西本願寺、親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要協賛行事「MEET BUDDHISM THINKING」を開催、トークで感じるステージを展開

MEET BUDDHISM THINKING LIVE TALK SESSIONの様子、左から:ファシリテーターの霍野廣由氏、蝉 semiの石川大輔氏、堤浅吉漆店の堤卓也氏、本願寺布教使の福間義朝氏

浄土真宗本願寺派(西本願寺)では、「親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要」を機縁とし、僧侶、門信徒をはじめ、特にこれまで仏教や浄土真宗にあまり親しみのなかった人や、若い世代の人々にも仏教にふれてもらえるよう、4月29日、5月6日、7日に「MEET BUDDHISM THINKING」(ミート ブッディズム シンキング)を開催した。5月7日には「LIVE STAGE」(白州内サブテント)でBUDDHISM THINKINGを“トーク”で感じるステージを展開。フード・ファッション・デザインの視点からトークセッションなどが行われた。

「LIVE STAGE」(白州内サブテント)

「MEET BUDDHISM THINKING」では境内を、「MAIN STAGE」(御影堂)、「LIVE STAGE」(白州内サブテント)、「WORKSHOP/EXHIBITION/SHOPPING」(白州)、「FOOD&DRINK/SHOPPING」(北境内地)の4つのエリアに分け、現在社会に仏教的価値観を発信するためのシンポジウムや、「サスティナブル」、「エシカル」をキーワードとした事業展開、研究・開発などの取り組み、商品販売等をしている各企業、団体によるブース出展やターゲットである若者の興味関心をひくことができるステージコンテンツを実施した。また、龍谷大学において、「信仰とセクシュアリティを考えるシンポジウム」が開催された。

白州内のサブテントに設置したステージで行われた旭堂南雲さんによる講談

3日間を通して、メインステージコンテンツとして、各界で活躍する著名人によるシンポジウム、国宝書院・飛雲閣の特別公開、飛雲閣での抹茶接待、5月6日、5月7日には、脱炭素社会を目指す様々な団体による取り組み紹介、またフードロスの視点に立った飲食ブースを展開した。

各企業、団体によるブース

5月7日には、白州内のサブテントに設置したステージで、BUDDHISM THINKINGを“トーク”で感じるステージを開催。僧侶やお笑い芸人によるネタライブや、フード/ファッション/デザインの視点から今回のイベントに関わる人たちによるトークセッションなど、BUDDHISM THINKINGにつながる“トーク”を幅広く展開するステージ「MEET BUDDHISM THINKING LIVE TALK SESSION」が行われた。

白州内のサブテントに設置したステージで行われたアサカラザルによるお笑いLIVE

MEET BUDDHISM THINKING LIVE TALK SESSIONでは、本願寺布教使の福間義朝氏、蝉 semiの石川大輔氏、堤浅吉漆店の堤卓也氏とファシリテーターを務めた霍野廣由氏が「サスティナブル」、「エシカル」をキーワードにトークを展開した。

MEET BUDDHISM THINKING LIVE TALK SESSIONの様子、左から:ファシリテーターの霍野廣由氏、蝉 semiの石川大輔氏、堤浅吉漆店の堤卓也氏、本願寺布教使の福間義朝氏

「期間限定のイベントなどで掲出される広告物をその場限りで廃棄してしまうのではなく、新たな商品を生み出していく取り組みを行っている。この取り組みにおける材料となる広告物は、蝉のように短命であることから“蝉 semi”という社名を名付けた。現在では主に、街に飾られてあったものを鞄などに再生して、街で人々に使ってもらう活動を行っている」と、蝉 semiの石川大輔氏が挨拶。堤浅吉漆店の堤卓也氏は、「漆は木の樹液を原料としているが、国産の漆の生産量は現在大きく減少しており、これに比例するように漆を扱う職人の数も減っている。こうした現状を打破するべく、若者に漆の素晴らしさや価値を伝えるべく、スケートボードやサーフボードに漆を塗った製品を製作したりしている」と、漆の価値を広く知らしめる取り組みを行っていると述べていた。

本願寺布教使の福間義朝氏

仏教的な視点から今回のテーマである「サスティナブル」や「エシカル」について福間氏は、「地球自体が生命なのだといわれている。その理由として、物事は時間とともに朽ちていく。しかし生命は2ヵ月経っても朽ちていかないとされている。地球は2ヵ月間、温度、気温、湿度が一定であるため、生命なのだといわれている。この一定である法則が仏教の根源であるとされている」と、地球という生命体の中で私たちは暮らしており、この考え方が仏教なのだと説く。「今から150年ほど前の江戸時代はすごくエコな生活だった。黒船来航以来、日本を訪れた外国人たちはこの江戸時代のシンプルな生活に驚いたのだという。たとえば、着物も直しながら代々受け継ぎながら着ていた。日本にはモノを灰になるまで使うという精神があり、まだ使えるものを捨てることは子孫に対して失礼なことであると植え付けられてきた。こうした精神で、廃棄されるものを再利用する石川氏や、自然の恵の素晴らしさを伝える堤氏は素晴らしい仕事をされていると感じている」と、日本人が元々もっていた精神を新たな形で伝える活動をしている石川氏と堤氏に大きなエールを送っていた。

