- Health&Medical2025/04/15 18:48
気温や気圧の変動が激しい春から初夏は要注意、血管が弱るこの時期に知っておきたい脳の健康リスクと対処法

暖かな日差しが心地よくなる季節。しかし、この春から初夏にかけては、私たちの血管にとって大きな負担がかかる時期でもある。気温や気圧の変動が激しいこの季節、知らず知らずのうちに血管が弱り、脳の健康に思わぬリスクをもたらすことがあるという。そこで今回、季節の変わり目に起こる血管のトラブルと、その最新治療法について紹介する。
春から初夏にかけては、朝晩と日中の気温差が大きくなる。この急激な温度変化に体が適応しようとすると、血管は絶えず収縮と拡張を繰り返すことになる。血管が収縮すると血圧が上昇し、拡張すると下がるという変化が短時間で何度も起こることで、血管の壁に負担がかかり、次第に弾力性を失っていくとされている。
さらに、この時期は気圧の変動も激しく、低気圧が通過すると血管が拡張して血流が悪くなりがち。また、新生活や環境の変化などでストレスを感じると血管が収縮して血圧が上がる。これらの要因が重なることで、特に高齢者や高血圧の人、血管に問題を抱えている人は、脳血管疾患のリスクが高まるといわれている。
血管が弱くなると、主に「脳動脈瘤」や「脳梗塞」、「一過性脳虚血発作(TIA)」といった脳血管疾患のリスクが高くなるという。「脳動脈瘤」は、血管の壁が部分的に膨らみ、風船のようになった状態。これが破裂するとくも膜下出血を引き起こし、突然の激しい頭痛や意識障害などの症状が現れる。くも膜下出血は発症後の死亡率が高く、早急な治療が必要になる。
「脳梗塞」は、脳の血管が詰まることで、その先の脳組織に血液が届かなくなる病気。突然の言語障害や半身のまひ、しびれなどの症状が特徴で、発症から時間が経つほど回復が難しくなる。「一過性脳虚血発作(TIA)」は、一時的に脳の血流が悪くなり、脳梗塞と似た症状が現れるが、数分から24時間以内に症状が消失する。しかし、これは本格的な脳梗塞の前触れとなることもある重要な警告信号でもあるとのこと。

春から初夏にかけて、次のような症状を感じたら要注意。「突然の激しい頭痛」「めまいや立ちくらみが増える」「片側の手足にしびれや脱力感がある」「言葉がうまく出てこない、ろれつが回らない」「視界がぼやける、視野が欠ける」「いつもと違う強い疲労感」--これらの症状は一時的なものでも、脳血管疾患の前兆である可能性がある。そのため、気になる症状があれば、速やかに医療機関を受診することが重要になる。

脳血管疾患と診断された場合、従来は開頭手術が主な治療法だったが、現在では「脳血管内治療」という画期的な方法が広く普及している。国内トップの7500件以上の手術実績を誇る、新百合ヶ丘総合病院 脳血管内治療センター長の大石英則先生によると、この治療は皮膚を大きく切開することなく行えるため患者の負担が少ないのがメリットとのこと。「脳血管内治療は、カテーテルという細い管を血管内に通して病気の部位まで進め、様々な薬や道具を使って血管の中から治療する方法。脳に直接触れることがないため、脳への影響が少なく、回復も早いのが特徴」と大石先生は説明する。

脳動脈瘤に対しては、プラチナでできた微細なコイルを用いて動脈瘤を埋める「コイル塞栓術」や、最新の「フローダイバーター治療」などが行われている。フローダイバーター治療では、細かいメッシュ状のステントを用いて動脈瘤の入り口をカバーし、時間をかけて自然に血栓化させ動脈瘤を消失させる。

脳梗塞に対しては、発症から4.5時間以内であれば血栓溶解薬(t-PA)の点滴治療が行われる。それ以降でも、頭の中の太い血管の閉塞が確認された場合は、8時間以内であれば血栓を直接回収する「血栓回収療法」という治療が可能。この治療によって、従来なら重い後遺症が残っていたケースでも、機能回復が期待できるようになった。
「強い頭痛やめまい、手足のしびれなど、いつもと違う症状を感じたら、早めに専門医に相談することをお勧めする」と大石先生。「脳の病気は早期発見・早期治療が何より大切。最新の検査機器と治療技術の進歩によって、多くの脳血管疾患が安全に治療できるようになっている。些細なことでも気になる症状があれば、専門医に相談してほしい」と、早期発見・早期治療の重要性を訴えた。

新百合ヶ丘総合病院 脳血管内治療センターの強みは、大石先生をはじめとする豊富な経験と高度な技術を持つ専門医チームにある。日本脳神経血管内治療学会専門医3名、指導医4名という充実したスタッフ体制で、安全かつ高度な医療を提供している。また、最新型の脳血管撮影装置を導入し、国内で使用可能なすべての治療材料(デバイス)を用いた治療が可能。近隣の医療機関とも緊密に連携し、患者に最適な医療を提供するための体制を整えている。
新百合ヶ丘総合病院 脳血管内治療センター=https://www.shinyuri-hospital.com/department/17_neurosurgery/endovascular_repair.html