- Health&Medical2023/04/12 13:33
矢野経済研究所、栄養剤・流動食・栄養補給食品に関する調査、2021年度市場規模は前年度比101.9%の1462億円と堅調推移
矢野経済研究所は、国内の栄養剤、流動食、栄養補給食品市場を調査し、セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。その結果、2021年度の栄養剤・流動食・栄養補給食品市場規模は前年度比101.9%の1462億円と堅調に推移していることがわかった。
2021年度の栄養剤・流動食・栄養補給食品の市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比101.9%の1462億円と推計した。2021年度の構成比を見ると、栄養剤市場の規模は前年度比103.2%の363億円、流動食市場の規模は前年度比100.7%の817億円、栄養補給食品市場の規模は前年度比103.7%の282億円となった。傾向としては、栄養剤は医薬品のため保険が適用されることから病院や調剤薬局を通じて在宅療養において堅調に推移し、流動食は入院時食事療養費の中で賄われるため病院や高齢者施設で使用され、入院患者や入所高齢者向けの給食用途で伸長している。栄養補給食品は、高齢者の低栄養を避ける手段として需要が安定しており、病院や高齢者施設、在宅療養において幅広く使用され、高齢者人口の増加、政府による健康長寿の政策推進などを背景に市場は拡大を続けている。
栄養剤・流動食・栄養補給食品メーカーは、腎不全・肝機能障害・免疫賦活・慢性呼吸器不全などの病態別製品やPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy:経皮内視鏡的胃ろう造設術)患者向け専用製品、ソフトバッグ化、容器形状の工夫、微量元素や食物繊維の添加、味や食感の改良、固さの調整、補食対応、高カロリータイプ、加水タイプなどの製品開発を進めている。
容器形状について、現在は濃厚流動食の小容量タイプは200mlのブリックタイプの紙パックが主流である。一方、経口、経管とも一度に大量に使用する病院、高齢者施設では1000mlパックを使用している。
流動食の経口使用頻度が増すにつれ、患者や高齢者の味に対する嗜好もあることから、経口向けに味の改善がなされ、食べ残しを防ぐために200kcal/125ml紙パックの製品が数多く発売された。また、従来のブリックタイプの紙パックを補食用流動食としてカップタイプの容器に入れた商品も登場し、参入企業はドラッグストアやスーパーの食品売り場を積極的に開拓、強化している。こうした一般飲料と同じカップ容器入り流動食は在宅療養や在宅高齢者向け需要が期待される。
栄養剤は保険が適用され在宅療養において、流動食は入院時食事療養費に含めることができるため病院や高齢者施設の入院患者や入所高齢者向けに使用されている。
今後も高齢者の増加が予想され、栄養剤市場は保険適用が継続することで、在宅療養において栄養剤が主体的に使われると考える。少量高カロリー、PEG用の半固形、長期使用を想定した栄養組成、ONS(Oral Nutritional Supplementの略、通常の食事に加え栄養剤を補助的に少しずつ摂取すること)を意識した味の向上などは、栄養剤市場を牽引するとみる。今後も薬価改定を繰り返しながら、栄養剤市場は微増で推移する見込みである。特に、在宅療養ではONSを意識した製品が伸びると考える。
流動食市場は2016年3月に告示された診療報酬改定によって、入院時の経腸栄養用製品の使用に係る給付の見直しにより、濃厚流動食のみを使用して栄養管理を行う場合の入院時食事療養費等を減額し、特別食加算(1食につき76円)の対象から除外した。その結果、市販の経腸栄養用製品(流動食)のみを経管栄養法で提供する場合、入院時食事療養費が1割程度減り、特別食加算が算定不可となった。さらに価格競争により金額ベースでの市場規模の減少などにより低成長、微増推移へ移行している。そうした中でも、補食用途、カップゼリーなど新しい製品群がこの落ち込み分をカバーすると考える。今後についても流動食市場全体は、年率1~2%の成長率になるとみる。
栄養補給食品市場は、在宅向け需要を中心に市場拡大を予測する。在宅高齢者やその家族向けの啓蒙活動を通して認知されることで、今後も3%程度の成長とみる。
[調査要綱]
調査期間:2022年10月~12月
調査対象:栄養剤・流動食・栄養補給食品メーカー
調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話等によるヒアリング調査ならびに文献調査併用
小売価格:36万3000円(税込)
矢野経済研究所=https://www.yano.co.jp/