アストラゼネカ、「いま知っておきたい!前立腺がん」セミナーを開催、西川貴教さんが男性にとって身近な前立腺がんについて学ぶ

左から:公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター診療教授 上村博司先生、西川貴教さん、前立腺がん患者であるNPO法人 腺友倶楽部 理事長の武内務氏

アストラゼネカは、10月16日に、「いま知っておきたい!前立腺がん 西川貴教さんと学ぶ、医師とのコミュニケーションのポイントと治療選択」と題し、会場とオンラインのハイブリッド形式でセミナーを開催した。セミナーでは、前立腺がんの専門医と患者を招き、アーティストの西川貴教さんと前立腺がんの治療の基礎とともに、医師とのコミュニケーションにおける工夫についてディスカッションを行った。

前立腺がんは日本人男性において罹患数がもっとも多いがんで、昨年には9万8600人が罹患したと推計されている。前立腺がんは50代ごろから罹患が増え始め、早期ステージでの発見も多く、進行も比較的緩やかなことが多いといわれている。前立腺がんの多くは男性ホルモンの影響を受けて増殖することから、男性ホルモンの分泌や作用を抑制するホルモン療法が行われることが一般的だ。しかし、一部の患者においては、その治療効果が薄れ、転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)という悪性度の高い前立腺がんに進行することがあるという。このmCRPCは診断されてからの生存期間は患者にもよるが、およそ3年といわれている。前立腺がんの検査や治療法は、この数年で大きく進歩しており、遺伝子検査によるゲノム医療も可能となってきたことから、患者一人ひとりの希望に合った治療を医療従事者とともに決定していく「Shared Decision Making(シェアード・ディシジョン・メイキング、SDM)」がより一層重要になるとされている。

公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター診療教授 上村博司先生、西川貴教さん、前立腺がん患者であるNPO法人 腺友倶楽部 理事長の武内務氏

今回のセミナーでは、前立腺がんの専門医である公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター診療教授 上村博司先生が、前立腺がんの現状や治療について講演を行った他、前立腺がん患者であるNPO法人 腺友倶楽部 理事長の武内務氏と西川貴教さん含めた3名によるパネルディスカッションを行った。武内氏のがんの発見経緯や治療体験を交えながら、前立腺がん治療におけるSDMに関する患者調査結果とともに、男性にとって大変身近な前立腺がんについて深堀りしていった。

「前立腺は男性のみにある臓器。膀胱の下に位置し、『被殻』『移行領域』『中心領域』『辺縁領域』からなる」と上村先生。「前立腺肥大症は前立腺の良性過形成によって、下部尿路機能障害を呈する疾患である。前立腺肥大症は移行域の肥大を主として発生する。下部尿路症状として排尿症状・排尿後症状・畜尿症状が起こりうる。前立腺がんの早期は無症状であることが多く注意が必要である」と、前立腺肥大と前立腺がんの違いについて説明した。「前立腺がんに新たに罹患する年間患者数は約9万5000人、年間の死亡者数は約1万2000人に達する。前立腺がんは男性のがんの中で最も多くなっており、患者数は今後も増加することが予測される」と、前立腺がんの疫学を年次推移で紹介。「前立腺がんは50歳以降から人口10万人あたりの罹患数が増加するようになり、75~79歳の罹患率が最も高くなっている」と高齢者に発症しやすいがんであると述べていた。「2025年以降、75歳以上の前立腺がん罹患者数がさらに増加し、新規前立腺がん患者の約7割が75歳以上となる」と、前立腺がんの罹患者数は増えていくと予測していた。

「前立腺がんの病期は、T(腫瘍)として、癌そのものが前立腺内にとどまっているか。N(所属リンパ節)として、リンパ節に転移しているか。M(転移)として、骨や肝臓といった前立腺から離れた臓器に転移しているか--によって定まる。前立腺がんの予後は比較的良いといわれているが、ステージIVの5年生存率は約50%である」と、病期について紹介する。「生涯罹患率は黒人、白人、アジア人の順に高く、BRCA2遺伝子変異(BRCA1、HOXB13、NBS1、CHEK2遺伝子の変異も)とされる。後天的要因としては、生活習慣や肥満、糖尿病およびメタボ、前立腺の炎症や感染、前立腺肥大症や男性下部尿路症状、環境因子や化学物質への曝露が挙げられる」と、リスクと要因についても述べていた。「前立腺がんの罹患者が近親者にいる場合、発症リスクが高かったという報告がある」と、近親者に罹患者がいる場合も発症リスクが高まるのだと教えてくれた。

