- Study&Work2025/03/25 22:56
震災・原発事故から「ゼロからのまちづくり」が進む大熊町、かつての町の中心部「大野駅西交流エリア」に商業施設などがオープン

東日本大震災から14年目を迎えた福島県大熊町では「ゼロからのまちづくり」が進んでいる。大熊町は、福島県浜通り中央部に位置し、東は海、西は山に面した町。2011年に発生した東日本大震災における東京電力福島第一原子力発電所事故によって、町全域が「避難指示区域」および「警戒区域」となり、全町民1万1505人が町外への避難生活を余儀なくされた。そして、震災から8年後の2019年には一部避難指示が解除、2022年には町の中心地区の避難指示も解除され、産業創出や生活拠点、教育環境などの整備が進み、町は今大きな転換期を迎えている。今年、大熊町内の震災後初の民間ホテル「タイズヴェルデホテル」が1月に開業。さらに、かつての町の中心部「大野駅西交流エリア」には、産業交流施設「CREVAおおくま」と商業施設「クマSUNテラス」が3月15日にグランドオープンした。新たな施設の誕生によって、町民の交流・地域コミュニティの活性化に加え、県外からの来訪者もさらに町を楽しめるようになるなど、復興はこれまで以上に加速している。


震災前、大熊町の中心地はJR常磐線「大野駅」西口一帯。現在は商店街が広がっていた景色が一変し、鉄骨平屋5棟で構成され、コンビニ1店、物販1店、飲食店5店の計7店が入る商業施設「クマSUNテラス」と、鉄骨造り3階建てのオフィスビルで、大熊町に新たな拠点を置きたい事業者向けの貸オフィスをはじめ、一般の人でも利用できる多目的ホール(CREVA HALL)やコワーキングスペースなどがある産業交流施設「CREVAおおくま」が3月15日にオープン。町の新しい「玄関口」として生まれ変わった。

「商業施設『クマSUNテラス』は、将来の施設整備を踏まえ、地区の動線、一体利用を想定した施設構成で賑わいをつくる」と語るBGタイムズCCC協働事業体 統括責任者の田淵義浩氏。


「北西から南東へかけて、全体で4mある地盤の高低差を解消するべく、商業施設の建物を1~2店舗ごとの分棟形式にした。これによって、店舗出入口の高低差を最小限にしている」と、分棟形式にした理由を説明する。


「日常のコミュニケーションだけでなく、イベントスペースとしても利用できる」と、芝生ひろばや庇下の外部空間と連続する利用しやすい商業施設になっている。


「鉄骨平屋5棟には、コンビニ1店、物販1店、飲食店5店の計7店舗が営業する。このうち文具・事務用品・雑貨を販売する『ふたば文具』は、震災前から大野駅西口で営業していた店舗」と、町で働く人々や学生たちが集う。販売する商品の中には、東京芸術大学の大学院生と企画したものも展開。店のキャラクターもデザインした。


「店舗の他に、持ち込みの食事が可能なイートインスペース。また、団体での貸し切りも可能な『クマSUNラウンジ』や、子どもが遊べる屋内遊技場『キッズルーム』がある」と、様々な人々が大野駅西交流エリアに訪れてほしいとの想いが込められている。


「クマSUNテラス」と一体利用を想定した産業交流施設「CREVAおおくま」は、コの字型の貸事務所と中央の開かれた共有スペースで構成される。



「2、3階には貸事務所の他、入居者間の交流を生む共用ワークスペースを設ける」と、開放的なコワーキングスペース、共用スペース、ラウンジ、屋上庭園を設けている。「貸事務所からは外へ直接出られるバルコニーがある」と、専用テラスや貸事務所の外周部は入居者が好きなように使うことができ、バルコニーに対して入居者らしさを表出する。

「1階の『CREVA HALL』は200名程度の大規模な人数も収容可能。机や椅子を撤去して広く利用することもできる」と、展示会や見本市、商談会など様々な活用が想定される。


「『CREVA HALL』の奥には、日本原子力研究開発機構(JAEA)が実施している分析をテーマにした5つのコーナーを楽しみ学ぶ施設『JAEA ANALYSiS LAB.』の他、『中間貯蔵事業情報センター』では、中間貯蔵事業や除去土壌等の再生利用・福島県外最終処分など、福島の復興・環境再生の取り組みをバーチャルシアター等の展示で学ぶことができる」と紹介した。


「大野駅西交流エリアには、地域特性を生かした最先端技術を導入している」と田淵氏。「クマSUNテラス」と「CREVAおおくま」の屋上には太陽光パネルを設置。一次エネルギー消費量を75%以上削減し、Nearly ZEB(ニアリーゼブ:ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に限りなく近い建築物)達成を目指す。「CREVAおおくま」には、ロングスパンの鉄骨梁を、耐火被覆と補剛性を担保する木材で覆う独自の工法によって、大スパンの木質大空間を実現する。


今年1月には町内の震災後初の民間ホテル「タイムズヴェルデホテル」が、地域復興の象徴となるべく誕生。大熊町の復興と未来に向けた街づくりの中核を担う。

ビジネスマン、観光客、復興事業関係者を主なターゲットとし、快適な宿泊体験や地域交流の場を提供。大熊町役場の目の前という好立地に加え、地域のランドマークとなる「大熊町交流ZONE」や飲食店、温浴施設へのアクセスにも優れた施設となっている。


このため、客室には簡易的な入浴設備しか設けられておらず、夕食の提供も行っていない。町内の散策を通じて、食や町民とのふれあいをしてもらいたいのだと、その狙いを話す。

大熊町では、「ゼロカーボンのまちづくり」を掲げ、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)住宅建設を進めている。ZEHは、高断熱性能と創エネルギー、畜エネルギー、省エネルギー設備機器を組み合わせて導入し、年間1次エネルギー消費量がネットゼロの住宅。ZEHを増やしていくことは、原子力発電や化石エネルギーに頼らない、地域の再生可能エネルギーを活用した持続可能なまちづくりにつながる。

特定復興再生拠点に震災後初めて供用開始された町営の住宅についてもZEH住宅となっており、大野南エリアには1棟2戸の集合住宅を2LDKで30戸、原住宅エリアには戸建の3LDKを20戸、2つのエリアで合計50戸を福島県の代行整備によって整えた。

ユニバーサルデザインに配慮し、幅広い年齢層に対応した住宅仕様になっている。各エリア内には、コミュニケーションスペースとして多目的スペースやカフェスペースなど、エリア内外を問わず、交流ができる場所を設けた。今年度から併用を開始しており、車いす専用住宅以外はすべて入居済みとなっている。
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