堤浅吉漆店の堤卓也氏

「漆は1本の木からわずか200gしか採取できない。漆の木は周りの木に比べると繊細で弱いため、多くの木を育てようとすると、人の手が必要となる。漆という素晴らしい材料を確保するために、先祖代々漆の木を植えて育ててきた」と、先祖が残してきた価値を後世に届けていくことはとても重要であると堤氏は語る。この話に福間氏は、「仏教文化で登場する水墨画は、自然が大きく描かれ、人間はとても小さく描かれている。これは自然に人が生かされているという表現ともとれる」と、仏教には自然の恵に人が生かされているという考えがあると述べる。「簡単に廃棄せずに使い切ることはとても大切である。しかし、デザイン性などの理由から使い切りたいと思わせる製品を届けていくことも重要なのではないかと思っている」と、石川氏は使ってもらってこそ、再利用製品が再び輝き放ち、リサイクルなどへの意識が浸透していくのではないかと持論を展開していた。

ファシリテーターの霍野廣由氏

霍野氏は、「日本の先代の生活の中に、エシカルなどの営みがあった。しかし現代は、より便利さを求めてしまっている」と、警鐘を鳴らす。福間氏は、「江戸末期から西洋の文化が入ってきたことで、人と人とが争うような価値観が浸透してしまったように思う」と、競争社会という民主主義的発想は、日本人が元々持っていたエシカルな精神を阻害してしまったのかもしれないと嘆く。「仏教の開祖、お釈迦様は今でいうホームレス。地位も財も捨て去ってしまった」と、仏教そのものがエシカルなのだと福間氏は語っていた。

蝉 semiの石川大輔氏

蝉 semiで行っている活動について石川氏は、「立ち上げ当初はどうなるか不安であった。しかし、作ることが楽しい。自分を優先させることを大切にしてきたことが、活動を続けるための原動力になった」と、周りに受け入れてもらうということではなく、まず自分自身がその活動を楽しめるかどうかがとても重要であると説明する。堤氏も、「地域の人々と一緒に芝刈りをしていると、山と人間の暮らしには境界がないのだとつくづく感じることがある」と、ここまでは人のエリアということはなく、自然の中に人は生きていることを実感する瞬間があると述べていた。この二人の意見に福間氏は、「美しさや自然はお金では買うことができない」と、二人が行っている活動はまさに美意識なのではないかと話していた。

MEET BUDDHISM THINKING LIVE TALK SESSIONの様子、左から:ファシリテーターの霍野廣由氏、蝉 semiの石川大輔氏、堤浅吉漆店の堤卓也氏、本願寺布教使の福間義朝氏

霍野氏が、石川氏、堤氏に今行っている活動の中で仏教的なものについて聞いたところ、石川氏は、「仏教はすでにエシカルなことを実践していたことを今回学ぶことができた。作ったものを長く使ってもらうために、しっかりしたものを作るといったことを基本行動としてこれからも取り組んでいく」と述べていた。堤氏は、「愛情が仏教的な要素ではないかと思う。海で使うサーフボードは山の木で作られている。山と海はつながっており、そこに愛情を持てるかが大切なのではないかと感じている」と、自然の恵みに感謝することが仏教的な関わりにつながるのではないかと語っていた。

最後に石川氏は、「人の話をよく聞いて、そこからどうやって自分の中に採り入れていくかを今後はもっと意識して取り組んでいきたい」と、製作物をより多くの人に長く使ってもらうために、いろいろなモノやコトを吸収していきたいと語っていた。堤氏は、「人が生活していくための衣食住に必要なものはすべて自然のものから作られている。漆は人が作り出したモノをより長く使えるように耐久性を高めてくれる。多くの人に漆と触れ合う機会を創出していければと思っている」と、漆を通じて自然の大切さを多くの人と共有していきたいと述べていた。福間氏は、「石川氏や堤氏のような若い人たちが、モノの大切さや自然の素晴らしさを伝える活動をしてくれていることはとてもうれしい。現在は雑音が多く、情報も偏っている。こうしたものに振り回されないように生きてほしい」と、今の意志を貫いてほしいと話していた。霍野氏は、「自分に何ができるのか。どんな未来を望むのか。たとえば商品を購入する際にも、その気持ちを問いかけながら商品選びを行っていければと思う」と、日々の行動の中にもサスティナブルやエシカルは見出せるのではないかとまとめていた。

各企業、団体によるブース

[開催概要]
名称:MEET BUDDHISM THINKING(ミート ブディズム シンキング)
日時:4月29日(土)、5月6日(土)、7日(日)10:00~17:00
会場:西本願寺/龍谷大学(大宮キャンパス)
料金:入場無料

MEET BUDDHISM THINKING=https://www.hongwanji-meet-buddhism-thinking.info/


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