- Health&Medical2023/08/29 17:55
口内の悪玉菌を飲み込むことで腸内環境が乱れる? 生活習慣病を防ぐために知っておきたい体調管理の新常識とは
近年、テレビや雑誌などのメディアやSNSなどで、腸内環境を整えることの大切さ、「腸活」が話題にのぼるようになり、ダイエットやトレーニングの一環としてだけでなく、体調管理のために腸活を実践している、という声も多く聞かれるようになってきた。腸内環境を整えて腸の機能を活性化すると、免疫力アップなどにつながることが期待でき、将来の生活習慣病を予防できる可能性もある。しかし、腸活には、意外な落とし穴が存在するという。それが、「口の中」とのこと。そこで今回、生活習慣病治療のエキスパートである小川明子先生に、生活習慣病予防の観点からみた口内の悪玉菌ケアの有効性について聞いた。
今年は約4年ぶりとなるエルニーニョ現象が発生し冷夏が予想されたものの、気象庁からは「高温に関する早期天候情報」も発表され、連日猛暑が続く厳しい夏となっている。さらに、近年は秋になっても暑さが続くことが多く、今年も残暑の秋となる可能性がある。あわせて、例年、夏は子どもの感染症が流行しやすく、「ヘルパンギーナ」などの大人が感染すると重症化する可能性のある感染症の流行も見られる(参考:厚生労働省 広報誌「厚生労働」6月号 令和1年)。暑さ寒さの厳しい時期や季節の変わり目などは、健康な人であっても感染症を含む病気にかかったり体調を崩したりしやすいもの。また、時期に限らず、慢性的に「疲れがとれない」「よく眠れない」などの体調トラブルを抱えている人も多い。
最近の研究によると、慢性疲労症候群と診断された人は、健康な人と比べて、腸内環境の多様性が低下している(腸内細菌のバランスが乱れている)ということがわかってきた(参考:Microbiome. 2016 Jun 23;4(1):30.)。腸内環境が悪くなると、腸の機能が低下し、栄養素の吸収効率も悪くなり、免疫力の低下にもつながる。それによって、慢性的な疲れだけでなく、さまざまな全身トラブルにつながるリスクも指摘されている。
こうした背景の中、免疫力向上のために「腸活」を取り入れる人が増えてきている。Kenvueが、20代~60代の男女3000人を対象に実施した体調管理と口内環境に関する実態調査によると、腸活を実践している人のうち、免疫力の向上を目的として行っている人は63.8%おり、6割以上が免疫力を高めたいと考えて腸活を行っていることがわかった。また、腸活をしている人はその継続意欲も非常に高く、体調管理のために今行っている腸活を今後も続けたいと考える人は96.3%、9割以上が腸活を続けたいと思っていることも調査から明らかになっている。腸活は、体調管理の手段としてスタンダードになりつつあるようだ。
一方で、腸活には、その効果にも影響するような落とし穴が「口の中」に存在するという。2019年に行われた研究では、唾液と便から採取した菌の約3割がどちらからも採取されたと発表されている(参考:Elife. 2019 Feb 12; 8: e42693.)。このことから、「口の中の悪玉菌が飲み込まれ腸まで届き定着していることが考えられ、口内の悪玉菌が腸内に到達し、腸内フローラに影響を与えている可能性がある」ことがわかった。Kenvueが実施した調査では、このことを知っていたかと聞いたところ、90.6%の人が「知らない」と答え、腸活実践者でも80.1%が知らないと回答していた。体調管理のために腸活を行っている人にとって、「口の中」は、知らぬ間に腸内環境を乱してしまっている可能性のある盲点だといえるだろう。
「口の中」に存在する口内細菌は、健康な口内の常在菌(善玉菌)、歯を失う原因となる口腔2大疾患、歯周病と虫歯の原因菌である歯周病菌と虫歯菌(悪玉菌)の3つに大きく分けられるとのこと。複数の菌が共生・生息する状態をフローラ(菌叢)と呼ぶが、口内細菌もフローラを形成しており、善玉菌よりも悪玉菌が優勢な口内フローラが、歯周病や虫歯を引き起こすとされている。
