- Health&Medical2023/03/15 20:40
コロナ禍で増加する「腸もれ」に要注意、腸もれを防ぐために腸管バリアを強化する方法とは?
おなかの中から健康を脅かす「腸もれ」が、コロナ禍で増えていると指摘されている。腸もれは、欧米ではすでに研究が進んでおり「リーキーガット症候群」と呼ばれているとのこと。「リーキー(Leaky)」は「漏れ」を意味し、「ガット(Gut)」は「腸」で、訳すると「腸もれ」。言葉通り「腸から異物がもれる」ことで、病気や不調を引き起こす危険な症状だという。その影響は幅広く、アレルギーや自己免疫疾患など根治が難しいとされる病気、生活習慣病や動脈硬化などの血管障害、疲れやすさや心の不安定など、現代人が抱える多様な病気や不調の原因ともいわれている。そして、腸もれの大きな原因となるのが「腸管バリア」のゆるみだという。そこで今回、腸もれとは何なのか、腸管バリアを強化するにはどうしたらよいのか、その方法について紹介する。
腸に関する研究が近年、急激に進み、腸からの健康づくりが広く知られるようになった。こうした中、いま医学界の注目を浴びているのが「腸もれ~リーキーガット症候群~」という症状とのこと。現代人に多い慢性的な不調、原因不明の病気、難病など、幅広い病気や不調の原因ではないかといわれている。実は、日本人の7割は、腸もれの可能性があるともされている。消化器専門医で国立消化器・内視鏡クリニックの吉汲祐加子院長は、「新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の拡大以降、この症状が疑われる患者が2~3割ほど増えたと感じている」と話す。その背景には、コロナ禍でのストレス、生活習慣や生活リズムの乱れといった変化が考えられると指摘する。
腸の壁には「腸管バリア」という機能があり、腸を守っている。しかし、このバリア機能が低下して腸に穴が開くと、ここから病原菌などがもれ入る。これらが血管に入り、血流に乗って全身に広がることで、多くの病気・不調の原因になるといわれている。腸もれによって引き起こされる病気や不調には、「アレルギー疾患」(花粉症・アトピー性皮膚炎・喘息・食物性アレルギー)、「自己免疫性疾患」(関節リウマチ、慢性疲労症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎)、「消化器系の病気や不調」(腹痛、下痢、便秘、お腹のはり、胸やけ、消化不良、食欲不振、吐き気、過敏性腸症候群)、「脳や精神関係の病気や不調」(記憶力・集中力低下、不安感、うつ病、不眠症)、「その他、さまざまな病気や不調」(生活習慣病、動脈硬化など血管障害、がん、疲労感、原因不明の熱、筋肉痛、関節痛、息切れ、口臭、抜け毛、ニキビ・吹き出物、じんましん)などがあるとされている。
医学の父と呼ばれるヒポクラテスは「すべての病気は腸で始まる」といったそうだが、まさに腸もれが腸から万病を引き起こしているのかもしれない。しかし、これほど多岐にわたる病気や不調の原因とされながら、その存在は十分に知られていないのが現状とのこと。検査では異常がないのに、腹痛や頭痛、疲労感などの慢性的な不調が続くという人は、まずは、いまも続くコロナ禍を乗り越えるには、腸管バリアを強化し、腸もれをくい止めることが急務といえよう。
腸もれの患者が増えている現状について、吉汲院長は、「消化器専門のクリニックとして、長引く下痢など便通異常が主訴の患者を数多く診察しているが、その中で、リーキーガットの患者と考えられる人が増えている」と話す。「まず便通異常の原因には『潰瘍性大腸炎』『クローン病』などの器質的な疾患や、『過敏性腸症候群』などが考えられるため、内視鏡検査や、ストレスや環境、食生活などの聞き取りにより、こうした疾患の可能性をまず除外する。その上で、リーキーガットの診断基準のひとつとして、『IgG食物過敏症検査』(旧称『遅延型フードアレルギー』検査)と『腸内フローラ検査』を行い、見極めていくそうだ。
「『IgG食物過敏症検査』は、一般的に知られる『即時型アレルギー』とは違う、食後数時間から数日間で症状を引き起こす食物アレルギーの検査となる。血液検査で『IgG』抗体を測定する。リーキーガットで腸粘膜に障害が起こると、未消化の食物が体内にもれることで、アレルギー反応につながると考えられる。『IgG食物過敏症検査』の結果から、リーキーガットの程度を評価する。一方、『腸内フローラ検査』は、便を採取し、腸内細菌の状態や、カンジダ菌などの有無を調べる検査。リーキーガットの原因には、腸内細菌叢の乱れが大きな理由となる。『腸内フローラ検査』の結果から、リーキーガットの程度を評価する。なお、いずれも保険適用外の検査となっている」と、腸もれの診断法について詳しく解説してくれた。
