- Study&Work2023/02/24 22:19
パナソニック、ナノイー技術による新型コロナの不活化メカニズムを解明、ナノイーを曝露したウイルスは構造が崩壊することが判明
パナソニックは、大阪公立大学 大学院獣医学研究科 准教授 安木真世先生との共同研究において、ナノイー(帯電微粒子水)の曝露による新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の不活化は、ウイルスの構造崩壊が一因であることを初めて(イオン放出式の空気浄化技術において。(2022年6月8日現在、パナソニック調べ))明らかにした。2月22日に行われた発表会では、ナノイーによる新型コロナの不活化メカニズムに焦点を当て、ナノイーの曝露有無によるウイルスの構成成分ごとの影響や、細胞へのウイルスの結合量を測定した結果を、安木先生と共に発表した。
「水には臭気成分を溶かす性質があることから、これを空気浄化に応用できないか検討。空気中の水に高電圧を加えることで生成されるナノサイズの清潔イオンをナノイーと読んでいる。ナノイーは水でできた粒子のため、マイナスイオンよりも長寿命。pH弱酸性であることから、肌や髪に優しい。また、約5~20nmと小さいので繊維の奥まで入り込む。さらに、脱臭、菌、ウイルス、アレル物質抑制等に作用する」と、パナソニック くらしアプライアンス社の宮下充弘副社長がナノイーについて解説する。
「ナノイーについては、微生物を中心にさまざまな空気リスクへの効果を検証してきた。また、ウイルスについても医療品向けウイルスクリアランス試験に基づいて選んだ4種のウイルスに対し、ナノイーを暴露した場合と暴露しない場合とでGLP準拠で比較試験を行った結果、広範囲の生物学的に異なったウイルスへの効果を実証してきた」と、ウイルスへの効果も実証済みとのこと。「新型コロナに対しても、抑制効果や懸念される変異株4種の抑制も確認。昨年には大空間(24m2)で新型コロナを抑制することを確認した」と、新型コロナへの効果検証も充実しているのだという。
「そして今回新たに、オミクロン株(BA.5)での不活化検証と不活化されたウイルスの細胞への影響を確認した他、ウイルスがどのように不活化されているかを大阪公立大学との共同研究で解明した」と、新型コロナに関する新たな検証結果を発表するという。「オミクロン株の検証では、ウイルス感染価を測定し不活化率を算出。ナノイーを照射したウイルスと照射していないウイルスを細胞に摂取し画像で観察を行った。その結果、オミクロン株の不活化を確認した。不活化されたウイルスが細胞への影響を可視化することもできた」と、オミクロン株に対して99%以上の不活化を確認し、不活化された新型コロナの細胞への感染抑制の可視化にも成功したと説明する。「今回の研究で、ウイルスの不活化や細胞への感染が抑制されていることが判明した。しかし、どのように作用し感染を抑制できているのかは不明であることから、不活化のメカニズムを大阪公立大学の安木真世先生と共同で研究することにした」と、安木先生との共同研究に至った背景について教えてくれた。
次にナノイーによる新型コロナの不活化メカニズムについて、安木先生が発表した。「新型コロナは、脂質二重膜(エンベロープ)とタンパク質、RNA、スパイクタンパク質というポリメラーゼなどウイルス複製に関わるタンパク質で構成されている。今回行った試験では、密閉された空間の中で、ウイルス液を付着したガーゼに対し、帯電微粒子水発生装置からナノイーを照射した。その結果、3時間で99.9%の新型コロナを抑制した」と、ナノイーを曝露することで新型コロナを不活化することを確認したという。「そして、ナノイーを曝露すると、新型コロナの細胞形態が変化することがわかった。変化した理由を探った結果、タンパク質の構造が変化し、分解してしまっていることが示唆された」と、ナノイーを曝露した新型コロナはタンパク質を検出できなくなってしまっていたと解説する。「さらに、ゲノムRNA量も測定した結果、構造変化が起こっており、細胞が分解しバラバラになっていた」と、新型コロナのゲノムRNA量も減少していたのだと紹介する。
「ナノイーを曝露した新型コロナは、受容体に結合できなくなっていることが明らかとなり、これが不活化の機序であると判断した」と、不活化のメカニズムが明らかになったのだと力説する。「ナノイーはウイルスの特定の分子や構造を標的とするのではなく、ウイルスを構築するエンベロープやタンパク質、RNAと多段階で作用する。また、ナノイーに曝露されたウイルスは宿主細胞の受容体への結合能力が失われる。これが不活化機序であると考えられる。新型コロナの変異株や他のエンベロープウイルスへの適用も期待される」と、今回の試験についてまとめていた。
再び登壇した宮下副社長は、「ナノイーは11の国と地域で効果やメカニズムを検証。菌・ウイルス・カビは55種類を検証してきた」と、様々な効果検証を行ってきたと訴える。「今後は、ウイルス自体の効果だけでなく、ヒトへの直接的な効果や臨床試験も行っていく」と、ナノイーの検証は新たなステージへとステップアップしていくのだと強調する。「そして、安心・快適な空気・生活環境をすべての人に届けていく」と、今後もナノイー技術で社会に貢献していくと述べていた。