- Drink&Food2025/02/21 20:02
東洋大学、酒粕の課題解決を目指す「U-go!~酵母の贈り物~」プロジェクト、酒粕を活用した学食メニューを5月から提供
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東洋大学の酒粕プロジェクト「U-go!~酵母の贈り物~」は、日本酒の製造過程で生じる、食べられるにもかかわらず破棄されることが多い酒粕を活用した学生食堂メニューを開発し、5月から東洋大学朝霞キャンパス(埼玉県朝霞市)の学生食堂(以下、学食)で提供を開始する。2月19日に行われた「酒粕学食メニュー」発表会では、酒粕プロジェクト「U-go!~酵母の贈り物~」の概要について紹介するとともに、東洋大学の学生が考案し、試食やアンケートを重ねて、大学生の「食べたい」に合わせて開発した酒粕学食メニューを披露した。
今回「U-go!~酵母の贈り物~」プロジェクトで考案した酒粕学食メニューには、東洋大学 理工学部応用化学科 生命工学研究室と佐藤酒造店が産学連携の研究で開発した花の酵母を使った東洋大学オリジナル日本酒「越生梅林 エスティ」の製造過程で生じた酒粕を使用している。オリジナル日本酒を造るだけでなく、そこで生じた酒粕を食材として学食で活用するプロジェクトは国内初(東洋大学調べ)になるという。
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東洋大学 理工学部応用化学科 准教授の峰岸宏明氏は、「『U-go!~酵母の贈り物~』プロジェクトは、東洋大学のオリジナル日本酒である『越生梅林 エスティ』の醸造において副産物的に発生する酒粕の廃棄問題を解決する取り組みの一環で、学内横断プロジェクトとして立ち上がった。文理融合のメンバー構成となっており、酒粕の市場調査を経営学部の学生が行い、その調査をもとに食環境科学部の学生が酒粕を使ったメニューを考案し、学食で展開する。プロジェクトの活動は、すべて学生が主体となって進めており、教員はアドバイザーとして参加している」と、プロジェクトの概要を説明した。
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「『越生梅林 エスティ』は、川越キャンパス内に自生する植物から分離した酵母『STY(エスティ)』を使用した東洋大学オリジナル日本酒となっている。2023年に開発した第一弾では『ホトケノザ』から分離した酵母を使用し、昨年開発した第二弾では『ヤマユリ』から分離した酵母を使用している。そして、今年は第三弾として『アジサイ』から分離した酵母を使った『越生梅林 エスティ No.3』を開発・商品化し、2月19日から販売開始した。また、あわせて佐藤酒造店敷地内の梅林にある小梅の花から採取した酵母を使用した日本酒『うめのはな-koume-』も販売開始している」と、佐藤酒造店と産学連携で開発している日本酒の特長についても紹介した。
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佐藤酒造店 代表取締役社長の佐藤徳哉氏は、日本酒の醸造過程で生じる酒粕の現状について、「酒粕の生産量は微増傾向にある一方で、酒粕の取引価格は年々低下している。清酒業界において酒粕は、食品廃棄物等として取り扱われており、食べられる商品として酒蔵が自社で販売している。しかし、酒粕は、商品の一部が黒く変色してしまうなど販売が難しい面がある。また、若い世代が酒粕から遠ざかり、料理で使われる機会も減ってきている。さらに、酒粕を廃棄をする場合には酒蔵が全面的に費用を負担することになるため、酒粕の扱いには非常に苦労している」と、酒蔵にとって大きな課題になっていると訴えた。
こうした状況を踏まえて峰岸氏は、「今回の『U-go!~酵母の贈り物~』プロジェクトでは、酒粕を使った学食メニューを開発・提供するが、今後も研究を進めて酒粕の新たな活用法を開拓していく。また、SDGsの観点から、日本の伝統文化である日本酒を守っていくことも大学として重要な取り組みであると考えている。様々な企業と連携しながら、日本酒を作るだけでなく、そこで生まれる酒粕も含めて、責任を持って日本酒文化を伝え、広げていく」と、プロジェクトの今後の方向性を示した。
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続いて、同 食環境科学部・食環境科学科 准教授の露久保美夏氏が、「U-go!~酵母の贈り物~」プロジェクトの活動内容を説明した。「昨年10月17日に実施したキックオフイベントでプロジェクト名が決定し、本格的に活動がスタートした。プロジェクトには食環境科学部と経営学部の学生総勢92名が参画し、文理融合の3チームを結成。まずは、各チームの経営学部の学生が、酒粕に関する市場調査を実施した。この調査では、酒粕が学生にとってどのくらい馴染みがあるのか、味わいを知っているのか、どんなメニューが食べたいかなどをアンケートやインタビューを通じて調査し、昨年11月14日に調査結果の発表会を行った」とのこと。「この結果を受けて、食環境科学部の学生が酒粕を使った学食メニューの開発に取り組み、昨年12月5日に第1回試食会と中間報告を行った。そして、食環境科学部と経営学部の学生それぞれが持つ知見を活かしながら議論を重ね、今年1月9日に第2回試食会および最終報告を行い、本当に大学生が食べたいと思う『酒粕学食メニュー』を決定した」と、今回のプロジェクトを通して、文系と理系の学生が協働することで、それぞれの専門性をさらに高めることができたと話していた。
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ここで、5月から学食で提供する「酒粕学食メニュー」として、「酒粕仕込み!やわらか鶏の照り焼き風 ~茶碗蒸しを添えて~」、「酒粕香る 豚しゃぶサラダうどん」、「選べるソースの粕から定食」の3品が披露され、各チームの学生がメニューのポイントを紹介した。「酒粕仕込み!やわらか鶏の照り焼き風 ~茶碗蒸しを添えて~」は、学食の定番メニューに少ない日本食に着目し、「甘じょっぱい味付けの日本食メニュー」を考えたとのこと。メインの鶏の照り焼き風は、鶏を酒粕に漬け込むことでやわらかさを追求し、副菜の茶碗蒸しにも酒粕を活用している。酒粕になじみがない人でも酒粕の風味を感じつつ、食べやすいメニューとなっている。
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「酒粕香る 豚しゃぶサラダうどん」は、「野菜を多くとりたい、ヘルシーなメニューが欲しい、酒粕にはお肉料理が合うのではないか」という調査結果から、うどんに野菜と肉を多く取りいれることができるサラダうどんを考案したという。サラダうどんにかけるタレに酒粕を加えることで、酒粕入りバンバンジーダレにしている。5月以降のメニュー展開を考え、暑い日にぴったりのメニューに仕上げている。
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「選べるソースの粕から定食」は、調査結果から導いた「珍しさ・ボリューム感・ジューシーさ」を考慮したメニュー開発を行ったとのこと。肉を酒粕に漬け込むとやわらかくジューシーになることに着目し、学食メニューで人気の鶏のから揚げにアレンジを加え、メイン料理とした。また、4種類のソース(生姜焼き風、味噌、明太マヨ、ネギ塩だれ)を用意することで珍しさ、楽しさを加え、そのうち2種類のソース(生姜焼き風、味噌)に酒粕を活用している。
[小売価格]
酒粕仕込み!やわらか鶏の照り焼き風 ~茶碗蒸しを添えて~:550円
酒粕香る 豚しゃぶサラダうどん:500円
選べるソースの粕から定食:550円
(すべて税込)
[発売日]5月
東洋大学=https://www.toyo.ac.jp/
佐藤酒造店=https://www.satoshuzou.co.jp/