- Health&Medical2025/04/25 17:00
新型コロナワクチンの接種意向と自己負担額の相関性調査、自己負担額が1000円増加すると接種意向は大幅に下がる見通し

生活者の“健康と暮らし”に関する情報を発信するポータルサイト「マイライフニュース」を運営するヒューマン・データ・ラボラトリは、特例臨時接種終了後に初めて自己負担で行う2024年度の「新型コロナワクチン定期接種(今年3月31日まで実施。自治体により異なる場合あり)」が実施されたことを受け、65歳以上の男女4000名を対象に新型コロナワクチンの接種意向と自己負担額の相関性について調査を行った(実施時期:1月23日~1月30日)。この結果、ワクチン定期接種をしなかった人の接種意向は、自己負担額が減少するほど上昇することが判明した。今回の調査結果を受け、ワクチン接種の現状について、感染症を担当する行政医師である静岡県感染症管理センター センター長の後藤幹生先生に話を聞いた。
自己負担がない特例臨時接種(全額公費負担)の終了後、初となる自己負担による2024年度「新型コロナワクチン定期接種」(以下、2024年度定期接種)が今年3月末で終了した。特例臨時接種終了時点では、65歳以上のワクチン接種率は「53.7%」(厚生労働省:新型コロナワクチンの接種回数について(令和6年4月1日公表)参照)となっていたが、2024年度定期接種は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)が季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行したことで努力義務がなくなり、さらに有料となったことで、接種率は一層落ち込んでいることが想定されている。
また、2024年度定期接種では、新型コロナワクチン接種の助成金制度(厚生労働省:令和6年度第1回 予防接種に係る自治体向け説明会(令和6年6月21日公表)参照)によって、通常の地方交付税措置に加えて、8300円の自己負担低減策がなされていたが、2025年度以降は継続しないとの報道も出ている。この助成金制度が終了となった場合、新型コロナワクチン接種の自己負担額は大幅に増加する可能性があることから、今回、新型コロナワクチンの接種意向と自己負担額の相関性について調査を行った。

調査ではまず、2024年度定期接種の自己負担額が2000~2999円の地域在住で、定期接種を見送った人を抽出し、自己負担額が減少した場合の2025年度定期接種における想定接種率を算定した。その結果、定期接種をしなかった人も、自己負担額が少なくなればなるほど、接種意向が高まる傾向にあることが明らかになった。自己負担額が1000円減少した場合の想定接種率は14.0%、2000円減少した場合は24.6%、自己負担額が3000円減少し、0円になった場合の想定接種率は36.5%まで上昇した。

次に、2024年度定期接種の自己負担額が2000~2999円の地域在住で、定期接種をした人を抽出し、2024年度の接種率を「15.0~30.0%」「10.0~15.0%」「5.0~10.0%」の3つのレンジに仮定した上で、それぞれ自己負担額が±0円または増加した場合の2025年度定期接種における想定接種率を算定した。その結果、調査全体の傾向として、いずれのレンジにおいても、増額となった場合の接種意向は大幅に低下しており、さらに自己負担額が変わらない(±0円)の場合においても想定接種率は下がる傾向が認められた。
各レンジの想定接種率を見ると、「15.0~30.0%」のレンジでは、自己負担額が±0円の場合は13.0~26.0%、1000円増加した場合は4.1~8.2%、2000円増加した場合は3.4~6.8%、3000円増加した場合は1.3~2.6%となった。
「10.0~15.0%」のレンジでは、自己負担額が±0円の場合は8.7~13.0%、1000円増加した場合は2.7~4.1%、2000円増加した場合は2.3~3.4%、3000円増加した場合は0.8~1.3%となった。
「5.0~10.0%」のレンジでは、自己負担額が±0円の場合は4.3~8.7%、1000円増加した場合は1.4~2.7%、2000円増加した場合は1.1~2.3%、3000円増加した場合は0.4~0.8%となった。

静岡県感染症管理センター センター長の後藤先生は、今回の調査結果を踏まえて、「5類感染症に移行して約2年が経とうとする新型コロナだが、その死亡数は、2024年1~9月でも約3万人(厚生労働省:人口動態統計月報(概数)参照)となっており、2023年度においては死因の8位(厚生労働省:人口動態統計月報(概数)参照)に入っている。全国約500の基幹定点医療機関の入院者数も、自己負担での定期接種初年度となった2024年度は6%増加(前年度比)し、10万人(厚生労働省:新型コロナに関する報道発表資料(発生状況等)参照)を超えており、依然過去の感染症とはいえない状況が続いている。このような状況の中で、2025年度のワクチン接種にかかる自己負担額が引き上げられた場合、一層の接種率低下につながるだけではなく、入院者数のさらなる増加にともなう医療提供体制のひっ迫が発生する恐れがある」と、自己負担額の引き上げはワクチン接種率のさらなる低下に加え、医療提供体制への影響も危惧されると指摘する。
「特に、基礎疾患がある人や介護・在宅ケアが必要な人の中で、新型コロナに罹患した際に入院や重症化のリスクが高いとかかりつけ医が判断される人には、引き続きしっかりとワクチンを接種してもらうための体制確保が必要と考える。今後、接種率を向上していくためには、自治体からの接種券個別配布などによる定期接種の周知徹底や新型コロナによる合併症や後遺症、基礎疾患の悪化等の啓発などを含め、新型コロナワクチンを必要とする人が適切に接種を受けられる環境の維持・充実を図っていくことが必要ではないだろうか」と、ワクチン接種率の向上には、自治体による接種環境の維持・充実への積極的な取り組みが求められると提言した。
[調査概要]
調査名:「新型コロナワクチンの接種意向と自己負担額の相関性」調査
調査対象者:65歳以上の男女かつ新型コロナワクチンに対して強い拒否感情のない人を4000名抽出
調査手法:インターネット調査
調査時期:2025年1月23日(木)~1月30日(木)
ヒューマン・データ・ラボラトリ=https://www.humandatalab.com/
マイライフニュース=http://www.mylifenews.net/