公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター診療教授 上村博司先生(左)と西川貴教さん

「前立腺から出されるたんぱく質PSA(前立腺特異抗原)が前立腺がんを見つけるための腫瘍マーカーとされ、血中PSA値が高いとがんの発現率も高まる」と説明する。「また、前立腺針生検でがんを見つける方法もある」とのこと。「がんの悪性度を見分けるには、グリソン分類で軽度、中等度、高度に分ける」と、病理悪性度でがんのレベルを診断していると教えてくれた。「早期がんは、前立腺の内側に腫瘍がみられる限局がんで、進行がんになると、前立腺の外側に局所浸潤がんがみられ、さらに進行すると周囲浸潤がんもしくは骨やリンパ節への転移がんがみられるようになる」と、前立腺がんの進み方についても説明した。

「前立腺がんでは、膀胱浸潤、尿道圧迫、尿道浸潤がみられるため、排尿困難や頻尿などの排尿障害がみられ、進行期には排尿痛や血尿もある」と、進展と症状の出現について解説する。「さらに進行すると、下肢のむくみや四肢の痛み、腰背部痛、食欲低下や体重の減少がみられる」と、リンパ節や骨へ転移した場合にみられる症状についても教えてくれた。「診断については、PSA検査、直腸診、超音波検査を行い、それぞれPSA高値、硬結触知、低エコー領域があれば、超音波ガイド針生検を行う。これで陽性と判断されると、病理健診を実施し、限局性がん、局所浸潤がん、転移性がんに分類し、治療法を決定していく」と、診断のアルゴリズムについて解説した。

「治療法については、恥骨後式前立腺全摘除術というがんの腫瘍の除去を目的に、前立腺と精嚢を摘出し、膀胱と尿道をつなげる手術がある。また、手術支援ロボット『ダヴィンチ』によるまるで自分が小さくなって、患者の体内に入り込んで手術をしているような、サージョンコンソール、ペイシェントカート、ビジョンカートの3つの機器で構成されたもので行う手術がある」と、手術による治療法について紹介した。「前立腺に放射線を照射して、がん細胞を死滅させる治療法である放射線療法も前立腺がんでは用いられる」とのこと。「手術に比べて身体的な負担が少なく、75歳以上の高齢者でも治療が可能で、痛みなどの症状緩和を目的に行うこともある」と、前立腺がんにおける放射線療法の役割について説明した。

「薬物療法については、男性ホルモンの働きを抑えて、前立腺がん細胞の増殖を抑制する“全身的”な治療法のホルモン療法(内分泌療法)がある。身体への負担が比較的少なく、多くの患者に有効で、進行がんには、年齢にかかわらず第一選択の治療となる。早期がんでも、手術や放射線治療を行わない患者に選択されることが多い」とのこと。「また、前立腺がんの再発時や進行がんの一次療法に対して、主に薬物療法を行う。近年、転移を有するがんやホルモン抵抗性がんに効果が期待できる薬剤が承認されており、ホルモン療法と併用することが増えている」と、最近の前立腺がんの薬物治療について解説してくれた。「近年、様々な薬剤の登場によって、前立腺がん薬物療法が大きく変わってきている」と、抗アンドロゲン剤やPARP阻害剤などの登場で選択肢が増えているとも語っていた。

「遺伝子変異検査やがんゲノムプロファイリングによるさらに詳細な腫瘍特性の把握を行う個別化治療の開発も進んでいる」とのこと。「前立腺がんのBRCA1/2などHRR関連遺伝子変異は、卵巣がんや乳がんと異なり、ホルモン抵抗性前立腺がんでは生殖細胞系列変異だけでなく、体細胞変異も高頻度に発現している」と、がんの発生には遺伝子の変異が関係しており、遺伝子変異は生殖細胞系列変異と体細胞変異に大別できるのだと述べていた。