では、腸もれを防ぐにはどうしたらよいのだろうか。ひとつのアプローチとして、食物繊維や発酵食品、ネバネバ食品、オリゴ糖など腸管バリアを強化する食品や成分を積極的に取り入れることが対策になるとされている。例えば食物繊維は、腸内細菌のエサとなって腸内細菌を増やし、この過程で腸内細菌が発酵し「短鎖脂肪酸」という物質が生じるとのこと。短鎖脂肪酸は、腸粘膜のバリア機能を高めるように働く、腸もれの強力な味方だとか。ヨーグルト、漬物、納豆、味噌などの発酵食品には、乳酸菌、納豆菌、麹菌などの腸で善玉菌を増やすために働く菌が含まれているという。オクラ、なめこ、めかぶ、山いもといった食材のネバネバの成分は、糖を含んだたんぱく質で「多糖類(ポリサッカライド)」と呼ばれるもの。この成分には、腸粘膜を丈夫にする作用があるとされている。オリゴ糖は、善玉菌であるビフィズス菌のエサとなり、その増殖や活性化をサポートする。さらに、腸内を酸性にして悪玉菌の増殖を抑える働きもあるといわれている。
管理栄養士の清水加奈子氏は、これらの食品の中からヨーグルトに着目。「腸管バリアの強化に活躍してくれるヨーグルトは、寒い季節には、ちょっと温めて食べるのがおすすめ。温めることで、乳酸菌などの働きがより活発になる効果も期待できる。今回、さらに腸管バリアの強化に働く食材を組み合わせた、ダブルで働く簡単レシピを紹介する」と、ヨーグルトをベースに腸管バリアを強化するW食材レシピを教えてくれた。
まず、“ヨーグルト×発酵食品”のW食材レシピは「鶏ささみのヨーグルト塩こうじ和え」。「腸の善玉菌を増やしてくれるのが『発酵食品』。ヨーグルトはもちろん、漬物、納豆、味噌など。今回は塩こうじとの組み合わせで手軽な副菜にした」という。用意する材料(2人分)は、鶏ささみ3本(150g)、いんげん4本、にんじん1/4本(50g)、プレーンヨーグルト大さじ6、塩こうじ大さじ2、こしょう少々、ごま油小さじ1。作り方は、ささみは筋を取り、斜めそぎ切りにする。いんげんは斜め切りにする。にんじんは千切りにする。これらを耐熱のボウルに入れ、ヨーグルト・塩こうじ各大さじ1、こしょう、ごま油を加え、ラップをふんわりとかけて電子レンジで3分加熱する。一度取り出してかき混ぜ、さらに2分加熱する。軽く汁気を切り、温かいうちに残りのヨーグルト、塩こうじを加えてよく混ぜたら出来上がり。
“ヨーグルト×食物繊維”のW食材レシピは「長いものとろとろヨーグルトポタージュ」。「『食物繊維』は腸内細菌を増やすためのエサとなってくれる。特に注目したいのが、長いもなどの腸粘膜を丈夫にするというネバネバ食材」としている。用意する材料(2人分)は、長いも100g、プレーンヨーグルト150g、牛乳150ml、鶏がらスープの素小さじ1、パセリ(あれば)少々、塩・こしょう適量。作り方は、長いもは皮をむき、すりおろす。鍋にすりおろした長いも、牛乳、鶏がらスープの素を入れ、中火で加熱する。煮立ったらヨーグルトを加えて弱火にし、温まったら火を止め、塩、こしょうで調味する。器に盛り、パセリを散らしたら完成。
“ヨーグルト×オリゴ糖”のW食材レシピは「かぼちゃのヨーグルトホットドリンク」。「善玉菌が元気になるアシストをするのが『オリゴ糖』で、はちみつはその代表的な食材。今回のレシピは、食物繊維の多いかぼちゃとのコラボドリンクとなっている」という。材料(2人分)は、かぼちゃ150g、熱湯150ml、プレーンヨーグルト200g、はちみつ大さじ2、シナモンパウダー(あれば)少々。作り方は、かぼちゃは皮と種を取り除き、スライスしてラップに包み、電子レンジで2~3分やわらかくなるまで加熱する。熱湯を加えミキサーでなめらかにする。次に、ヨーグルト、はちみつを加えよく混ぜ、さらに電子レンジで30秒~1分加熱する。コップに注ぎ、シナモンパウダーをふれば出来上がりとなる。
なお、2022年に行われた日本食品免疫学会における明治の研究によると、同社が保有する「LB81乳酸菌」に、崩壊した腸管バリア機能を改善する作用があることがわかったという。腸管バリア機能が低下すると、腸上皮細胞の結合部分である「タイトジャンクション」がゆるみ、細胞のすき間が広がり、腸もれが起こるといわれている。「LB81乳酸菌」は、このタイトジャンクションに直接作用し、破壊を抑えることが研究で明らかになったとのこと。また他の菌株に比べて、その作用が強いこともわかったという。これらが含まれているヨーグルトを食べることで、同様の効果が期待できるかもしれない。
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