- Home&Living2023/05/17 18:23
花王とライオン、使用済みつめかえパックを協働で水平リサイクル、再生材料を一部に使用したつめかえパックを初めて製品化
花王とライオンは、今回、使用済みの容器を再び同じ種類の容器に戻す水平リサイクルによって、再生材料を一部に使用したつめかえパックを、初めて製品化した。両社は2020年9月に、プラスチック包装容器資源循環型社会の実現に向けた連携を発表。フィルム容器(つめかえパック)のリサイクルに取り組んできた。その協働の成果として、花王は衣料用濃縮液体洗剤「アタック ZERO つめかえ用(1620g)」を、ライオンは洗濯用液体高濃度洗剤「トップ スーパーNANOX ニオイ専用 つめかえ用超特大」を5月29日から順次、一部店舗(イトーヨーカドー 一部店舗、ウエルシア薬局 一部店舗では花王とライオンの製品、イオンの一部店舗では花王の製品のみ)で数量限定発売する。
洗剤やシャンプーなどのフィルム容器(つめかえパック)は、内容物を温度や湿度、紫外線などから守るため、異なる素材でできた何層もの薄いフィルムを重ねてつくられている。そのためリサイクルすると、多種類の成分からなる不均質なフィルムになり、製造の過程で孔(あな)があいてしまうなどの課題があった。花王は2021年6月に、フィルム容器リサイクルのパイロットプラントを和歌山研究所に導入。フィルム容器の一括リサイクルの開発・検証を進め、今回、つめかえパックの一括リサイクル技術の確立によって、リサイクルした材料を使用したつめかえパック製品化に至ったとのこと。リサイクルした材料は、中間層の一部に使用している。
また、リサイクルした材料は約10%使用されている。これまでに花王が回収を実施してきた自治体のものに加え、花王・ライオンの協働で回収の実証実験を展開している総合スーパーのイトーヨーカドー曳舟店、ウエルシア薬局で回収したものが、今回のリサイクルつめかえパックに一部活用されている。リサイクルつめかえパック全体の材料のうち約1%がこれらの回収した使用済みつめかえパック由来とのこと。残り約9%は、製品として使用されなかったつめかえパックを活用している。
日本の日用品市場では、花王・ライオンをはじめとする日用品メーカーが、1990年代から包装容器プラスチック使用量の削減を進めてきた。内容物の濃縮化による製品容器のコンパクト化、つめかえ・つけかえ用製品の開発・普及によって、プラスチック使用量を大幅に削減した。2021年のつめかえ・つけかえ用製品は、全製品出荷量の約80%となっている(日本石鹸洗剤工業会 「石鹸洗剤業界における容器包装プラスチック使用量の推移」(重量ベース))。一方、つめかえ用製品であるつめかえパックは、主に使われているフィルム素材が複合材料からなるため、リサイクル材が多種類の成分からなる不均質なプラスチックとなり、リサイクルが困難な状況だった。また、日用品のプラスチック包装容器については分別回収のしくみが確立していないことや、消費者に対しリサイクルの必要性が伝えきれていないという課題もあった。
そのような中、花王とライオンは2020年9月にプラスチック包装容器資源循環型社会の実現に向けて、洗剤やシャンプーなどのフィルム容器(つめかえパック)のリサイクルに協働で取り組むことを発表した。「リサイクリエーション」(使い終えたものを再び資源に戻す「リサイクル」と、新たに価値を創造する「クリエーション」を合わせることで、従来のような同じモノに戻すのではなく、より楽しいモノ・よりよいモノを創り出す、アップサイクルのこと。コンセプトは「使ったら、捨てる。このあたりまえを変えたい。」)として、(1)消費者・行政・流通との連携による、フィルム容器の分別回収のしくみの検討(2)幅広い製品への利用や消費者の分別回収のしやすさに配慮した、企業間あるいは業界の垣根を越えて共通利用が可能なリサイクル材料・容器の品質設計(3)共同で回収・再生したリサイクル材料の活用方法の検討(4)リサイクルに対する消費者の理解・協力を深めるための、普及・啓発活動の促進--という4つの活動を推進。将来的には、フィルム容器リサイクルの社会実装をめざし、フィルム容器から再度フィルム容器に再生する水平リサイクルの検討を進めてきた。
今後は、イトーヨーカドー曳舟店、ウエルシア薬局の店頭での回収を続けながら、リサイクルに対する消費者の理解・協力を得るためにさらなる啓発活動を展開していく。そのうえで、消費者の協力を得やすい分別回収のプロセスや、行政・流通と連携したより効率的な回収方法を検討していく。
花王はつめかえパックの一括リサイクル技術の向上を、ライオンはリサイクルしやすいフィルム容器の技術開発を、各社で進めていく。
引き続き、企業間あるいは業界の垣根を越えて広く自由に利用可能な設計ガイドラインを作成し、リサイクルしやすい包装容器の設計をめざす考え。