前立腺がん患者であるNPO法人 腺友倶楽部 理事長の武内務氏(右)の話に耳を傾ける西川貴教さん

この後、前立腺がん患者であるNPO法人 腺友倶楽部 理事長の武内務氏と西川貴教さん、上村先生によるパネルディスカッションが行われた。まず、武内氏が前立腺がんと診断された時の状況を紹介。「前立腺がんと診断される前は、フルマラソンやウルトラマラソンなどを走ることを趣味にしており、趣味が講じて、全盲ランナーと一緒に走る伴走ランナーとしても大会に参加するなどしていた」と、ハードな運動を行っていたという。「しかし、伴走中にトイレに行きたくなることが頻発していたため、医師の診断を受けたところ、PSA数値が150といわれた。その時はどのような状態なのかわからなかった」と、頻尿といった症状はあったものの、身体の痛みなどはなかったため、あまり深刻に考えていなかったと当時を振り返る。「PSAについて独学で調べたところ、進行がんで転移の可能性も考えられることがわかり、医師に確認したら、手術が難しい状況なのだといわれた」と、前立腺がんが進行していたという。「そこで、手術の他に治療法はないか調べたところ、海外では放射線による治療があると知り、国内で放射線治療が受けられる医療機関を調べた」と、当時、導入されたばかりの治療法に藁をもすがる思いだったと回顧する。「そして、放射線およびホルモン療法で治療を行うことにした。5年ほど治療に専念したら、PSA値も下がり、身体の調子も良くなったので、治癒したとばかり思っていた。しかし、発症から6年、7年目となったところでPSA値が上がったため、飲み薬でごまかしながら生活していたものの、再度放射線を受けて現在に至っている」と、がんと診断された状況や治療法について語ってくれた。

西川貴教さん

上村先生の講演および竹内氏の話を聞いた西川さんは、「前立腺がんの症状として、尿の回数が増えるとのことだったが、それが前立腺がんによるものなのか、代謝によるものなのかどう判断すればよいのか心配に感じた。PSA値を調べるにはどのような方法を用いるのか多くの疑問が湧いた」とのこと。こうした疑問について上村先生は、「頻尿については、40代、50代ごろから増え始めたという人は要注意となる。また、高齢者になると頻尿は当たり前と思う人もいるが、実際にはそうではないため、尿の回数が増えたと思ったら、かかりつけ医などに相談してほしい。PSA値は血液検査で調べる。健康診断のオプションにPSA検査が入っているケースがあるので、オプションを追加してもらうと良いかもしれない。PSA検査を受けて、4以上の値となった場合は、専門医を受診するようにしてほしい」と呼びかけた。

公立大学法人横浜市立大学附属市民総合医療センター診療教授 上村博司先生(左)に質問する西川貴教さん

西川さんは、「自分だったら、検査を受けて、がんと診断されたら将来に大きな不安を感じてしまう」と、精神的な不安によってがんの進行が進んでしまうのではないかと思ってしまうと語る。これに対し上村先生は、「Shared Decision Making(シェアード・ディシジョン・メイキング、SDM)という、治療を選択する際に、医師と患者が相談しながら決めていく考え方がある」とのこと。しかし、西川さんは、「治療については無知であるため、何を聞けばよいのかという状況に陥る患者も多いと思う」と、患者の気持ちを代弁する。上村先生も「短い時間の中で、薬の作用などすべてを伝えることは困難でもある」と、SDMには課題もあると訴える。「何か困っていることはないかと一言医師が患者に聞くということが必要かもしれない」と、患者からの意見を待っているのではなく、聞き出そうとする姿勢が必要なのだと上村先生は語っていた。

西川貴教さん

西川さんは、「今回、セミナーに参加したことで、がんは他人事ではないと感じた。身体を使う仕事をしているだけに、何か不調や変化がみられた時は、医師に相談したり、検査を受けるなどして、自分自身の身体を知ることは大切なことだと感じた。運動しているからがんにならないということもないということも改めて認識することができた。それだけに、まずは自分でできることからやっていこうと思った」と、前立腺がんに限らず、身体の異変を感じ取るための健診や専門医への相談は今後徹底していきたい考えを示していた。

アストラゼネカ=https://www.astrazeneca.co.jp/


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