- Drink&Food2023/01/23 13:15
東京商工リサーチが主要食品メーカー121社の「価格改定・値上げ」を調査、食品の価格改定は今年すでに1万品超を予定
東京商工リサーチ(TSR)は国内の主要食品メーカー121社を対象に、今年1月以降の出荷・納品分で価格改定を公表した商品について調査した。
為替相場は、一時期に比べ、円安が落ち着いているものの、原材料や資源価格の高騰で食品の値上げが相次いでいる。仕入コスト上昇が続き、2023年の出荷分で主要食品メーカー121社のうち、半数以上の64社(構成比52.8%)がすでに価格改定を公表している。品目数は計1万36品におよび、約7割が年度末の2・3月に集中している。原材料そのもののコスト高に加え、パッケージや包材などの資材価格や物流費の上昇など、複数の要因を値上げの理由にあげている。メーカーによっては今春の値上げに次いで、年下半期にも値上げを検討する商品もあり、価格改定の波は続きそうだ。
食品メーカー121社のうち、2023年1月以降の出荷・納品分で値上げを公表したのは64社(構成比52.8%)で5割以上にのぼる。64社の値上げの対象商品は、1万36品と1万品を超えた。
値上げの要因では原材料高に加え、製造に掛かる光熱費や資材価格も影響している。1万36品目の分類別では、加工食品(2906品)、冷凍食品(2289品)、調味料(1755品)、飲料・酒(1431品)が上位で、一般家庭で身近に食卓に並ぶ食品が占めた。
なお、同調査は、国内の主な食品メーカー121社を対象に、2023年1月1日以降出荷・納品分で値上げを表明した商品を文書、ウェブ、開示資料等を基に集計した。本調査の実施は今回が初めて。値上げ、価格改定は、2023年1月17日公表分までを対象に集計した。
各社の値上げ対象の商品から代表的な商品を抽出し、その値上げ幅を算出した。2023年1月以降に出荷・納品の商品のうち、値上げ率「5%以上10%未満」が最多の5267品(構成比52.4%)で半数以上を占めた。次いで、「5%未満」が3,635品(同36.2%)で、「10%未満」は全体の約9割(同88.7%)だった。一方、パンやスナック菓子を中心に価格は据え置きながら、内容量を少なくする「内容量変更」(実質値上げ)も99品(同0.9%)あった。
値上げを表明した64社が、リリースなどで公表した値上げの「理由」では、「原材料」が1万34品でトップで、ほぼすべての商品が値上げの理由としている。次いで、「資源・燃料」の9618品、「資材・包材」が8,799品と続く。「為替」は2497品で、理由の5番目に、「人件費」は1,196品で、最下位だった。物価高を背景とした社会的な賃上げ要請も控え、「人件費」は今春以降、値上げの要因になる可能性を残している。
価格改定の対象となる1万36品の分類別では、最多が加工食品2906品(構成比28.9%)で、全体の約3割を占めた。次いで、冷凍食品2289品(同22.8%)、調味料1755品(同17.4%)、飲料・酒1431品(同14.2%)と続く。加工食品2906品の内訳では、ハム・ソーセージ974品、練り物・すり身が732品、缶詰等360品の順で多かった。これらは、原材料として使用する肉や魚介類などを輸入に頼る側面が強く、原材料そのものの世界的な需給に加え、為替動向や物流費などのコスト上昇要因が複数ある。
分類別での値上げ率では、豆腐や納豆、豆乳などの「大豆製品」が9.56%でトップだった。次いで、サプリメントなどの「健康食品」が7.39%と、値上げ品目数の少ない食品が上位だった。一方、値上げ品目数の多い冷凍食品(値上げ率4.30%)、飲料・酒(同5.60%)、 「調味料」(同6.21%)、加工食品(同6.27%)などは、値上げ率上位の食品に比べ、小幅の上昇にとどまった。
主要食品メーカー121社で、2023年1月以降の出荷・納品分で価格改定を表明した商品は1万36品に及ぶ。月別では、1月は11社・242品にとどまるが、2月は30社・5142品の価格改定が行われる。食品の値上げは、スーパーマーケットで季節商品の入れ替えが行われる春(3・4月)や秋(10・11月)に実施することが慣例だ。そのため、メーカー出荷が2・3月に集中しやすい傾向はあるが、4月も2033品、5月以降も298品の値上げがすでに決定している。ドル円相場は、2022年10月の150円台をピークに2022年末から上昇し、2023年1月19日終値で1ドル128円と120円台後半で推移している。一部の加工食品メーカー担当者は、為替の影響が輸入材料に本格的に反映されるのが「今年の春以降」とも話し、先行きは不透明な状況だ。小麦製品や魚介類、肉類などの輸入食材をメインに扱う商品は、年内に2度目の値上げも予想され、まだ価格の安定化は遠いようだ。
東京商工リサーチ=https://www.tsr-net.co.jp/