- Drink&Food2025/03/04 19:19
富士経済、機能性表示食品や特定保健用食品の国内市場調査、2024年見込では機能性表示食品が2023年比5.2%増の7274億円に

総合マーケティングビジネスの富士経済は、機能性表示食品制度の活用で拡大が続く保健機能食品(機能性表示食品、特定保健用食品、栄養機能食品)の市場を調査した。その結果を「H・Bフーズマーケティング便覧 2025 No.3機能性表示別市場分析編」にまとめた。トピックスとして、2024年国内市場見込(2023年比)では、睡眠ブームの落ち着きやサプリメントの苦戦で伸びは鈍化するが成長が続く機能性表示食品が7274億円(5.2%増)と予測する。休息を求めるユーザーを獲得。差別化のため既存商品に追加で付与されるケースも増加する疲労感軽減に関するヘルスクレームが347億円(45.8%増)に達する見通しだ。
この調査では、保健機能食品について、ヘルスクレーム別、訴求効能別、注目成分別に最新の市場を捉えた。さらに2025年で機能性表示食品制度開始から10年を迎えることから、機能性表示食品市場の変遷をまとめた。
なお、「同 No.1」ではサプリメント市場を分析した。その調査結果の概要は2024年10月に発表した。「同No.2」では、明らか食品とドリンク類の市場を分析した。その調査結果の概要は2025年1月に発表した。今後、「同 総括・パーソナライズ編」ではこれまでの分析結果を総括する。
機能性表示食品は、近年「Yakult1000」(ヤクルト本社)など睡眠関連のヘルスクレームの活況や、無糖茶やドリンクヨーグルトの既存商品が機能性表示食品にリニューアルされるなどの動きがあり、高い伸びが続いた。2024年は市場をけん引してきた睡眠ブームが落ち着いたため伸びが鈍化するものの、拡大が続くとみられる。免疫機能維持やストレス緩和に関するヘルスクレームが高成長を維持しているが、市場が飽和しつつある中、参入企業では新規顧客の獲得からミドル・ヘビーユーザーの育成へと軸足を移す動きもみられる。なお、サプリメントは3月の健康被害問題の影響を受けて、前年を下回るとみられるが、2024年後半には影響が収束しつつあり、今後は再拡大すると予想される。
特定保健用食品(トクホ)は、機能性表示食品制度の開始以降優位性が低下し、企業も低コストで商品開発が行える機能性表示食品に軸足を移したことから2017年以降市場は縮小してきた。2024年も複数のブランドが終売したため、市場縮小が続くとみられる。しかし「明治ブルガリアヨーグルト LB81 プレーン」(明治)や「伊右衛門 特茶 a TOKUCHA」(サントリー食品インターナショナル)といった代表的なブランドが上向くなど好材料もあり、縮小幅は緩やかになるとみられる。2024年には“心血管疾患になるリスクを低減”を表示した商品が登場した。機能性表示食品では実施できない疾患名の具体的な表示による訴求は差別化につながるとみられ、今後他の疾患について表示の広がりが期待される。

機能性表示食品のヘルスクレーム別市場規模ランキングでは、機能性表示食品制度開始直後の2016年から2024年に至るまで、脂肪(低減)が1位を継続している。代表的な健康課題である生活習慣病の予防やダイエットと関わりが深く、“体の脂肪を減らす”というわかりやすい訴求でニーズを掴んできた。2位以下のランキングは、機能性表示食品制度が定着し様々なヘルスクレームの商品が登場したため大きく変動し、脂肪関連以外のヘルスクレームが増加している。脂肪関連以外では、2016年は初期のヒット商品である「えんきん」(ファンケル)などによりアイケア関連のヘルスクレームが注目された。2020年はひざ関節の動きのサポートや関節軟骨の維持を訴求したサプリメントが台頭した。2024年は「Yakult1000」「Y1000」(ヤクルト本社)に代表される、ストレス緩和や睡眠関連のヘルスクレーム、「キリン iMUSE」シリーズ(キリンビバレッジ)を始めとする免疫機能維持といった、2020年前後に市場が形成されたヘルスクレームの台頭が目立つ。

