンを生み出し、激化する市場においても選ばれるブランドへと成長していく」と、デジタルマーケティングの具体的なアクションについて紹介した。

「KanroPOCKeTラボ」(パースイメージ)

「リアルな『深化』の取り組みとして、オウンドメディアである『KanroPOCKeT』と連動した情報発信プラットフォーム『KanroPOCKeTラボ』をオープンする。『KanroPOCKeTラボ』は、『ヒトツブカンロ ハラカド店』のある『東急プラザ原宿 ハラカド』の3階に来年春オープンを予定しており、“心がひと粒大きくなるライフスタイルを提案する”ためのプラットフォームKanroPOCKeTのラボラトリであり、オウンドメディアとの連動によってリアルな情報発信の拠点となる。『KanroPOCKeTラボ』では、開発商品を一般の人にモニターしてもらえるテストマーケティングや各ブランドの認知向上施策などのライブマーケティングを行っていく。顧客との直接の接点を活用し、商品を見て・触って、深く知ってもらう機会にするだけではなく、消費者のリアルな反応を、スピード感のある商品開発に活かす取り組みにしていく」と「KanroPOCKeTラボ」の役割について説明した。

カンロサステナビリティ推進体制

「当社は、企業パーパス『“Sweeten the Future”心がひとつぶ、大きくなる。』の下、事業を通じて社会課題の解決に寄与しながら、企業価値を向上させることで、人と社会の持続的な未来に貢献することを目的に、カンロサステナビリティ推進体制を構築。サステナビリティ委員会のもと5つの活動領域を定めている。この5つの活動領域において今年下期では新たなる取り組みを実施していく」とのこと。「当社は、2020年からJリーグプロサッカーチーム レノファ山口FCのオフィシャルプレミアムパートナーとなっており、スポーツ時の糖の正しい摂取方法を学び、その後サッカー教室でそれを実践する食育プログラムの実施をするなど様々な企画でチームを盛り上げ、地域社会の活性化に取り組んでいる。今回、さらなる活動強化としてレノファ山口FCの冠マッチ開催を決定した。9月3日には維新みらいふスタジアム(レノファ山口FCホーム)で開催する。内容は、来場者プレゼントや、スタジアム全体を使った楽しく糖の知識が学べる企画、カンロ創業の地である山口県光市のカフェ『発信キッチン』で生み出されたオリジナル商品『パコーン』をカンロ飴食堂のアレンジで限定販売するなど、スタジアム内外で様々な企画を実施予定となっている。他にも、糖の価値創造領域の取り組みとして、教育イベントへの出展や小売業とのイベントなどを通じて、糖についての正しい理解を促している」と紹介した。

「当社は、事業を通じた環境負荷削減領域での基本方針として、気候変動に対応するためCO2排出量削減を目指している。また、資源循環型社会実現に貢献すべく、食品廃棄物や使用するエネルギーの削減にも取り組んでいる。当社が事業の基盤としている『糖』の原料は、テンサイ(砂糖大根)やとうもろこし等の農産物となっている。また『健康のど飴』に使われるハーブや『金のミルクキャンディ』の原料に用いられる乳製品など、商品づくりには自然の恵みが欠かせない。将来にわたって消費者に商品を届けるためには、地球環境を守り、育むことが重要であると考えている。また、商品の製造にあたっては、空調設備や原料の煮詰め・冷却などで多くのエネルギーを必要とする。キャンディを包む資材も欠かせない。効率の良い生産を行い、原料や資材を適切に使用し、廃棄物を極力出さないように努め、地球環境に対する負荷を削減することも、メーカーとしての重要な責務だと考えている」と、二酸化炭素排出量の削減目標を掲げる一方で、同社が展開する商品の製造には欠かすことのできないエネルギーもあるのだと力説する。「今期においては、KPIに設定しているCO2排出量を2030年までに2019年比30%削減(scope1~3で算出)の達成へ向け、クリーンエネルギーの活用を推進していく。昨年9月から松本工場、朝日工場で使用する電力を100%CO2フリー電気(CO2フリー電気とは中部電力ミライズが調達した化石電源を主とする電気に、非化石証書の使用によって環境価値を付加することで、実質的にCO2ゼロエミッションを実現している)に切り替え、来年10月からは松本工場に新設するグミ棟において太陽光発電を拡充する」と、クリーンエネルギーを活用しながら二酸化炭素排出量の削減に努めていくと強調した。

カンロ 村田哲也社長

「食品の安全・安心に関わる取り組みについては、食品メーカーである当社にとって、商品の安全性確保は消費者の喜びと信頼、安心につながる大切な取り組みとなる。商品の企画から製造・流通・販売に至るすべてのプロセスで、関連する法令を遵守するとともに、品質第一のものづくりを目指す。さらに、消費者が正しい知識に基づいて商品を選択するためのサポートとなるよう、商品および食の安全・安心に関する適切な情報の発信やコミュニケーションにも積極的に取り組んでいきたいと考え、CS向上委員会を設置する。CS向上委員会では、スマイルサイクルの方針の下、消費者の声を源泉とし商品改良等を行うことで企業の成長に役立てることを目的としている。今期においては、CS向上委員会の会議体を参加者の間口を広げることで、部門を問わず消費者の声が届く体制にする。CS向上委員会は役員主体で開催し、全国の部門長以上が参加可能となる」と、消費者の声を積極的に取り入れる組織体制に変えていくと訴えた。

「当社では、人権の尊重・ダイバーシティの推進領域において、社員一人ひとりが成長し、仕事への誇りを持てるように多様な個性を尊重して、組織全体の成長を目指している。今年3月には社員の健康保持・増進に関する健康経営の取り組みが評価され、経済産業省が推進する『健康経営優良法人』に2年連続で認定された。また、6月からは、屋内ハーブ農園カンロファームの2拠点目『カンロファーム入間』をオープン。障がいのある人や、シニア人材が活躍中だ。引き続き、多様な個性を尊重し、すべての社員がライフ(個人の生活)とワーク(仕事)のバランスを取りながらいきいきと活躍できる活力ある職場の実現を目指していく」と述べていた。

カンロ=https://www.kanro.co.jp/


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