従来は、こうした口内細菌や口内細菌が産生する炎症性物質などが傷んだ歯周組織から体内に侵入し、血流にのり全身へと運ばれ、血管そのものやさまざまな組織、臓器に悪影響を及ぼすと考えられてきた。しかし近年、飲み込んだ口内細菌が腸内細菌叢の乱れを引き起こし、腸管からの病原体の侵入を防ぐバリア機能の低下などが起きることで、全身の健康状態に悪影響を及ぼすのではないかという「口腸連関説」が浮上してきた。腸内フローラの細菌バランスが乱れてしまうと、全身の免疫系に影響を与えてしまうおそれがあることがわかっており(参考:Jpn.J.Clin.Immunol. 2017 Oct 6:40(6) 408-415.)、口腔内の悪玉菌をケアすることの重要性が高まっている。
飲み込むと腸まで届いて定着し、腸内フローラに影響を与える可能性も考えられる悪玉菌は、口の中の「バイオフィルム」の中に潜んでいるという。バイオフィルムとは、歯垢やプラークとも言い、歯の表面や、舌、咽頭部を含む口腔内の粘膜面に付着した菌の集合体のことであり、その中には歯周病菌や虫歯菌などの悪玉菌がひしめいている。菌が出す粘着性のある物質がヌルヌルの膜を形成しており、歯磨きだけでは簡単には洗い流すことができないのが特徴とのこと。
口の中の悪玉菌を退治しようと思ってもバイオフィルムの中に潜んでいるため、通常の歯磨きだけでは十分にケアするのは難しい。さらに、多くの人に知られていないこととして、歯磨きやフロスでケアできる歯の表面積は、口腔全体の約25%に過ぎないとされている(参考:J Dent Res. 1991 Dec; 70(12): 1528-30.)。残り75%の歯磨きやフロスだけではケアできない部分に対処し、多くの悪玉菌にアプローチするためにも、歯磨きやフロスとあわせて薬用マウスウォッシュを併用することが効果的といわれている。
薬用マウスウォッシュの有効成分にはイオン性と非イオン性の2種類があり、イオン性の有効成分は菌の増殖を抑える静菌作用が特徴だが、バイオフィルムへの浸透は苦手としている。一方、非イオン性の有効成分はバイオフィルムへ浸透するため、短時間で殺菌効果を発揮する。この有効成分であり、バイオフィルムに浸透して殺菌するために重要な役目を果たすのが、天然由来の植物から発見された「エッセンシャルオイル」とのこと。主なエッセンシャルオイルに含まれる有効成分としては、「チモール」「ℓ-メントール」「1,8-シネオール」「サリチル酸メチル」が挙げられる。エッセンシャルオイルを配合した薬用マウスウォッシュを適切に使用することで、悪玉菌を口の段階で殺菌し、ケアすることができるという。
実際の臨床研究においても、歯磨き+フロスによるケアよりも、歯磨き+エッセンシャルオイル配合の薬用マウスウォッシュの方が、口腔ケアとして有効であることがわかっている。
生活習慣病治療のエキスパートである小川明子先生は、口腔環境と全身疾患の関係性について、「口の中の歯周病菌は、歯茎の粘膜や血管内皮などから血管に入り込んで、血液の流れに乗って体内を巡ることで、全身にさまざまな悪影響を及ぼすことがわかっている。口腔状態と全身疾患とはとても深く関係していて、歯周病の人は糖尿病、脳卒中、心臓病など、多くの疾患を引き起こしやすいことが、近年のさまざまな研究によって明らかにされている。その中でも特に、歯周病と深く関係している病気が、糖尿病である。疫学調査によって、糖尿病の人はそうでない人に比べて、歯周病にかかっている人が多いことがわかっている(参考:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2019」)。またその逆に、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという報告もあるので、歯周病と糖尿病とは悪影響を及ぼし合う負の関係だといえる。実際に、糖尿病の人に歯周病の治療を行うと、HbA1c(糖尿病患者の血糖コントロール状態を評価する指標)が改善するという研究報告もある(参考:日本歯科医師会「健康長寿社会に寄与する歯科医療・口腔保健のエビデンス2015」)」と、口内の歯周病菌が血液に乗って全身を巡り、さまざまな疾患を引き起こすのだと説明する。