疲労感軽減に関するヘルスクレームは、クエン酸やアミノ酸、酢酸などによる疲労感軽減を訴求した商品が多く、2020年以降、機能性表示食品の届出が大幅に増加し、2021年から順調に拡大している。黒酢ドリンクやスポーツドリンク、菓子、サプリメントなどが展開されており、参入企業が活発に新商品発売やリニューアルを行っていることから、2024年も市場は伸びが続くとみられる。コロナ禍のライフスタイルの変化に伴って、疲労を実感する人が増えたことで注目され、コロナ収束後も休息を求めるユーザーの需要を獲得している。77.0倍 疲労感軽減単体の訴求が主体であるが、2023年以降は、訴求力強化のため、他のヘルスクレームで展開してきた商品に疲労感軽減のヘルスクレームを加えるケースもみられ、脂肪(低減)をはじめ、生活習慣病予防関連の組み合わせが活発である。

脂肪に関するヘルスクレームは、単体のヘルスクレームを訴求するシングルと複数の組み合わせを訴求するマルチに区分した。保健機能食品の中で最も規模の大きいカテゴリーであり、機能性表示食品と特定保健用食品が展開されている。また商品もサプリメント、明らか食品、ドリンク類とバリエーションが豊富である。市場は、機能性表示食品の濃い系緑茶など無糖茶がけん引している。2024年も無糖茶をはじめとするドリンク類は好調を維持したが、サプリメントは別カテゴリーでの健康被害問題の影響で、脂肪関連の商品でも定期購入客の離脱やサプリメントへの不信感により苦戦したため、市場は前年比1.9%増の3684億円が見込まれる。シングルヘルスクレームは、脂肪(低減)と脂肪(吸収抑制)がある。しかし競合激化に伴って、マルチヘルスクレームによる訴求力強化が活発となり、切り替えの動きもあるため、2025年には双方とも前年を下回るとみられる。脂肪(低減)は、ニーズの高さからシングルヘルスクレームでありながら成長を続けてきたが新奇性は低下しており、ブランドの活性化策としてマルチヘルスクレームへの切り替えが起こる可能性は高い。マルチヘルスクレームは、ブランドの差別化のために多機能化を図る動きが活発であり好調が続いている。ブランドのリニューアルに伴う機能の追加・変更も多いため、各カテゴリーの実績は浮き沈みがあり、近年はトリプルヘルスクレームが伸びている。多いものでは5つ以上のヘルスクレームを有する商品存在するが、マルチ化が進むことでターゲットが広がる一方、個別機能の訴求力が落ちるという課題もみられる。

免疫機能維持に関するヘルスクレームは、新型コロナウイルス感染症が流行した2020年に届出が公表され、同年中に当領域では初の機能性表示食品が発売された。新型コロナ治療薬などの対応策が確立されていない状況下で、体調管理ニーズを獲得した。その後ワクチン接種の広がりなどから特需は落ち着いたが、参入企業による積極的な商品展開やプロモーションにより順調な拡大が続いた。関与成分はキリングループの展開するプラズマ乳酸菌のみであったが、2022年以降は独自の関与成分で機能性表示食品の届出を行う企業が登場し、広がりがみられる。新型コロナの収束に伴って感染予防の需要は落ち着いたが、参入企業は日々の体調管理、コンディショニングを啓発することで需要開拓を進めており、2024年も前年比二桁増の410億円が見込まれる。 市場の90%以上を免疫機能維持のみを訴求するシングルヘルスクレームの商品が占める。現状、マルチヘルスクレームの商品は少ないが、脂肪(低減)や睡眠といった消費者の関心が高い機能を組み合わせて需要獲得に成功する商品もみられる。
[調査方法]富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用
[調査期間]2024年11月~2025年1月
[小売価格]
書籍版:14万3000円
書籍/PDF版セット:17万6000円
書籍/PDF+データ版セット(全体編):19万8000円
ネットワークパッケージ版:28万6000円
(すべて税込)
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