- Study&Work2024/01/18 20:26
キャリア、介護業界の人材不足対策としてリスキリングを通じた転職をサポートする「キャリアスマイルケアカレッジ」を開始
高齢社会型人材サービスを手がけるキャリアは、経済産業省の施策「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」に参画。昨年11月1日からキャリアアップ支援事業「キャリアスマイルケアカレッジ」を開始、昨年12月21日から受講講座の申込受付を開始した。同事業では、現職介護士・介護職希望者のキャリア相談・リスキリング講座受講・転職までを一体的に支援している。1月17日には「キャリアスマイルケアカレッジ」メディア向けセミナーを実施。同社が行った介護業界の人材不足における課題に関する調査結果とともに、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業「キャリアスマイルケアカレッジ」についての解説、キャリアが取り組む背景について紹介した。
「介護業界では人材不足が深刻化している。この背景には、介護職でのキャリア形成への不安や賃金の低さなどの理由による離職率の高さや、そもそもの有効求職者不足による採用困難という業界特有の問題がある。当社は介護人材派遣・紹介事業において全国の介護施設とのパイプがあることから、介護施設向けの医療・介護従事者派遣実績やノウハウを生かし、経産省の『リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業』に参画することにした」と、キャリア 会長兼社長の川嶋一郎氏が挨拶。「キャリアを形成した人が介護業界に飛び込んでくるケースも増えつつある。それだけに、介護業界における人材不足課題解決のパイオニア企業として、安心の転職支援の実現を目指す」と、リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業に参画した経緯について説明した。
次に、キャリア 事業部長の津村孝輝氏が、同社の事業について発表した。「当社は、ビルメンテナンス、ベッドメイキング向けのシニア人材派遣および介護施設向けに看護師の人材派遣業からスタート。現在30以上の拠点を有している。事業は、クライアント企業の人手不足の解消とアクティブシニアの人々の働きやすい環境の提供を実現するシニアワーク事業と、人手不足の医療、介護市場に対し、看護師、介護士等の人材提供を実現するシニアケア事業を柱としており、きめ細やかなサービスを提供している」と、同社の事業内容について説明した。
そして、キャリアアップ支援事業「キャリアスマイルケアカレッジ」においてリスキリング講座を提供するEE21 代表取締役 入江俊輔氏が挨拶した。「当社は、教育サービス事業、人材サービス事業、人材紹介事業/人材派遣事業、グローバル人材事業の他、販売事業、介護関連WEBサイト運営事業、人材育成研修事業、入居者紹介事業を展開している。また、介護資格取得専門スクール『未来ケアカレッジ』を全国で開講し80教室超を運営。受講者に寄り添う転職サポートや人を尊重できる介護者を育成している」と、介護福祉士や社会福祉士を養成する学校法人や社会福祉法人、さらに総合福祉企業など関連企業との連携のもと、質の高い講座を目指していると述べていた。
総務省によると、2020年9月時点での日本の高齢者人口は3617万人で総人口に占める割合は28.7%(出典:総務省「統計からみた我が国の高齢者」)。高齢者数は年々増加し、介護業界の市場規模は今後も拡大していくことが見込まれる。介護人材の需要は、2023年度には約233万人(+約22万人)、2025年度には約243万人(+約32万人)、2040年度には約280万人(+約69万人)と予想(出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について(令和3年7月9日)」)される一方で、介護人材の不足は深刻化している。深刻化する介護人材不足の背景には、介護職でのキャリア形成への不安や賃金の低さなどの理由による離職率の高さ、そもそもの有効求職者不足による採用困難(出典:公益財団法人 介護労働安定センター「令和2年度「介護労働実態調査」」)という業界特有の問題があるという。
そこで、キャリアでは介護業界が抱える人材不足の実態を調査するべくアンケート調査を行った。働いている介護施設で特に改善して欲しい点については、「給与アップ」が81.5%、「人員不足の改善」が63.6%と回答が突出していた。また、介護業界全体の課題については、「人手不足」が89.5%、「他業種と比較して賃金が低い」が59.3%となった。介護施設経営者・採用担当者が今抱えている経営課題について聞くと、「採用活動がうまく進まない」が59.3%、「社員の人材育成」が48.8%となった。この結果について、介護福祉士として従事した経験を持つ津村氏は、「1、2名が休むと1日のスケジュールが大きく狂い、現場が回らなくなってしまう。それだけ慢性的に人員は不足している」と解説する。入江氏は、「介護施設等からは、経験がない人も派遣してほしいという声が挙がる。教育現場においても人員が不足していることを実感する」と、人手不足は介護業界にとって大きな課題であると述べていた。
さらに、介護施設経営者・採用担当者に採用が難しい原因について聞いたところ、「面接の応募が来ない」が79.1%だった。また、内定辞退で特に多い理由は、「給与が希望よりも低かったため」、「仕事内容がイメージと違ったため」が共に25.6%だった。調査結果から、応募者の資格や経験不足による採用課題の他、介護従事者の昇給、介護業界でのキャリアアップできる環境の整備が急務であることが明らかとなった。津村氏も、「介護の仕事に興味を持ってもらっても、実際の仕事が違っていたという声はよく耳にする。さらにキャリアアップも難しい」と話していた。入江氏は、「転職が激しく、慢性的な人材不足となっている。職場でキャリアアップを形成できる環境を整備していくことで離職率を下げていく必要がある」と、課題について語っていた。調査では、現在介護職に従事している約3割以上が資格を取得したいと思っている一方で、働きながら受講する時間がないと答える人は資格取得を希望しない人の中で約3割もいた。これについて津村氏は、「資格を取っても手当が少ない。また変形労働制のためスケジュールの調整ができない人も多い」と説明する。入江氏は、「待遇や人手不足でシフトが組めないところも多い。また夜勤が多いことも挙げられる。さらに、介護の資格には実技がともなうため、オンラインで資格を取得することができないことも資格取得を希望しない人が多い理由とみられる」と、資格を取りやすい環境整備も課題であると語っていた。
こうした介護業界の課題が浮き彫りになる中、キャリアがリスキリング事業に参画した理由について津村氏が説明した。「介護業界の人材不足の解決には、働きながら資格取得ができる環境整備の他、求職者・介護施設双方のミスマッチを防ぐ採用、資格取得が給与やキャリアアップにつながる環境づくりが必要と考える。リスキリングとは、新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させることとなっている。そこで、当社はキャリア相談やリスキリング、転職を一体的に支援。リスキリング講座についてはEE21から提供してもらう。これによって、未経験者の介護業界への転職や介護従事者のキャリアアップをサポート。受講費については、同事業の補助金と当社独自の補助金制度を活用し最大全額補助する」と、「キャリアスマイルケアカレッジ」ではキャリア相談、受講、仕事の紹介、転職(就業)を一体的に支援すると述べていた。「『キャリアスマイルケアカレッジ』を通じて、資格取得支援による介護業界の昇給や転職による雇用の安定、未経験者の参入による人材不足の解消を目指し、介護業界への転職者数1000名を実現する」と意気込んだ。
「当社では、未来ケアカレッジでリスキリング希望者の資格取得を実現していく」と入江氏。「当社は経験豊富な講師陣を抱えている他、駅チカで通いやすく、振替受講も無料で可能となっている」と資格が取りやすい環境なのだとアピールする。「介護の資格取得に対する認知向上に加えて、資格取得でキャリアアップとなる職場環境の整備や若い世代の介護の人材育成を行っていくことで、介護業界が抱える課題を解決していく」と、「キャリアスマイルケアカレッジ」で介護業界の課題解決の活路につなげていきたいと述べていた。