- Health&Medical2022/11/29 15:38
2021年のフェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場調規模は前年比107.7%の642億9700万円に、2022年も伸びの勢いは続く見込み
矢野経済研究所は、フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場を調査し、参入企業の現況や動向、市場の課題と展望を明らかにした。その結果、2021年の市場規模は、前年比107.7%の642億9700万円に達した。成長が続く市場で、2022年も伸びの勢いは続く見込み。
2021年のフェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場規模は前年比107.7%の642億9700万円と推計した。2020年の市場規模が前年比103.9%の伸びだったことに比べると、2021年になってさらに勢いを増していることがわかる。また2022年もその勢いは続くとみられる。
同市場は、SDGsの認知度が急激に高まりジェンダー平等や女性のエンパワーメント、社会進出といったキーワードにも注目が集まったことにより、女性の暮らしにくさ、働きにくさに改めて焦点が当たるようになったことで認知度が拡がっている。
2019年頃から様々なアイテム・サービスがフェムテックの枠で語られ、新たなアイテム・サービスだけでなく、既存のアイテム・サービスも改めてカテゴリーを与えられたことで注目されるようになっている。吸水ショーツなどスタートアップの参入が相次いだことも市場拡大の後押しとなった。また国内では労働力不足が顕在化していたため、職場における女性の活躍推進や支援の動きが高まっており、フェムケア&フェムテックサービスへの企業からの関心も高い。
フェムテック拡大の背景には、「女性活躍推進法」( 厚生労働省「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2019年改正、2022年全面施行))を始めとする法改正やそれに対応する企業の動向が影響しているという面もある。労働力不足を解決するためには、昔のように女性管理職比率を高めるという画一的なアプローチだけでなく、企業ごとに様々な側面から女性が働きやすい環境を整えることが重要と認識されつつある。
企業では育児・介護離職、復職の難しさ、管理職比率の低さなどが課題に挙がるが、女性の働きやすさを考えるにおいて、そもそも様々なライフイベントを迎えた女性の健康課題や悩みについての理解、配慮が不足しているという点も大きいとみられる。そうした課題解決を含め、以前より幅広い企業において女性の働きやすさについて考える機運が高まっているといえる。
2021年後半から2022年にかけては法人向けのフェムケア&フェムテックアイテム・サービスへの拡充が相次いだ。オンライン健康相談サービス、妊活サポート、低用量ピル服薬支援プログラム等が福利厚生サービスとして法人に導入される可能性も増加しているものとみられる。また、卵子凍結やホルモン検査のサービスを提供している企業もある。しかし、今のところアイテムが福利厚生サービスとして提供されているケースは吸水ショーツ以外に目立ったものがないとみられる。
2021年前半まではフェムテックが注目された一方で、マーケットに投入されていたアイテム・サービスがある程度限られていたため、「吸水ショーツ」や「月経カップ」、「オンラインピル」といったアイテム・サービス名の検索ワードから、ブランドにユーザーを呼び込むことは比較的容易で、店舗での競争も少なかった。しかし新規参入が増加し、消費者にとっての選択肢は増えたが、参入企業にとっては競合との差別化が課題となってきた。新しい素材やカラーなどデザイン面のブラッシュアップ、法人向け、ギフト、メディアで取り上げられやすい取り組みなどマーケティング面での工夫を凝らすブランドも増加しているが、今後も競争力を維持するためには、それ以上に訴求力のあるアイデアが求められる。
また市場全体を拡大させるためには、啓発活動も重要なポイントになる。女性が気兼ねなく悩みを話せるようになり、アイテム・サービスを利用できるようになるためには、女性自身の知識向上やセルフケアをするという意識向上に加え、周りの男性の理解、配慮を促進すること、さらに幅を広げれば若年層にも正しい知識を身に付けられるような教育、アイテム・サービス自体の認知度や若年層向けアイテム・サービスの開発も課題と言える。既存のターゲットとなる30代、40代においても、多様化したアイテム・サービスをどう選ぶかという点が消費者の課題となりつつあり、「選び方」の提供も求められる。
[調査要綱]
調査期間:2022年7月~9月
調査対象:国内のフェムケアアイテム製造企業・販売企業、フェムテック参入企業、フェムテックアイテム流通企業等
調査方法:同社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査、アンケート調査、ならびに文献調査併用
[小売価格]16万5000円(税込)
矢野経済研究所=https://www.yano.co.jp/