「腸には、身体全体の約7割の免疫細胞が集まっているといわれている。そのため、悪玉菌が増えることによって腸内環境が乱れ、そのバランスが崩れてしまうと、免疫力は低下してしまうおそれがある。腸内環境のバランスが悪化することで起こる免疫力の低下が関係しているといわれる病気は、アレルギー、うつ病、発達障害、非アルコール性脂肪性肝炎、糖尿病、発がん性物質が発生することによる乳がんや子宮がんなど、かなり多くあり、身体にとって数えきれないほどの悪影響が出てしまう可能性がある。このような関係性を考えても、腸活を行う最大のメリットは、やはり『免疫力の向上』ではないかと私は考えている。免疫力の向上は身体を根本から改善することができるので、腸内環境を良好に保つことは、病気の予防にとっても非常に大切だといえる」と、腸活を行うことで免疫力の向上が期待できるとの考えを示した。
「体の中で炎症が起こってそれが慢性化すると、免疫システムに異常が生じてさまざまな生活習慣病を引き起こしてしまう。予防のためには、ストレスをためない、食生活の改善や適度な運動をし、睡眠をしっかり取るなど、今の生活習慣を改善して慢性炎症の状態にならないようにすることが重要だ。これは、口の中も同じ。歯周病などの慢性炎症になってしまうと血管などから細菌や炎症物質が全身へと運ばれてしまい、さまざまな病気につながることはここまでで説明したが、同時に口内の悪玉菌が飲み込まれて、身体の中のバリアをすり抜けて腸内へと到達し腸内環境に影響を与えている可能性も十分にあると私は考えている。腸内細菌の多様性を高めることは重要だが、飲み込まれた悪玉菌によって、腸内環境のバランスが乱れてしまうことは免疫力の低下につながってしまう」と、口内の悪玉菌が飲み込まれることで腸内細菌のバランスを乱している可能性があると指摘する。
「口の中で炎症が起こり続ける状態が歯周病なので、その原因となる口内悪玉菌である歯周病菌が関連するさまざまな病気を予防するためにも、歯周病ケアをして炎症を抑えながら、同時にその悪玉菌が飲み込まれて体内へ侵入することも防ぐ必要がある。私たちが身近にできることとしては、歯磨きやフロスといった基本となる口内環境のケアをしっかりと行い、ベースを整えながら、マウスウォッシュなどをプラスして、歯磨きやフロスだけではカバーできない部分もケアし、口内悪玉菌である歯周病菌を口でストップしていくことだと思っている。歯磨きやフロスでケアできるのは口全体の約25%ともいわれているため、マウスウォッシュの併用は有効だと思う。そうすることによって、血液中に歯周病菌が流れ込み全身疾患を引き起こす可能性を減らすことができるだけでなく、口から飲み込まれ腸内環境を乱すことによって引き起こされる全身疾患も予防することが期待できる。まさに一石二鳥の予防になる」と、口の中の悪玉菌をケアすることは全身疾患の予防にもつながるのだと訴えた。
「歯磨きやマウスウォッシュを使って口の中をケアするのは、食事をする時に手を洗うことと一緒。口の中から体内に悪い菌を入れない、広げないためにも、例えば、歯磨きだけ行っている人は毎日のルーティンにマウスウォッシュを取り入れるなど、工夫ができるとよい」と、悪玉菌を飲み込まないためにはマウスウォッシュを併用した口内ケアが効果的であると強調した。
Kenvueが販売している薬用マウスウォッシュ「リステリン」は、口腔内に潜む菌の塊「バイオフィルム」に浸透し、短時間で殺菌効果を発揮するとのこと。刺激の強い上級者向けから、初めての人にも使いやすい低刺激のものまで、幅広いラインアップを取り揃えている。また、用途に合わせて、トータルケアの「液体歯磨き」、ベーシックの「洗口液」、機能特化型の「ホワイトニング」を用意しており、自らの状況に適したマウスウォッシュを選ぶことができる。使用方法としては、「液体歯磨き」は、適量20mlを30秒ほど口に含み、ブラッシングする。「洗口液」は、日常の歯磨きに加え、適量を口に含み、30秒ほどすすいでから吐き出す。「ホワイトニング」は、適量約10mlを60秒ほど口に含み、ブラッシングする。歯磨きのたびに使用することが理想的だが、一日2回朝晩の使用を推奨している。